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電子処方箋ってどうなった?

■電子処方箋に関するこれまでの経緯

2016年の4月診療報酬改定のさなか、突如、厚労省のHPに登場した「電子処方せんの運用ガイドライン」

当時はロードマップも何もなく、とつぜん資料だけ公表されてびっくりしました。いま考えると、厚労省の中に「システムを構築するためにはどうすべきか」を考えられる人材がとても少なかったのではないかと推測されます。

システム化を誰がどのように進めていくのか?処方データ等が登録されるASPは誰が開発するのか?等不明点はたくさんありましたが、運用上いちばんネックになったのは、紙媒体で押印が必要な「電子処方せん引換証」が必要とされたことでした。患者さんは調剤薬局で薬剤を受け取るために、電子で送信された薬剤情報とは別に、同じ内容が記載された「電子処方せん引換証」を調剤薬局に持っていく、というのが厚労省が最初に考えた運用でした。

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これ、患者さんにとっては、紙の「処方せん」を持っていくか、「電子処方せん引換証」を持っていくかの違いで、誰も得しないシステムですよね。。

その後、株式会社メドレーという会社が厚労省から実証事業の委託を受けて、当初のガイドラインの問題点等が報告されました。
それを受けて厚労省はガイドラインを見直し、2020年4月に「電子処方箋の運用ガイドライン第2版」を出しました。
ここでは「電子処方せん引換証」の姿は消えています。

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この後、この仕組みにマイナンバーカードを用いた、オンライン資格確認の仕組みを使うという案が出てきたのが同年7月。社会保障審議会で、2022年夏ごろから電子処方箋の運用を開始するというロードマップが示されました。

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第2版のガイドラインでは、患者さんが調剤薬局で薬剤を受け取る際は、アクセスコードと確認番号を提示することになっていますが、今年1月に社会保障審議会で出た資料によると、マイナンバーカードの提示により、その手間も省けそうです。

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■電子処方箋のこれから

というわけで、予定通りであれば、今年の春ぐらいからベンダーはシステム開発に着手し、来年の診療報酬改定までには完了しておく必要がありそうですね。

オンライン資格確認のように、医療機関や調剤薬局おのおのが単体でシステムを導入してもあまり意味がないので、地域ごとに主だった医療機関・調剤薬局がせーので導入できれば、患者さんの利便性も高まるのではないでしょうか。

ただ、資料を読んで気になったのはマイナンバーカードをさらに下回るHPKIカードの普及率です。

HPKIカードとは国家資格のある26の医療従事者の資格を電子的に証明できるもので、このカードにより、医師等の押印が必要な文書に電子署名を付加し、正本として利用することが可能となります。
処方箋も医師の押印が必要な書類ですので、電子処方箋として紙の処方箋なしで運用するためには、このHPKIカードによる電子署名が必要です。

先週、とある総合病院でHPKIカードの取得率について聞いてみたところ、100人以上いる外来担当医のうち、2名しかカードを持っていないとおっしゃっていました。
気になって調べてみたところ、全国的にも同様の状況のようです。
今後は医師免許交付時に合わせてHPKIカードを交付する予定とのことですが、現役の医師の多くがHPKIカードを取得するのは、システム開発より時間がかかりそうな気がしてなりません。

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しかし、この電子処方箋の仕組みは、オンライン診療に欠かせないものです。いまの仕組みでは、患者さんまたはそのご家族に、診察後、処方箋を受け取りに医療機関に来てもらうか、調剤薬局に処方箋をFAXし、あとで医療機関から調剤薬局に紙の処方箋を郵送するなどの運用が必要となります。

とは言え、もしオンライン診療を行わない場合、この電子処方箋の仕組みは誰得感がぬぐえないのも事実です。
患者さんが置き去りにならないような仕組みの構築が望まれます。

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