見出し画像

弁護士・法務人材のための “インハウスローヤーのリアル” セミナーレポート

こんにちは。メドレーのDesign&Communication室です。
2024年6月27日に、弁護士・法務人材に特化した採用支援を行うLawyer's INFO様と共催で、企業で働くキャリアに興味のある弁護士の方向けにトークセッションを開催しました。

インハウスローヤー(企業内弁護士)として働く面白さや、法律事務所との違いなどについて、法務コンプライアンス部に所属する弁護士の尾崎さん、野村さん、中村さん、𠮷澤さんに語っていただきました。本記事では、イベントの模様の一部を再構成してお伝えします。


登壇者プロフィール

(2024年7月1日時点)
尾崎さん | 執行役員 法務コンプライアンス部長
2012年に森・濱田松本法律事務所に入所し、約8年半にわたり勤務。2020年にスマートニュース株式会社に転職し、リーガルヘッドを務める。2023年8月にメドレー入社。

野村さん | コーポレートリーガルグループマネジャー
2015年にアンダーソン・毛利・友常法律事務所に入所し、約5年半にわたり勤務。2021年6月に三菱地所株式会社に転職し、企業内弁護士として法務・コンプライアンスに関わる幅広い業務に従事。2023年12月にメドレー入社。

中村さん | サービスリーガルグループ
湊総合事務所の弁護士として、約5年にわたり中小企業の案件・相談や一般民事などを担当。2023年4月にメドレーに入社し、医療プラットフォーム(以下、医療PF)を中心とした事業法務を担当。

𠮷澤さん | サービスリーガルグループ
一般民事を扱う法律事務所でキャリアをスタートし、その後、企業法務を担当する法律事務所に転職し、約2年にわたり勤務。2023年5月にメドレーに入社し、人材プラットフォーム(以下、人材PF)を中心とした事業法務を担当。

ファシリテーター
岩崎 祥大さん|Lawyer's INFO CEO/弁護士
森・濱田松本法律事務所で約5年勤務後、かなめ総合法律事務所に転職。2022年に弁護士・法務人材のための転職エージェント「Lawyer’s INFO」を設立。

「攻めの法務」を担う、メドレー法務コンプライアンス部

尾崎さん:まずは、メドレーの法務コンプライアンス部についてご紹介します。

我々のミッションは「当社グループにおける法務コンプライアンスの専門家として、当社グループの様々な活動を能動的かつ機動的にドライブ・サポートする」ことです。経営や事業のあらゆる側面に対してインハウスローヤーが関与する、「攻めの法務」、「強い法務」を志向しています。

2024年には、日本組織内弁護士協会(JILA)の第1回「JILAインハウス・リーガル・アワード」において、メドレーの法務コンプライアンス部が団体賞である「中小規模部門」を受賞しました。法務部門がリーダーシップをとり、経営と一体となって事業価値の最大化に大きく寄与している点や、ディール・コンプライアンス・ガバナンスなど様々な点において法務部門が積極的に中心的な役割を担い、運営に貢献している点などを高く評価いただいています。

現在、「法務コンプライアンス部」は、4つのグループに分かれています。

(2024年7月現在)

グループ横断で業務を行うことも多く、例えば株主総会の準備シーズンになると、メイン担当のコーポレートリーガルグループに加え、他のグループのメンバーもタスクを分担することがあります。複数のグループを兼任しているメンバーもいます。このように、縦割り組織ではなく流動性が高いのが大きな特徴です。

業務内容について

──早速ですが、みなさんが携わっている日々の業務について教えてください。

𠮷澤さん:人材PF本部からの相談や契約レビュー全般を担当しています。最近多いのは、新しいサービスや機能が増えていることに伴う、利用規約の作成・改定です。事業法務以外にも、内部統制プロジェクトやリスク管理関連の企画など幅広く担当しています。リスク管理プロジェクトでは、メドレーグループ全体で洗い出したリスクとその改善策をもとに、年間を通して実行していくためのプロジェクトの企画、進行管理等を担っています。

中村さん:私は医療PF本部からの相談や契約レビュー全般を担当しています。𠮷澤さんと同様に、契約書の作成、レビューのほか、利用契約の策定・改定や、各種プロダクトに関する法律相談にも対応しています。また、事業の運用面における法律上のリスクについて事業部と相談し、改善や見直しも実施しています。法務関連の社内セミナーを担当することもありますね。

野村さん:医療や介護関連事業を手がける株式会社グッピーズの買収などのM&A案件、出資案件を多く担当しています。最近では、海外子会社の設立案件も担当しました。そのほか、取締役会の対応や社内規程の整備、指名報酬諮問委員会の準備などのコーポレートまわりの業務もあります。

尾崎さん:取締役会や指名報酬諮問委員会の事務局を担当し、それらに同席するだけではなく、グループ全体の決裁ワークフローのデザインや職務権限表の企画・管理を行ったり、指名報酬諮問委員会のアジェンダ設定、法務のメンバーが社内の全ての重要会議に出席・参加する体制になっていたりするなど、ガバナンスや経営の側面に多く関与しています。日本発の企業グループで、法務がここまでの関与をできているケースはまだ多くないと思いますが、グローバルカンパニーでは一般的であり、それが日本のスタンダードになっていくのではないかと思います。そのような経験を日々できる点については、非常に学びが多いですし、今後、その重要性がより高まると思いますね。

法律事務所との違い

──法律事務所とインハウスローヤーの一番の違いはどこにあると思いますか?

𠮷澤さん:関わる人数が全然違うと感じています。事務所やクライアントの規模にもよりますが、外部弁護士の場合は、基本的に窓口となる社員がいて、その人と1対1でコミュニケーションを取ることが多いです。一方で、インハウスの場合は、自分たちが直接事業部のメンバーにコンタクトをとり、進行していかなければいけない。そこが、1番の違いかなと思います。

尾崎さん:インハウスの場合、会社の制度や仕組みを作っていく初期のフェーズから関わることも多いと感じます。
例えば、外部弁護士だと「電子署名ってどういう法的効力を持つんですか」「電子署名ってどういう要件を満たせば有効なんですか」といった質問を受けることはあっても、「電子署名を導入するためにはどうしたらいいですか」「どういう電子署名のツールを導入するのがいいでしょうか」という相談を受けることはめったにないと思います。組織の状況や目指したい姿、会社の予算などを頭に入れたうえで、オーナーシップを持ってリードしていく力はすごく求められるかなと思います。

野村さん:担当する業務内容が幅広く、かつ最初から最後まで携わることができます。経営陣との距離も近いですね。会社の運営状況を把握できるので、貴重な経験だと感じています。

インハウスローヤーのやりがい・大変なこと

──インハウスローヤーとしてやりがいを感じることや、大変なことを教えてください。

野村さん:事業や会社全体のスピード感を損なわないようにしながら正確な情報をお伝えしなければならず、そのバランスを取るのが大変だと感じています。

関係性ができるとより細かいところまで相談してもらえるのは、嬉しいですね。法律事務所にいた時よりも、距離が近い分その都度反応がダイレクトに伝わってくるので、「こういうことをして満足してもらえた」という実感を得られ、すごくやりがいを感じています。

尾崎さん:メドレーは組織も事業も拡大していますが、他部署との距離が遠いという感覚は全然ないですね。

インハウスローヤーとして活躍するために必要なこと

──インハウスローヤーとして活躍するために必要な能力は、法律事務所で求められる能力と少し違うように感じるのですが、そのあたりはいかがですか?

中村さん:根っこの部分は一緒だと思っており、外部弁護士もインハウスローヤーもコミュニケーション能力が求められると感じます。相手がわからない部分を丁寧に説明したり、相談してきた相手が今どういう状況で、誰から相談を受けて、私に連絡してきているのかを想像しながら話すことが必要になります。他にもメドレーの場合はスピードも重要です。事業部の皆さんが、スムースなコミュニケーションのために要点や論点を整理してから相談してくれるので、こちらも迅速に回答できる対応力が求められています。

尾崎さん:外部弁護士からインハウスに転職する場合、特に若手の方の場合は、転職する前の時点でビジネス感覚を持っていたり、事業を深く理解できていたりするケースは少ないのではないかと思います。でも、それはインハウスに転職してからいくらでも勉強できますので、その点を気にしてインハウスへの転職を躊躇するのはもったいないように感じています。個人的に、インハウスとして活躍するために特に大切な能力は、想像力、共感力、コミュニケーション能力だと思っていますが、いずれも外部弁護士としても大切な能力ですよね。外部弁護士として鍛えられ磨かれた能力は、インハウスとしても間違いなく活きると思います。

インハウスローヤーの成長機会

──「インハウスローヤーの成長機会」について、特に若手弁護士の方が気にしていることが多い印象なのですが、実際そのあたりはどのように思いますか?

𠮷澤さん:具体的に担当する業務など、弁護士としての成長速度は様々な要因で変わると思うので、「インハウスだから成長機会がない」ということはないと思います。

尾崎さん:例えばインハウスだと、外部弁護士のように「弁護士として顧客を獲得するスキル」が得られないのではと不安に感じる方もいるかもしれませんが、結局、社内から信頼されて頼りにされる立場になることと、外部弁護士として顧客を獲得することとは、根本の部分は同じであると思っています。インハウスの場合、身近に顧客がいるようなもので、ダイレクトに感謝されるように頑張ることが、実力に結びつくのではないでしょうか。

働き方について

──インハウスローヤーも忙しいイメージがあるのですが、実際はどうですか?

野村さん:法律事務所に所属していたときと比較すると自分で仕事のペースを作る余裕があるので働きやすいですし、当たり前の話ではありますが休日はしっかりと休めます。

𠮷澤さん:私も、感覚的にはワークライフバランスに余裕があると感じています。

中村さん:私も同じですね。

尾崎さん:稼働時間という観点から見ると、一般的にはインハウスローヤーの方が少なめという傾向にあると思いますが、その分密度はかなり濃いように感じます。

──法律事務所との違いはありますか?

尾崎さん:裁量労働の場合は、厳密な意味で稼働時間が決められているわけではなく、文字どおり裁量があります。その観点からは外部弁護士としての自由度と、そこまで変わらないかなという感覚です。

──メドレーでは基本的に皆さん出社されていると伺いましたが、出社のメリットはどんなところですか?

尾崎さん:メドレーの場合はチームごとにデスクが決まっているので、チームメンバーの顔も見えるし、気軽に議論もできます。事業部のメンバーや他の部署のメンバーと立ち話をしながら相談することもあるので、そういった機会が日常的に自然と生まれるという観点からは、出社するのは大事だなと思います。

今後のキャリア

──インハウスローヤーはどのようなキャリアパスが積めるかをイメージしきれていない方も多いと思うのですが、今後のキャリアについてみなさんはどのように考えていますか?

尾崎さん:自分の中で具体的に決めているプランがあるわけではないんですよね。目の前の仕事に対して誠実に向き合ってがんばることが、将来の自分の選択肢を広げることにつながるのではないかと考えています。その上で、私としては、自分のキャリアの中で得てきた知見や経験をもとに、さらに自分が成長できるような道を進んでいきたいなと思っています。

──マネジメントに行くべきか、プレイヤーのままでいるべきかといった考えについてはいかがですか?

尾崎さん:マネジメントとプレイヤーは役割でしかないので、自分はどちらが向いているか、どちらをやりたいか次第で決めてよいのではないかと思います。ただ、年次が上がれば上がるほど、募集要項でマネジメント経験を求めている会社は多くなる傾向にあると思います。自分の経験値を増やす、選択肢を増やすという観点で言うと、マネジメント経験もどこかで積んだ方がいいと思います。

──最後に、メドレーへの入社を検討している方に向けて、メドレーの法務コンプライアンス部が今後どのように成長していこうと考えているか、ビジョンを教えてください。

尾崎さん:メドレーは、どんどん組織も事業も拡大しています。米国での事業を開始し、2024年にはフィリピンで子会社も立ち上げました。グローバルに進化を続ける中で、それに対応できる法務組織を作っていく必要があります。私を含め、各メンバー個々の能力を更に高めていく必要がありますし、法務組織全体として、お互いにカバーやフォローをし合える体制にしていきたいと考えています。

参加者からのQ&A

参加者:企業で弁護士として勤務しているのですが、社内における法務のプレゼンスが低いことに課題を抱えています。メドレーでは法務部のプレゼンスが高いと伺ったのですが、どのような取り組みをされたのでしょうか?

尾崎さん:例えば、まずは法務への相談の敷居を低くするために、可能な範囲で様々なコミュニケーションの場に参加し、法的なサポートができそうな話題や論点に積極的に絡んでいく、ということが考えられると思います。そこで満足してもらえれば、そのような働きかけをしなくても相手から相談がくる、ということにつながっていくでしょう。相手の予想を上回る対応をしなければならないので大変ですが、そのような草の根活動を繰り返すことで、徐々に向こうから相談してくれるような雰囲気が作れるのではないかと思います。

また、法務主催の社内勉強会を実施するのも一案かと思います。過去に自分が実施した事例では、世の中の不祥事とかSNS等でバズっている話題について法的観点から分析するという勉強会を開催したところ、興味を持って参加してくれる方が想像以上に多かったです。

──みなさん、お話ありがとうございました!

終了後は、参加者の皆さんとともに懇親会を開きました。
トークセッションでは語りきれなかった法務業界のあるあるや、参加者による質問・キャリア相談など、幅広い話題で盛り上がりました。

興味を持った方へ

メドレーでは現在、法務チームで一緒に働いていただけるメンバーを募集しています。
選考意思は不問、まずはカジュアル面談からでも大歓迎です。弁護士としてのキャリアに迷っている方も、少し話を聞いてみたい方も、お気軽にエントリーください!