マッチングアプリで出会った男性のこと⑥の4

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私は緊張して、ウトウトくらいは出来ても熟睡は出来なかったけれど、T君はいびきをかいて寝ていた。
朝方、目がハッキリ覚めてしまい、マットレス2段分上から下がっているT君の手を下から見上げながら、
「この家で男性が寝ているんだなぁ……」と思った。
私が好きな、細くて白い指ではなかったけれど、それを見つめていると、
ちょっとドキドキした。
すると、T君も目を覚まし、体を起こした。
突然過ぎて、寝ているフリも出来なかった。
T君は立ち上がり、そのままトイレに行った。
「あ〜ビックリした。戻ってきたら、何て言おう?」などと考えていると、戻ってきたT君は
「添い寝しよっと」と、とても自然に、私の隣に横になってきた。
何を話したか忘れたけれど、そうなると結果的にはいたす方向に……
朝だったからか、軽い感じだったし、T君も「痛くない?」と、何回も聞いてくれた。
「痛くないよ」と、答えたけれど、本当のところはちょっぴりだけ痛かった。
これくらいの年になると、逆に痛いのが普通なのかな……?
「M君なら、こうしてくれるのに…」と、失礼な事を考えてしまう私。

仕事に行くT君に、おにぎりとゆで卵を作って、持たせてあげた。
前もって、朝ご飯を食べるか食べないか、おにぎりなどの方が良いのか聞いておいた。
『おにぎり好きだから、おにぎりがいいな』という返事だった。

その日の夜も、
前日の夜ご飯も、朝のおにぎりも、ベタ褒めしてくれるメッセージが届いた。

前回は
「胃袋掴めそうかな?」と聞いてみたら
『掴み出してるよ!』という返事だったけれど、今回は
「すきになれそうかな?」
と、直接的な言葉を使ってみた。
全くスルーされたけれど、特に悲しくはなかった。
私はその間も毎日M君のTwitterを見ては涙を流していたから…
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その後も毎日LINEのやりとりはしていたけれど、私が送った日記のようなものに、感想のような返事がくるくらい。
ある日、仕事で、T君の苗字と同じ名前の町に行ったことがあった。
「今日、○○町に行きました。今度は○○T君と行ってみたいですね」
と、LINEを送ってみたが、それもスルーされた。
この人も、私に昼間の時間はくれないつもりなんだろうか……?

もし、正式にお付き合いを申し込まれたとしても嫌ではないし仲良くやってはいけそうだと思う。
でも、そこへ辿り着くまでに、どれくらいの時間をかけるつもりなんだろう?
T君を好きだという気持ちは無いけれど、長い時間をかけて、何回も会ったり一緒に食事をしたりしていたら、家族のような親近感や情が湧いてしまいそう……
そうなってからお別れしたら、ちょっと淋しく感じちゃうかも……
私は
「違うと思ったら、早めにそう言ってね」
とも送ってみたけれど、それもスルーされた。

ある日また
『○日泊まりに行こうかな』
というメッセージが届いた。
今度は現場がどうとかではなく、泊まることが目的のようだ。
別にかまわないけど…当たり前に、次も私んちなの?
「今度はうちに来る?」とか、
「続けてご馳走になったから、今度は外でご馳走するよ」とか、
「たまには昼間にランチでも」
って気持ちは持てないものかしら?
なんだか「やったー!また来てくれる!」
とかいう気持ちにはなれなかった。

ものすごいご馳走を出しているわけではないけれど、
自分1人だけのテキトーな食事とは違い、
食材を買いにスーパーへ行ったりすることには、
時間もお金もかかっている。
ちゃんとした材料にしようと思うと、ちょっと高めの店に足を運ぶことになる。
来た時にすぐに出せるように、昼間のうちに下ごしらえをしたり、
掃除をしたり、物を移動したり、忙しい。

え………?
私はそういうことがしたかったはずなのに、時間やお金を惜しんでいるって、どういうこと??
相手が好きな人なら、そんなこと考えないのかな??
好きでもないからそう考えてしまうの???

そんなことに気付いてしまうと、なんだかT君のことがだんだん腹立たしくなってきた。
「私んちを食堂だとでも思っている?」

とはいえ、
とりあえず、約束の日には、またT君が好きだと言っていたチャーハンでも作ってみようと、一度材料を揃えて練習する私……
T君がくる度に、これからこんなことするのかな、私?

とりあえず、もうちょっとT君の普段のことを知りたいと思った。
毎日どんな生活をしてるのか、何を目にしているのか、
全くわからなかったから。
「なんか、毎日私の話の感想だけ言わせてる感じなんだけど…日々の生活で、喜怒哀楽はあまりないですか?」
『言われてみたらそうだね。喜怒哀楽あるよ。
ただ、それをLINEで言わないだけかな。
普段、仕事以外でLINEあんまりしないからなぁ』
「そうなんだね。2週間に1回くらいしか会えないから、
普段どんなことして、どんなこと思っているか、
もうちょっと知りたいな、って、思います。
私が何も発しなかったら、このLINE動かないのかな……って。
めんどくさいこと言ってるみたいで、ごめんね。
朝起きた瞬間に一言【おはよう】とか、
今日はどこの現場だとか、お昼は何食べたとか、
例えばそんなことでもT君からメッセージもらえたら嬉しいな」
『頑張ってみるよ!』

う~~~ん………
自分の事を、本当に面倒な女だと思った。
そんな事は、本来は【お願い】することではないのだ。
「何してるかな?」
と相手が気になれば、何かメッセージを送ってみようと思うだろうし、
空や景色が綺麗だと感じたら
「見せてあげたいな」
と思って、写メを送るのだ。
ご飯が美味しかったら
「お昼にこれ食べたら美味しかったよ」と知らせたくなるものだ。
朝起きた瞬間に思い出して「おはよう」と言ってみたり、
寝る前に思い出して「おやすみ」と言いたくなるのは、
気持ちの問題だ。
【頑張って】無理にしてもらう事ではない。
【言いたくなる】のだ。

そういう意味でも、M君は本当に、
何でも知りたい私に、頼みもしないのに勝手にいろいろな写真を送ってくれた。
見たくないものもあったけれど、
空が美しいと感じた心や、今日は暖かいとただ感じたこと。
朝の「おはよう」の一言で、
お互い「今起きたんだな」と、起床時間がわかったり、
「お疲れ様。今仕事上がりました」などと言ってくれたり…
謎は多かったけれど、日々の行動や感じたことは、よくわかった。


どんなことも、ついついM君と比べてしまう…………


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