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書籍レビューvol.1:「Spare」by ハリー王子

少し前に話題になった、ハリー王子の回顧録「Spare」を読みました。

ハリー王子「Spare」

有名人の回顧録は巷に溢れ返っているのですが、離脱したとはいえ王室メンバーが自ら内部事情を含め大っぴらに語るというのは、やはり某政治家、某起業家、某活動家などなどの回顧録とはちょっとインパクトが違います。
少なくともアメリカでは2023年1月の発売開始から半年経った今でもベストセラーです。
16カ国語に翻訳されているということで日本語版も当然あると思っていたのですが、日本語はないんですね!
日本は王室文化もそこそこ馴染みがあるし、需要はありそうなのに意外・・・。
ちなみに翻訳版があるのはスペイン語、ドイツ語、ポルトガル語(ブラジル向け)、ポルトガル語(ポルトガル向け)、中国語(簡体字)、デンマーク語、オランダ語、フィンランド語、フランス語、ギリシャ語、ハンガリー語、イタリア語、ポーランド語、ルーマニア語、スウェーデン語、だそうです。ポルトガル語って、ブラジルとヨーロッパの本家ポルトガルではちょっと違うんですねぇ。。。
まぁそういうわけで日本語ではまだ読めませんが、ネットに山ほど日本語の関連記事が出てるので断片的に内容を知ることはできると思います。

ここでは私の完全な独断と偏見で、以下3つの読みポイントについて語りたいと思います。(ネタバレあり)

  1. 暴露本として読むならパート3を

  2. ウィリアム皇太子、なぜヒゲにこだわる

  3. パパラッチの怖さを伝えるならこの一冊

暴露本として読むならパート3を

発売当初、英王室の「暴露本」と紹介する記事もたくさんあったので、かなりドぎつい内容を期待したのですが、そういう色眼鏡で見てると「案外まともじゃん」と少々拍子抜けでした。
「Spare」は約400ページのそこそこの大作で、大まかには3つのパートに分かれてます。
パート1が生い立ち、パート2が軍入隊や公務などなどの経験談、そしてパート3がメーガン妃と出会ってから今に至るまで、という時間軸で構成されています。

おそらく多くの人が知りたい英王室離脱騒動の内部事情だったり、英王室メンバーとハリー王子との確執だったり、メーガン妃への風当たりだったりという話はパート3まで登場しないので、そこに至るまで300ページほど読み進めないといけません。

パート1は冒頭あたりの母親のダイアナ妃の死去を知らされたくだりとか、パート2は全裸写真だのナチスの衣装の写真だのとスキャンダルメーカー扱いされた話とか、元カノの話とか、馴染み深い話もあるにはあります。(「不謹慎」と叩かれたナチスのハロウィン衣装はキャサリン妃が勧めたとしれっと暴露しちゃったりとか)
ただハリー王子、アフリカの自然で過ごした時間と軍入隊時代がわりと自分の軸になっているようで、パート1&パート2は延々とそこに割かれているので、ちょっと疲れました・・・。
暴露本的要素を求めるなら、いっそパート3から読むのもありかもしれません。

ウィリアム皇太子、なぜヒゲにこだわる

英王室メンバーの中でもハリー王子と特に確執が深いと噂されているのが、ウィリアム皇太子。チャールズ国王は日和見な性格もあって、戴冠式も“ハリーが来たいならウェルカム”的なノリだったと言われてますが、ウィリアム皇太子との仲はけっこうガチで険悪と報じられています。
そもそもタイトルの「Spare」は、次期国王として正式な王位継承者(heir)であるウィリアム皇太子に対して予備(spare)の自分、というところから来てるので、兄弟の差ありきの本なんですよね。
本の冒頭でも、ウィリアム皇太子に恐れを抱いているようなハリー王子の心境が示唆されています。

でも蓋を開けて読み進めると、けっこう兄弟愛あるんじゃん、って思わされました。

タブロイド紙の「Spare」のレビューでは、「ウィリアム皇太子がハリー王子に暴力をふるったことも暴露」的な内容も見たんですが、実際読むと、ハリー王子の語り口は少し感じが違いました。
王室離脱騒動の話し合いの最中、ウィリアム皇太子がハリー王子につかみかかって床に押し倒したとき、「お前には幸せになって欲しいんだ」と言った、とか。
離脱をめぐる意見の相違や暴力的になったことはいずれも事実のようですが、その根底にはお互い幸せになって欲しいという気持ちがあるんだなと。
パパラッチの面白半分のメーガン叩きと、それを野放しにする方針の王室の間で潰されそうだったメーガン妃を守ることが、何より最優先のハリー王子。
これに対してウィリアム皇太子は王室を離脱して家族で一人離れて国を出ることが幸せなわけない、と信じているわけで。
思いやる気持ちがすれ違っているだけ、とハリー王子の語り口から感じました。

結局、母親のダイアナ元妃の死去を聞かされた気持ちを本当に同じ立場で分かち合えるのはこの2人しかいないわけですからね。そこがやはり根底にあって、著書の中でも随所に見え隠れします。

ただそれでも一つ、ウィリアム皇太子のどう考えても不可解な言動が、ヒゲ騒動。
メーガン妃との結婚式前、ハリー王子はヒゲがないと精神が不安定になるからと、結婚式でもヒゲをはやしたままにしたいとエリザベス女王に直談判し許可されたのですが、どういうわけかウィリアム皇太子からヒゲを剃れとの謎の圧が。
どうも「俺は駄目って言われたのにお前だけokなのはずるい」という理由のようですが、絶対に剃れとゆずらず、油断すると問答無用で剃られてしまいそうな勢いだったようで。
当時すでに3人の子持ちだったはずのウィリアム皇太子ですが、けっこう根が子供っぽいんでしょうか?

パパラッチの怖さを伝えるならこの一冊

ハリー王子とメーガン妃夫妻、王室離脱するのは仕方ないけど、そもそも結婚したときに2人とも覚悟足りなかったんじゃない?というのが、この本を読む前の私の考えでした。
でも読み進めるにつれ、(著者の思うツボかもしれませんが)これは必然だったのかなと思うようになりました。

この本、ハリー王子の回顧録ですが、パパラッチに追われたダイアナ元妃の交通事故死にはじまり、ハリー王子がいかに常々パパラッチに人生を邪魔されてきたかを描いたノンフィクション、とも言えるかもしれません。
メーガン妃の前にも付き合ったガールフレンドはいたものの、交際が発覚するとパパラッチが本人や家族、友人を追い回し、自宅から何から行動範囲すべて張り込むということをしたために、彼女を巻き込むわけにはいかないと別れざるを得なかったことが明かされています。
メーガン妃が目立たない格好でスーパーに行って途中で正体がバレたとき、ゾンビさながらのパパラッチや一般人に囲まれたくだりは、リアルドーン・オブ・ザ・デッド状態が目に浮かびました。
もちろん自分も記事にあることないこと書き立てられ、しかも割とツメが甘いだけに余計にパパラッチの標的にされて・・・というのが不本意にもライフワークになってしまったハリー王子。
そして、パパラッチがパパラッチなら王室も王室。
全くのデタラメ記事にはさすがに反論しようとしたところ、王室にはスキャンダルに一切言及せず沈黙を貫くというポリシーがあり、釈明の機会を懇願しても取り合ってもらえなかったという記述が何度か出てきます。
そんなフラストレーションをずっと抱えていたのなら、国籍の面でも人種的ルーツの面でもバツイチの元女優という面でもスキャンダルの種を良くも悪くもいっぱい持っているメーガン妃と一緒になった以上は、沈黙のポリシーがある王室では無理だと思ったのは理解できるなと思いました。

英王室がもし、ハリー王子にデタラメ記事への反論に関してだけは認めて好きにやらせていたら、もしかしたら王室離脱しなくてすんだのかなあ・・・。

この本を読んで初めて知ったことの一つが、ハリー王子が事あるごとに訪れるほど、アフリカ大好きだったということ。
メーガン妃と付き合い始めた頃も2人でアフリカに来ているし、アフリカでの公務をめぐってウィリアム皇太子と奪い合いみたいになったこともあるみたいです。
パパラッチも、来ないとまでは言えませんが、ヨーロッパやアメリカなんかよりは確実に少ないでしょうし、安心するんですかね。
アメリカとかカナダとかじゃなくて、いっそアフリカに移住したらいいんじゃないかと思うのは私だけ?

かと思ったら、ハリー王子がネトフリでアフリカのドキュメンタリーを制作する計画があるというニュースが出てました。
これ、何気に普通のアフリカものでは取れないアクセス数取れそうだし、ハリー王子的にも意外な面が見てもらえそうだし、一石二鳥な企画では。
(メーガン無しで、ってとこも強調してまた何か煽ってます)

https://pagesix.com/2023/06/29/prince-harry-plans-netflix-doc-on-africa-without-meghan-markle/


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