OL(2)

結婚して、嫌々通勤していた会社を辞めることが出来ました。
夫の転勤で、初めて県外へ転出することになりました。
仲が良くない母と離れて生活出来ることになり、嬉しくてたまりませんでした。
それに、生まれてからずっと同じ県内に住んでいたので、新しい土地での生活が夢のようでした。

夫となった人の会社は、拠点となる『支店』はあるものの、仕事の移動が多く、
新婚にもかかわらず、彼が家に帰って来ることは、ほとんどありませんでした。
私は知らない土地で1人暮らしを始めたようなものでした。

専業主婦が夢だったし、夫もそれを望んでいたので、
最初のうちは近所を散歩してどんなお店があるかを探したり、流行っていたテレビゲームをしたりして、誰にも文句を言われることなく自堕落な生活を楽しんでいましたが、だんだん退屈になってきました。
1日中誰とも口をきかずに何日も過ごし、何のために生きているのだろう?
と思うようになりました。

まずは友達が欲しい!と考えましたが、
その頃はまだ人見知りで、用事もないのに他人に気軽に話しかけたりすることが出来ませんでした。

憧れていた専業主婦をすぐにやめ、
私はバイトをすることにしました。
友達を作るのには、それが1番手っ取り早いと思ったからです。
家に帰ってこない夫も、友達はいた方がいいと、働きに出ることを許してくれました。

いくつかの会社や店舗の面接を受け、
ある建設コンサルタントの会社に採用されました。

その当時には珍しい、フレックスタイム制を導入している会社で、バイトの時間は9時から17時までと一応決まっているものの、出勤が15分程遅れても誰もそんなことを気にするでもなく、帰り時間を17時15分にすればいいので、何とも気楽な職場でした。

私の配属された課は、
新しい道路や建物をつくる場所の環境について調べたり、その報告書を作成したりするところで、白地図の色塗りをしたり、コピーした地図を張り合わせたり、1日があっという間に感じる、私が得意な楽しい作業ばかりでした。

希望通り、友達もたくさん出来ました。

何より楽しいと感じたことは、過去の私を知っている人が誰一人いないということです。
私はどんな人間でもいいのです!ちょっと悪いことをしても
「〇〇さんちの娘さんは・・・」などと噂されて身内に迷惑をかけたりしないのです!
学校で勉強が出来たとか出来なかったとか、友達がたくさんいたとかいじめにあっていたとか、誰も私の過去に興味がないのです!

「大学デビューってこんな感じなんだろうな~」
と、思いました。

夫が毎日帰って来ないのをいいことに、
会社でできた独身の友達と、食事に行ったりカラオケに行ったり。
地元にいた頃には全く興味のなかったことが、本当に楽しく感じられました。

1年くらい働いた頃、妊娠をしたのでその会社も辞めることにしました。

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