初めてパワーストーンのブレスレットを作ったときのこと

それは2008年のこと。
その頃、私は食品工場で、短期間の夜勤の仕事をしていた。

そこで、1人の男性をとても好きになってしまった。

その人は、フランス在住の日本人で、
フランス料理を覚える為にフランスに住んで、レストランで働いているとのことだった。
ビザの為に一時帰国していて、その間、時間があるからと、その工場で働くことにしたそう。
名の知れた大きな料理専門学校を出て、それからずっとフランスに住んでいるとのことだった。

私の好きな細身の体型ではなかったけれど、色が白くて目がパッチリとした二重で、
何よりも仕事が出来た。
丁寧で的確で、他の誰にも親切で、
長く海外に住んでいるせいなのか、
所作が紳士的でスマートだった。
短期の仕事とはいえ途中から入ってきたのに、すぐに皆が彼のことを好きになってしまった。
おばさま達からも、可愛がられていた。

仕事中には話す機会はなかなか無かったし、休憩時間はみんな同じ食堂でかたまって食事をしていたから、2人で話せることなどもほとんどなかった。
でも、隙を見つけては近寄り、話しかけていた。
何となく、私の好意は、すぐに本人に伝わってしまったようだ。
お休みはいつなのか、お休みに何をしているのかなどを聞いて、デートをして欲しいと直接ではなかったけれど遠回しに言うと
「いいですよ」
とのことで、まずはメールアドレスを教えてもらった。
その人は帰国中、携帯は持っていないとのことで、Yahoo メールのアドレスだった。

やりとりをしながら気持ちを伝えたけれど、彼にはアメリカ人の婚約者がいた。
なかなかパートナーが出来ずにいたところ、知り合いから紹介してもらい、出会ったとのことだった。
《アメリカ人の婚約者》だけど、彼女は香港に住んでいて、遠距離恋愛だという。
会話は英語。
言いたいことがすべて伝わるわけではない、と言っていた。

海外といえば、新婚旅行でハワイくらいしか行ったことがない私には、なんだか遠い世界のお話に感じた。
聖子ちゃんの歌の世界みたい…

でも、彼も私に少し好意を持ってくれたようで、
「フランスに住んで欲しい」などと言ってくれた。

私は海外に住むことなんてもちろん出来ないけれど、香港の人と遠距離恋愛が出来るなら、母国日本の、しかも地元の女とは無理なのかしら…?などと、思ったりした。


一度だけ、デートをしてもらった。
昼間に待ち合わせて、彼の(お父さんの)車に乗って、
海の方へドライブに行った。
お互い、特にお店などを調べたわけではなかったから、通り道にあった和食屋で食事をした。
その日は2人とも仕事のシフトには入っていたので、そんなに遅くまでは一緒にいられなかった。
お別れしてからそれぞれの車で仕事に向かい、さっきまで一緒にいたのに、何事もなかったように
「おはようございます」と言い合ったとき、すごくドキドキしてしまった。


ちょうどその時期に、友達にパワーストーンのお店のことを聞いた。
市内にあるけれど、そこへ時々、たまにテレビに出る占い師が来るという。
記憶がうっすらになってしまったけれど、
たしか1,000円くらいでタロットカードで占いをしてくれ、その願いに合ったブレスレットを提案してくれ、店主が作ってくれる、というような感じだった。
ブレスレットの値段は、もちろん別料金。


早速、占い師が来るという日に、行ってみた。
私は、ブレスレットが欲しかったわけではなくて、霊視が出来るというその占い師に、タロットカードでの占いがして欲しかっただけだった。

占いをして欲しい人の行列でも出来ているかと思ったけれど、待つこともなく占ってもらえた。
何を占って欲しいのかと聞かれて、今好きな人とのことを占って欲しいと伝えた。
どんな人で、どうなりたいかと聞かれたような気がする。
フランス在住とまでは言わなかったけれど、婚約者がいる人だけど、好きになってしまって…と言うと、
「婚約者がいる人なのに、なに、あなたのこと好きだとでも言ってきたの!?」
と、強めの口調で言われた。
私が
「好きとは言われてないけど、とても優しくしてくれるので…」と言うと、

『優しくしてもらっただけで、その人があなたのこと好きだってことになるなら、世界中の男があなたを好きってことになっちゃうわよっっっ!!』

と、狭い店中に響き渡るような大きな声で言われてしまった。

私は、ビックリとか腹が立ったとかではなくて、その言葉がとてもおかしくなってしまい、ニヤニヤが止まらなかった。
世界中の男って…
私に優しくない男もいるけど。

その後、その占い師に何を言われたか忘れたけれど、とりあえず、恋愛成就のブレスレットを作ってもらった。
そんなにお高くはなかった。
水晶と、ピンクの石(名前は忘れてしまった)で作られていて、とても好みの感じに出来たので、気に入ってよくつけていた。

彼は、仕事が最後の日、出勤したら車を自分の車の隣に駐車するようにといってきた。
仕事が終わり車に行くと、彼は先に帰っていて、サイドミラーに紙袋がかかっていた。
開けてみると、手作りのケーキが2種類入っていた。
彼が私だけの為に作ってくれたのだ。
もったいなく思ったけれど、もちろん食べた。
とっても美味しかった。。。

バレンタインに、仕事先のみんなに同じチョコを渡したのに、
ホワイトデーには、フランスからわざわざチョコレートを送ってくれた。

彼がフランスに戻ってしまってからも、しばらくメールのやりとりをしていたけれど、だんだん返信がくるのが遅くなり、それも途絶えてしまった。

彼とはうまくいくことはなかったけれど、
とても素敵な思い出が出来た。


ある日、娘の学校の先生が、私と全く同じデザインのブレスレットをつけているのを見た。
「あそこで買いました?」と聞いてみると、そうだという。
そりゃそうだよね…全く同じだもの。
ただ、先生のは、ピンクの石ではなくて、グリーンの石だった。
「何の効果があるんですか?」と、聞いてみると、健康運が良くなるとのこと。
こんなんでは、私と全く同じブレスレットをつけている人が、同じ市内にたくさんいそう……
しかも、ピンクだと恋愛成就で、グリーンだと健康運アップとか、わかりやす過ぎるでしょう……

それから、そのブレスレットは、しまい込んでしまい、滅多につけなくなってしまった。
そのせいで出会いも無いのかと思ったこともあったけれど、せっかくお金を出して買ったものだし、デザインは気に入っていたから、処分することはなかった。

2023年3月、新しくブレスレットを作ったお店で、そのブレスレットを見てもらった。
あまり良くなさそうなら、さよならしたり、メンテナンスをしてもらおうと思った。   
   【新しいブレスレットについてはこちら

新しいブレスレットを作ってくれたお姉さんは
「ピンクだし、あなたに合っていると思うよ」
と言ってくれたので、新しいブレスレットと共に身につけたり、行った神社で洗うようにした。











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