第1回共和党討論会を勝手に評価 【アメリカ大統領選2024】

23日夜、アメリカ大統領選の共和党立候補者による第1回討論会がウィスコンシン州ミルウォーキーで行われました。

支持率トップのトランプ氏が参加しないことで肩透かしを食らったような状況ではありましたが、それなりに白熱した議論が交わされ、それぞれが国民に向けて自分が何者かをアピールする場にはなっていたように思います。

トランプ氏がいない分、支持率次点のデサンティス氏に攻撃が集中すると予想されていましたが、ふたを開けてみるとデサンティス氏よりもむしろその両隣、参加者中最年少で政界アウトサイダーのラマスワミ氏と政治一筋の保守派ペンス氏との対決が目立ちました。

参加候補の活躍ぶりを私の独断と偏見で5段階評価すると、以下のようになります。

ロン・デサンティス ★★
冒頭で討論の口火を切った瞬間は力強さと安定が感じられたが、上述のとおりラマスワミ氏とペンス氏の間に挟まれ「蚊帳の外」になる機会が徐々に増えていった。「国境での治安維持に米軍を動員するべきか」という質問には満を持して「Yes」と答えた一方、「ペンス氏がトランプ氏に背いてまで選挙結果承認プロセスの妨害を拒んだのは正しかったか」など、自分のプラスにならないリスクのある質問にはYes/Noでの明言を避け「そんなことより未来を見よう」と話題を逸らす歯切れの悪さが随所に見られた。地元フロリダでの功績アピールは十分にできていたものの、同じやり方がニューヨークやカリフォルニアなどリベラルな州を含む全米でも通用するかどうかは、いまいち説得力に欠けた。

ビベック・ラマスワミ ★★★★★
良くも悪くも一番存在感を発揮しアピールに成功したと思われるのがラマスワミ氏。早口できっぱりした物言いには頭の回転の速さがにじみ出ていた。今回はデサンティス氏よりもペンス氏に攻撃の焦点を当て「ジェネレーションYのアウトサイダー」vs「コンサバ政治家」という構図を印象付けた。「トランプ氏は21世紀最高の大統領」と言い放ったり、ウクライナへの資金援助を打ち切ると明言したりと、リスクの高い発言もためらわない点は起業家ならではのリーダーシップを感じたが、人を小馬鹿にしたような尊大な態度は人格面で疑問も感じさせた。かつてデサンティス氏が「トランプの賢いバージョン」と言われたが、どうもその座はラマスワミ氏に移りそう。

マイク・ペンス ★
上述のラマスワミ氏の攻撃に遭い、完全に論破されてしまった印象。それに動揺したのもあるのか、自分の主張を展開するために持ち時間を大幅に超えて司会者から注意を受けた場面などは、かなりマイナスの印象を与えてしまった。ジェネレーションYの身軽さを存分に発揮したラマスワミに対し、豊富な政治経験や既成概念を主張するペンス氏には全体的にどこか古臭さが漂い、次世代のリーダーにはなり得ないと感じさせた。

ニッキー・ヘイリー ★★★★
ラマスワミの次に検討したと感じたのがヘイリー。特に、妊娠中絶に関して「自分は中絶には反対だけれども連邦法で禁止するべきではない」と参加者中唯一の女性という立場を最大限に活かし、少なくとも女性有権者からは党派を超えて一定の理解を得られそうな印象を与えた。他のトピックでも政治的に極端な発言はなく無難と言えば無難だったが、破綻もなく、物言いもきっぱりしてポイントも分かりやすくまとまっていた。強いリーダーシップをどこまでアピールできるかが今後の課題になりそう。

クリス・クリスティー ★★★★
ヘイリーと並んで善戦したと感じたのがクリスティー。2016年の大統領選に出馬し同じ討論の場で戦った経験や、連邦検事の経験、ABCニュース解説員の経験がそれぞれ生きているのか、攻撃相手をしっかり定めてまとまった議論を展開するのが非常にうまい。検察官的立場からハンター・バイデン氏批判にさりげなく持っていったのはさすが。「選挙結果承認をめぐりトランプ氏に背いて合衆国憲法に従ったペンス氏の判断は正しかった」とペンス氏を援護し、必要なリスクは取る覚悟も正義感を感じさせたのは好印象だった。正直、容姿でかなり損をしていると思うけれど、アメリカ大統領選はそれも含めた戦いなので仕方ない。

ティム・スコット ★
正直、どんな議論を展開したのかほとんど印象がなかった。前評判はそれなりに悪くなかった人なので、次回はもう少し存在感を発揮してほしいところ。

エイサ・ハッチンソン ★★
こちらも強いインパクトは残せなかったが、スコット氏よりはまだマシといったところ。トランプ氏を公に批判している一人として、トランプ氏が起訴された場合、共和党の指名候補に選ばれても支持しないと言い切ったのは一貫した姿勢を感じさせた。

ダグ・バーガム ★
個人的に、直前に彼をフィーチャーしてブログを書いたので善戦してほしかったのだが、残念。討論会当日に足を怪我して病院に運ばれるなんて、「持ってる」としか言いようがない。それをうまいこと注目材料に活かせば面白いことになったと思うけれど、冒頭でジョークにしただけであまり印象は残せなかった。中絶の立場ではヘイリー、経済の立場ではラマスワミとそれぞれ主張が重なるところがあって、バーガム氏のユニークさを発揮できなかったところもあるかも。でも正直、討論慣れはしていない印象。

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