2023/5/21からのこと。M君と初めてのお別れ

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夜中の2時半に、帰宅途中のロードパークにいたM君から、
朝の7時46分にメッセージが届いた。

『おはようございます。

お仕事の時間 長いですが、無理なさらずにね』

家に着いたのは、おそらく3時半頃だろうに、
こんな時間にもう起きているとは…
それより何より、
昨夜は逢えずに残念でした、とか、
逢える時間に行けなくてごめんね、とか、
こんな理由で遅くなってしまった、とか、
何かないものなのだろうか?
仕事無理しないでという気遣いが出来るなら、
昨夜について何か一言欲しいものだ。

モヤモヤしたままだったから、
返信は送らずに、仕事に行った。

その日の仕事は、派遣のスポットの仕事で
募集要項に《バレーボールの大会のスタッフ》と書かれていたのに、
行ってみたら、プロのフットサルの大会だった。
フットサルにもプロってあるんだな…知らなかった…

私は、関係者入口の受付を担当することになった。
椅子に座っていられる仕事で助かった。
その入口から来場する関係者の名簿があり、20人程度だった。

関係者入口は、選手の控室の近くだったので、目の前の廊下で、若くてイケメンで,
筋肉質の素敵な体の男性達が何人も、
ずっとひっきりなしに筋トレをしていた。

とても素敵な光景なのに、
私はずっとぼんやりとM君のことばかりを考えていた。

これまでのやりとり、
昨夜のこと、
今日はメッセージを送るべき?
何て?何時に?

同じ事ばかりずっと、何時間も何時間もぐるぐると…
今日は何も考えずに出来る仕事で良かった…
それに、関係者でも一般の入口から入場してしまった人がいたらしく、
結局のところ、勤務時間8時間のうち、私が受付をしたのは7人だけだった。

17時に上がり、家に帰ってご飯を食べ、
20時頃にメッセージを送った。
今日の仕事の内容と、明日の仕事の内容についてのみ。

お仕事お疲れさまでした とか
明日もハードですね などという内容の返信が届いた。
すぐに既読せずに、寝る前の22時に既読をつけ、
おやすみなさい 
というスタンプを送って、その日は終わらせた。

かといって、布団に入っても、グッスリ眠れたわけでも、朝スッキリ起きられたわけでもなかった。

次の日の仕事中も、
結論が出るわけではない同じ事を考え続けてしまう…
私は本当に、一体どうしてしまったんだろう?

「考えても仕方がない!時間が無駄だ!」
と思い直し、
22日からは何も考えずに、それまで通りのやりとりをすることにした。


M君は、私が複数の派遣会社に登録していて、
毎日いろいろなスポットの仕事をしていることに、とても興味があるようで、
毎日のように
『今日はどんなお仕事ですか?』
と聞いてくる。
どこでとか、何時から何時までとか、
どんな仕事内容なのかとか。
なので、聞かれる前に自分から知らせる事も多かった。


M君は、大学を卒業してから定職にはつかず、アルバイトをしながら自宅の最寄りの駅などで、路上ライブをしていたそうだ。
一応ミュージシャンを目指していたようだけれど、
ある日、今応援しているミュージシャンO氏に出会い、
『こんなに上手くてかっこいい人がいるなら自分は無理だ』
と思い、夢は諦め、
それからずっと彼を応援しているそうだ。
夢を諦めてからも定職にはつかずに、
アルバイトや派遣で生活していた様子。

それにしたって実家暮らしなんだから、40を過ぎた今になっても
『お金が無くて』と言っていることが不思議だ。
今は会社員のようなのに。

『ほんと忙しい中 仲良くしてくれてありがとう』
などと言ってきた。

私が忙しいことは分かっているようだ。
それなのに、時間を割いて作った《逢う日》を、よくあんな風に無駄に出来たものだ…
理由がわからないのと、謝ってもらえないので、いつまで経っても恨めしい気持ちが残っている。

『〇〇ちゃんは私のこと好きな気持ち何パーセントなのかな?』
などと聞いてきた。
特別な存在だと言ったけど
好きだなんて言ったことないのに…
何ならはっきりと「恋ではない」と言ったのに…


24日、県外に住む次女が帰ってきた。
「娘が帰って来るから、あまりLINE送れないと思う」
と、いっておいたのに

『娘と一緒だと全然メールくれないね。

私は寂しさに付き合わされているだけなのかな』

などと言ってきた。
あなたこそ、私以外にやりとりする人がいない寂しい人なのでは…?
私の方が付き合ってあげているのに。


25日の夜、娘が帰ったので、
待っていたであろうM君に早速メッセージを送った。
高速バスで帰る娘をバス停まで見送りに行ったので、その帰りに、家の近くに出来た新しくて綺麗な建物の写真を撮り、
添付してあげた。

すると

『帰ったらメールが来るようになるね』

待っていてくれたから、嫌みの一つも言いたいのだろう。
全く…
と思った直後。
また想像もしないものが送られてきた。

『私も日曜日 その建物を見たよ』

そして、その建物の前で撮った自分の写真。

日曜日といえば21日。
掃除をして待っていた私の家に来なかった20日の次の日。

…というより、夜中に近くに来たという謎の行動の日・当日だ。
さっぱりわけがわからない。

「どーゆーこと?来ていたの?」

『 I 君  見に』

I君とは、県内のイベントによく出てくる
、地方でのみ活躍しているミュージシャンだ。
Iを応援していることも知ってはいた。
私の家の近くにある百貨店の入口で、無料LIVEをしたらしく、それを観に来たようだ。
当日も、その後も、そんなことは一言も言っていなかったのに!

「この日にこのお店に来ることわかっていたのに、
なぜ教えてくれなかったのでしょうか?
そしたらお仕事最初から入れなかったのに…
帰りに寄ってもらうことができたと思いますが…」

するとまた想像を超えた返信

『お母さんと一緒だから寄れないです』

そして、顔だけ隠したお母さんの写真。

私はまた、漫画のように、
本当に《わなわな》と、手が震えた。

どんなに誘っても、いつも予定があるようだったその《予定》の1つは、
地方でのみ活躍していて、
その辺のイベントでいつでも見られる、
そして実際数週間前にも観に行ったと話していた
店先で観ることが出来るIの無料LIVEだったのだ。


「お風呂で体洗って、全身舐めて、
避妊具なしでSE〇してもいいと言った私より、
お母さんと一緒にIを見ることの方が価値が上とか辛すぎます。
そこまで自分を落としたのは初めてです。

明日は早朝から仕事なのでもう寝ますね。
おやすみなさい。」

今度こそ、ごめんね と言ってくれると思ったが、
すぐに届いたメッセージは

『では、もう会うの辞めましょう』

だった…


もちろん、私は、その夜も眠れなかった。
もう会わないということは、
こんなやりとりも辞めるということだ。
二度と会うこともない人とメッセージのやりとりを続けても仕方がない。
私はそんなに価値のない女なのか…?
そう思うと、それもショックだった。
モテない人生ではなかったのに。
それに、全く好きでも好みでもないと思っている男に
こっぴどくふられたのだ。


次の日、私は全く仕事に集中出来なかった。
派遣の飲食関係の仕事だったから、
上の空でも、いつもの通りに体を動かすことは出来た。
悲しくて、泣きそうになるのをこらえるのに必死だった。
自分の価値を軽くみられたショックより、
なぜかわからないけれど
M君とお別れすることの方が辛かった。
なぜなのだろう…?
ひどい事ばかりされたり言われたりしてきたのに…
そして、繰り返すけれど、
好きではないはずなのに…

ラストメッセージを何時間も考え続けた。
今日中に送る?
昼のうちに送る?
夜になってから送る?
冷静になったM君が
『ごめんね』と言ってこないかと期待したけれど、
全くメッセージが届く様子はなかった。

19時半
1日中考えたメッセージを送った。

「M君

最後に素敵なお別れの言葉を贈りたいと
1日考えてみましたが、
うまくまとまりませんでした……

シンプルになってしまうけれど

約2ヶ月間 仲良くしてくれて ありがとう
楽しかったです」

そして
生まれてきてくれてありがとう
あなたとの出会い 私の宝
ありがとうございました
という、メッセージが入っている3つのスタンプを送った。

瞬間的に既読が付き、
即返信が届いた。

『寂しくなります。。』
『最後に会いたかったです』

私は、お別れのメッセージを送ったら、
返信が来てももう返さないつもりだったが、
二言のそのメッセージに、すぐに心が折れてしまった。

「もし社交辞令ではなく心からそう思ってくれるのでしたら、
連絡待っています。
お家は教えてあるのですから……」

『今日はどんな風に過ごしていましたか?
返信がなかったので心配してました』

心配って……自分が突き放してきたくせに。

『お仕事は?
今日はどんなお仕事でしたか?』
『また仲良くなれたらいいな』
『また会いに行きます』


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