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新型コロナ5類移行後のオンライン診療に関する制度変化のまとめ

こんにちは。事業連携推進室の稲生です。私の主な経歴は内科医で、メドレーでは主にオンライン診療に関連した情報の収集や啓発に携わりながら、現在も非常勤で診療をしています。

令和5年5月8日、新型コロナウイルス感染症は、感染症法上の位置付けが第5類に変更となりましたが、(※1)。オンライン診療に関連した診療報酬上の特例措置は、一部を除き7月31日に終了すると公表されています(※2)。

この公表を受けて「特例措置が終わると、オンライン診療はどうなるのか?できなくなってしまうのか?」といった質問をいただくことがあります。今回は、新型コロナウイルス感染症が5類に移行したことで、オンライン診療に関連する診療報酬制度がどのように変化するのか、これまでの経緯も含めて整理したいと思います。
(結論からいうと、特例措置終了後もオンライン診療は引き続き活用できます。また、コロナ5類移行によって起こる社会の全般的な変化は、MEDLEYのコラムにまとまっているので、ご参照ください)

オンライン診療をとりまく診療報酬制度の変化

オンライン診療に関する制度はここ数年で大きく変化してきました。中でも、医療機関がオンライン診療の対価として得られる診療報酬について、いくつかの制度変更が重なったために、現時点で結局どの制度が効力を持っているのか分かりづらくなっているようです。

臨床現場におけるオンライン診療の使いやすさと、関連する診療報酬制度について概念的にまとめると、以下の図のような変遷となっています。

(図)診療報酬に関する制度変遷と臨床現場でのオンライン診療の使いやすさ

ポイントを挙げると以下のようになります。

  • 平成30年度の診療報酬改定で、一部のオンライン診療では診療報酬が算定できるようになったが、条件が厳しく、活用できる場面が限られていた。

  • 令和2年度の診療報酬改定でも条件が厳しいままであったが、同時期に新型コロナウイルス感染症に対して出された特例措置によって大きな規制緩和が起きたため、オンライン診療に関しては、ほとんど特例措置における運用がなされていた。

  • 特例措置は依然継続していたが、令和4年度の診療報酬改定において特例措置を上回る評価が加えられ、さらに活用場面が広がった

  • 5類移行を受けて、令和5年7月をもって診療報酬上の特例措置は終了し、令和4年の診療報酬単独の運用に移行する。

上記でいう「臨床現場でのオンライン診療の使いやすさ」とは、実際に何を指しているのか、という点を大まかに整理すると以下の表のようになります。

(表)オンライン診療関連の診療報酬の取り扱いについて

やや主観も混じえたものになりますが、表におけるポイントを補足します。

  • 初診でのオンライン診療は、新型コロナウイルス流行前は認められていなかったが、特例措置以降は実施可能となった。

  • 再診でのオンライン診療も、新型コロナウイルス流行前までは強く規制されていたが、特例措置により疾患制限や対面診療との組み合わせの制限等がなくなった。

  • 診療報酬は、特例措置により概ね点数が上がり、令和4年診療報酬改定においても(一部の診療科を除き)さらに上がった。

  • 本来診療報酬においては音声通話のみの電話診療とビデオ通話を用いるオンライン診療は異なる扱いであるが、特例措置下においては電話診療とオンライン診療とが同等に扱われていた。

このように、令和4年度の診療報酬改定によりオンライン診療の規制は大きく緩和されているので、特例措置が終了してもオンライン診療の使いやすさには大きな影響がありません。むしろ、電話診療に対する制限が戻るので、オンライン診療の価値が改めて重視され、普及につながる環境になると考えられます。

なお、令和4年度の診療報酬改定の詳細はnote:誰もがオンライン診療を利用できる未来が近づいてきた〜令和4年度診療報酬改定について〜をご参照ください。

一方、精神科や小児科は、オンライン診療と相性が良いとされている診療科ですが、該当する一部の診療報酬がオンライン診療では算定できないなどの課題も残っています。

このあたりは、今後エビデンスの蓄積などとともに、さらなる検討が進められていくことと思います。

まとめ

新型コロナウイルス感染症によって、オンライン診療に関連する診療報酬制度は大きく変化しました。

「コロナのために規制緩和された」と認識している方は、「コロナ特例が終わったらオンライン診療が使えなくなってしまうのではないか?」と思われるのかもしれません。
しかしながら、実際は上記の通り、診療報酬改定においてしっかりとオンライン診療についての規制緩和や評価がされてきていますので、多くの場合はこれまでと変わらずにオンライン診療を活用することが可能です。

今後、新型コロナウイルス流行に対する非常事態がある程度落ち着いた中で、より丁寧な議論が再開されていくことと思います。医療機関にとっても患者にとっても、より良い医療が提供されていくために、オンライン診療がさらに幅広く用いられていく未来に期待します。

参照
※1 厚生労働省HP 新型コロナウイルス感染症について
※2 令和5年3月31日 厚生労働省 事務連絡「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けの変更に伴う新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて

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