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オンライン診療の適切な普及とは ~CLINICSオンライン診療 二次医療圏カバープロジェクトの開始にあたって~

はじめまして。メドレーGR(ガバメントリレーション)担当の武見です。
先日「令和4年度の診療報酬改定に関するnote」の執筆を担当した篠崎さんとともに、政策渉外業務を担当しています。

本日2022年3月3日に、メドレーは「CLINICSオンライン診療 二次医療圏カバープロジェクト開始」というニュースリリースを出しました。この二次医療圏という言葉、日頃医療に関わらない方にとっては耳慣れないと思います。


今日は「適切なオンライン診療の普及」とはどんなものか、そのうえで「二次医療圏カバープロジェクト」で何を行おうとしているのか、をご紹介をしたいと思います。

適切なオンライン診療とは

冒頭でご紹介の「令和4年度の診療報酬改定に関するnote」でも篠崎さんが書いていますが、2022年の診療報酬改定によりオンライン診療を取り巻く環境は大きく変わろうとしています。
特に患者さん側から見たときの大きな変化としては、

① オンライン診療ができる対象疾患が制限されている→疾患制限なし
②3ヶ月連続で対面診療をした患者でないとオンライン診療に移行できない    →オンライン診療前の3ヶ月連続対面診療は不要
③オンライン診療をした場合の診療報酬が対面時に比べ著しく低い→一部の      診療報酬は対面診療の9割程度に
④オンライン診療は原則初診には利用できない→初診からでも利用可能

という4点があげられます。

2016年からオンライン診療システムを運営する当社としては、今回の改定をきっかけにオンライン診療が皆さんの生活に本格的に根付き、一助となることが出来れば、と願ってやみません。
その一方で、改めて「適切なオンライン診療」の普及についてもしっかりと考えていくことも大切、と認識しています。

では、「適切なオンライン診療」とはどういうものなのでしょうか?

細かい点は厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に記載されておりますので、ここでは最も大切な点を記載します。

メドレーでは、オンライン診療を、外来・入院・訪問診療に次ぐ第4の診療スタイルと考えており、対面診療と組み合わせて利用できる環境が大切だと考えます。

基本的には、症状が安定している慢性疾患の定期通院であったり、病院に行くべきかどうかの判断や経過観察といった医療行為と相性が良い診療スタイルです。一方で、「原因不明で体調が悪くなったとき」「症状が急に変わったとき」などは、なかなかオンラインだけでその原因や治療方法を特定することは難しく、身体診察や検査といった対面での診療が必要となることが多くなります。

したがって、オンライン診療で受診する医療機関であっても、行こうとしたらいつでも行ける場所にあるということが大切なのです。
※希少疾患や難病の治療などの目的で、もともと対面診療でも患者さんが遠距離から通院している場合はこの限りではありません。

まとめるとオンライン診療は、

・慢性疾患の定期通院や病院に行くべきかどうかの判断や、経過観察といった医療行為と相性が良い
・行こうとしたらいつでも行ける場所にあることが重要
(例外あり)

となります。
そして、この「行こうとしたら行ける」という範囲を考える上で大切なのが、「医療圏」という考え方になります。

地域医療に大切な「医療圏」という考え方

都道府県が策定する医療計画の中では、病院及び診療所の病床の整備を図るべき地域的単位として、医療圏という考え方が使われます。

ちょっとした不調や慢性疾患でかかりつけ医に受診・通院するような場合から、手術や特殊な検査を伴うような専門的な治療を受ける必要がある場合まで、それぞれの状況に応じて一定の範囲内に適切な医療機関が存在する(患者さんからすると、アクセスできる)ようにしましょう、という考え方です。

医療圏は大きく3つに分けられます。

一次医療圏:日常生活に密着した保健医療を提供する区域で、概ね市区町村単位
二次医療圏:健康増進・疾病予防から入院治療まで一般的な保健医療を提供する区域で、一般に複数の市区町村で構成 ※日本の地域医療の計画は二次医療圏を中心に議論されます。
三次医療圏:先進的な技術を必要とする特殊な医療に対応する区域で、都道府県単位(北海道のみ、6つ)

東京都を例にすると、二次医療圏はこのような感じになっています。(赤い線で囲まれた各区域と島しょ部)

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        出典:平成30年3月改定「東京都保健医療計画」より抜粋

「何かあれば病院に行ける」と一般的に言われる距離は、二次医療圏内を想定するものが多いと思います。

地域医療に根ざしたオンライン診療の全国的な普及/二次医療圏カバープロジェクトについて

ここまで「適切なオンライン診療」と「医療圏」についてお話をして来ましたので、ここで”普及”についての現状をお話しします。
ここでいう”普及”とは「オンライン診療のアクセス機会」とし、「適切なオンライン診療の理解が共通認識として広がること」という観点は、今後のnoteに譲りたいと思います。

現在、オンライン診療を実施する医療機関が十分にない地域が数多く存在しており、地域医療に根ざしたオンライン診療の全国的な普及には至っていません。つまり、アクセス機会は万全とは言えません。

CLINICSは2016年の運営開始以降、都市部の医療機関を中心に導入していただく割合が高いのが実情です。

それは患者さんの年齢層が都市部のほうが若くオンライン診療に向いている人が多い、医療機関側も地方にいくほど高齢の方が多くITツールへの馴染みがない、都市部のほうが医療機関同士の競争がありオンライン診療を近隣との差別化として導入したいという医療機関が多い、といった理由があげられます。
このような状況では、いざオンライン診療を利用したいと思ったときに、オンライン診療を実施する医療機関が家から遠いところにしかない状況となり、対面診療との組み合わせという原則を大切にすることが難しくなってしまいます

そして、都市部にばかりオンライン診療に対応する医療機関が増え、地方にオンライン診療を使える医療機関がない状況は、医療アクセスの確保という観点から見て、不均衡であると言わざるをえません。

この状況を踏まえ、私たちメドレーは「二次医療圏カバープロジェクト」として、オンライン診療に対応する医療機関が周囲にない医療機関に対して、初期導入費用を無償で提供する運びとなりました。地域のプライマリ・ケアを主に担う内科と小児科を対象としてプロジェクトを開始します。(詳細やお申し込みは以下より)


このプロジェクトを通して、地域医療に根ざした全国的なオンライン診療の普及がすすみ、多くの患者さんが適切にアクセスできる環境が整ってほしいと願っています。

最後になりますが、オンライン診療の意義は、「医療アクセスの確保を通じた健康で安⼼して⽣きることができる社会の実現」であり、規制緩和が起こっても適切なアクセスがなければ十分に活用されないままです。
「仕事や家事・育児で時間を確保できない現役世代が、適切なタイミングで診療を受け、治療を遅らせない」、「⽣活習慣病などの重症化予防により健康寿命を伸ばす」、「専⾨的な治療であっても、地理的制限なく、できる限り平等に治療機会が提供される」など、「本当はできるはず」の医療を、テクノロジーの力を活用して実現していきたいと考えています。


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