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第1回 そして彼(ら)は鉛筆を握った

 さて,早速始めていきましょう。まずはなにをさておいても人選です。『天の時は地の利に如かず,地の利は人の和に如かず』とは孟子の言葉ですが(検索しました),この企画を成功に導くにはやはり指導する側とされる側の度量と技量,相性が求められると思うんですよ。
 だって「絵の上手い人」と「絵が下手な人」って基本的に交わりませんからね。これ書いてるワタシも選択科目では美術避けて音楽とかに逃げてましたし。
 そんな「出会うはずのない二人が出会ってしまった」的なキャッチコピーがつきそうなこの企画を完走するために,今回白羽の矢を突き立てたのがこの2名。

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 三木さん(メディカルイラストレーター)。版権フリーって素晴らしい。
弊社で長らく活躍いただいているイラストレーターさんで,頭から爪先までなんでも描いてくださいます。
 あまりにもお世話になっていてそろそろ感謝を越えて信仰になりそう。手描きでの精密画を得意とし「ここぞ!」というページで紙面を飾ってくれます。

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 どうですかこの迫力。これでまだ本気の描き込みではないらしいですよ。ひええ。
 三木さんの実力がわかっていただけたことかと思います。これなら講師役として申し分ない。火力過剰な感すらあります。そんな三木さんの指導を受け止めるのが彼。

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 入社3年目Y本さん。「美術ずっと2でした」という実績を買われ本企画に(本人の知らないところで)抜擢されました。美術2! ワタシも! 出席点は貰っているけど実技はいまいちだったとの証左の数字です。頼もしい。
 あと若いんで伸びしろが期待できるんじゃないでしょうか。たぶん。

 続いて画材の紹介に参りましょう。
 今回は弊社の会議室で指導と撮影をすることになったので,三木さんに言われるがままに新しく買い揃えました。「これだけあれば大丈夫」と教えてもらったんですけど「本当に? プロだからできちゃうんじゃなくて? この雲形定規とかも買っといたほうがいいんじゃないの?」という疑念がなかったといえば嘘になります。

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 まずは最重要,色鉛筆。これがなくては始まりません。
 「ここだけはいいものを」との強いお言葉に押されてドイツは Faber-Castell社のポリクロモス色鉛筆36色をチョイスしました。以前にとある脳神経外科の先生にも愛用品だと紹介いただいたことがあったんですよね,これ。

 油芯の色鉛筆の存在を今回初めて知りましたが,色の伸びがよいのだそうで。バラ売りもしているので,人体によく使う色のグラデーションでそろえるのでもOKとのことです。
 文房具店で取り扱っていますがセット売りならAmazonでも買えます。最多120色は壮観ですがお財布を粉砕するお値段ですので,ご購入の際には吟味ください。

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 続いて鉛筆。
 100円ショップで箱売りしているような激安品でなければなんでもいいとのことでした。芯はBでも2BでもHBでも。

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 消しゴムと練り消しです。色鉛筆で塗った後に消すことを考えて,色鉛筆用の柔らかい消しゴムを勧められました。普通のプラスチック消しゴムだと削れてしまう? そうで?
 練り消しはハイライトをつけて立体的に見せる際に使うのだとか。なるほど、「立体的に塗る」よりも「塗った後に練り消しをかけて立体的にみえるようにする」ほうが確かになんとかなりそう。使うのが楽しみです。
 ちなみに尖った角を使えるようにカッターナイフも用意しておくといいそうですよ。
 写真はSEEDというメーカーのものです。Amazonで買えます。

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 クリップボードとA4用紙です。ボードは,あれば机の凹凸でガタってなったり紙がずれたりするのを防げます。ただ,写真みたいにプラスチック製でツルツルした板面のほかに,すべり止め対策なのか結構ザラザラしたタイプもあったので購入の際にはご自分に合ったものを。
 紙については,最初は色の塗りやすいイラストボードなども検討したのですが,「先生の身近にある紙のほうがよいのでは?」ということでなんの変哲もないA4のコピー用紙を使うことにしました。
 Amazonでも買えますし業者に頼むと明日来ます。

 これで準備は整いました。さあ三木さんまずはなにから始めますか!
どんなプロのテクニックが飛び出してY本さんの画力がゴリゴリ上昇していく算段になっているんですか!
 細大漏らさず記録しますよ!

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 え、地味……連載初回なのに…….。もっとこう、迷いなく一発で線を引けるコツの伝授とか……。
 いや、まず最初にY本さんの現時点での画力を確かめておくのは大事なプロセスでした(撮影当日までこの発想がなかった)。これでもしY本さんが万事に控えめな三歩後ろを歩く系男子で,実はどこに出しても恥ずかしくない画力の持ち主だったら企画の先行きが危うくなります。
 早速描いてもらいましょう。

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 ちなみに三木さんからは技術面以外でひとつだけ注文が入りました。

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 出た,「線が生きる」。絵が得意な人の口からしか出ない言葉ですよ。生死の境はどこにあるんだ。
 「躍動感がある」くらいにとらえとけばいいんでしょうか。
だとするとワタシの描く線,生まれた側からお亡くなりになってるんですが。そんな死生観に思いを馳せること10分とちょっと,Y本さんの処女作が完成しました。
 思い切りのよい彼のこと,巧緻はともかく躍動感にはあふれているはず!

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 あ、あれ……
 躍動感の有無はわかんないですけど,Y本さんこれ結構かたち取れてるんじゃないですか……。爪根もちゃんと描いてあるし指によって角度の違いもつけてあるし凹凸も……
 ひょっとしてあなた「3に近い美術2」だったのでは……。

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 あ、生きてるんですねこれ。いつかトリアージの基準を訊いてみたいです。それにしてもなんだか有望株じゃないですかY本さん。これ,すくすく成長しちゃって連載3回目くらいで卒業の線まであるのでは?
 ちなみに,Y本さんの隣で三木さんにも描いてもらっていました。途中から頼んだので作画時間は7〜8分ってところでしょうか。できあがったのがこちら。

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 さすがだ…… さらっと描いてこれ。まぎれもなくプロのお仕事ですよ。
ワタシなんかこのワシャワシャって描いてある円をみるだけで「あ、この人絵ウマ……好き」ってなってしまいます。

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 ありがとうございます!
 めちゃくちゃためになりそうですが,そのへんの具体的なテクニックについてはぜひ次回にお願いします。三木さんのテクニック伝授でY本さんの画力を伸ばしに伸ばし,なんなら彼を編集兼社内イラストレーターとして二刀流運用できるくらいまで育ててしまってもいいんですよ。

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しないでください。

つづく


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