見出し画像

私たちがCHLを辞めるわけ…

とある音声SNSで野崎さんと坂本がおしゃべりして気づいたことを整理して書きとめておこうと思います。CHLという研修を始めて8年がおわりました。あと2年だけやって閉幕しよう、と決めた理由を言語化してこなかったな、という意識からの挑戦です。
CHLという研修そのものをこの記事では語れないので、それを知っている人に向けて書いている感じです(ごめんなさい。関心を持っていただければ、9年目の募集要項をご覧ください)。

私たちのマイプロが一区切り

画像1▲2013年の全国イベント2回目の野崎さん

そう、この一言が一番しっくりくる、って気づきました。2年で300人以上と話し、医療現場を取材してきた野崎さん(小児科医・写真家)が2012年春にMedical Studioをつくったときから、なんとなく10年一区切りだね、と話はしていました。野崎さんも坂本も、ひとつのことに長く永くかかわる特性をもともと持ち合わせていないものの、数年やって成果を出せる状況でもない、とみていたからの落としどころだったのでしょう。

だから、当初の”予定”どおり、2022年度末でCHL学科という研修も、それを主催していたMedical Studioという非営利型社団法人も終わりにします。次は何をするの?と聞かれることが、ごくまれに出てきましたが、特に何も決めていない、のが実情です。少なくとも、これまでのMedical Studioの延長にあるような活動にはならないだろう、って、二人で話をしています。あ、それに二人で一緒に活動することもないだろうって。仲たがいする、ということではなく、異なる背景と考えをもつからこそ、違う道に進むことがわかっているだけです。

まだまだニーズがあるのでは?

医療や医療者が、自分と異なる業種や世界の人たちと力をあわせる必要は、実はこれまで以上に高まっている、と、私たちも思っています。病気の根っこにアプローチしようとすれば、おのずとまちの人たちと連携をしたり、ネットワークを形成したり、新しいシステムを構築する必要があります。そのときに持つべき視点や発想を学ぶ研修として、CHL学科へのニーズはまだまだ残るのかもしれません。実際に、8年間で311人が修了しましたが、毎年見ず知らずの人が全国から応募して参加してくれました。フルオンライン化した第8期には、これまでの合宿型では参加したくでもできなかった交通アクセスが悪い地域の人や、子育てや介護など家庭での役割がある人、単独で診療していて地元を離れずらかった臨床家がゾゾっと応募してくれました。

ひととのつながりかたが変わりつつある現代。地元の住民が抱える生きづらさはさらに複雑に、複合的に、かつ潜在化しています。まちにでていって何かを仕かけたい!けど、どこからどうすればいいのか悩み、戸惑う医療者も、これからさらに増えるんじゃないでしょうか。CHLがいう、残り2年の間にも大きな変化がまた訪れるのではないでしょうか。

きっとそうです。けど、私たちはバトンを渡します。

教育は変化しつづけるべきではないか

抱えすぎました。時代の変化や受講する対象者の変容に応じて、教育の方法論も変化していくべきでしょう。2012年に設計した研修プログラムは、この8年間大きな変更をしてきませんでした。ケースの改定や入れ替え、受講生を講師にするための研修やアイデアピッチのあり方など、少しずつ修正はしてきました。けど、毎年これでいいのか?と悩みつつも、ちゃんと過去を振り返り、改善するだけの省察はできませんでした。それだけの時間を確保できなかったのではなく、それ以上の方法論へのアップデートを思いつけなかった、というのが正直な感想です。

第3期day3,4-10

で、思いつけない時点で、抱え続けてはいけないのです、って私たちは思っています。このプログラムを使いこなす、使い倒す、これをもとに何かを生み出す人がいれば、そこに向けて手放すべきかな、と。明確な宛先がなくても手放したいと思います。こんな意図でここまでやってきました、と書き残し、誰かが拾ってくれたらうれしいし、拾ってもらえなければ、それも一つの情報として受け止めるまで、と考えています。だから、投げ出す、という感覚より、誰かに預ける感覚でいます。

いやいや、では、その大幅アップデートを新しい人たちとやればいいじゃない!って励ましていただきそうです。そのお気持ち、ありがとうございます。けど、そこで野崎さんと坂本の飽きやすい?性質に戻ってきます。10年やったから、次の何かに手をだしてみたい、って気持ちがあるんです。飽きた、という表現は不適切で、私たちの気持ちを表現するには不十分な単語なのですが、意味も根拠もなく、なんとなく

やりおえていいよね

と思えてきています。

残せる資産と仕組みは、残りの期間でつくっていきます。この1つ前に書いたnoteにあるような、修了生が外のひとともっとつながれる仕組み(マイプロから生じた問いを語り合う場づくりや、修了生自身をケース教材化してそれをもとに学びあう集団形成など)に取り組んでみようと思っています。

「地域のことは教育できるのか?」

CHLをつくるとき、まちに飛び出し活動しているとあるドクターにいわれたこの一言は、いつも頭にあります。できるし、できるようにならないと広がらないし、人の暮らしは変わらない、と思って自律分散型の研修を設計しました。そして、それは一定程度有用だったのだろうと振り返っています。

けど、ここ数年、少し不安になっています。それは、たぶんこんな理由から感じたものです。

まちにでていき協働を働きかける人が持ちたい視点や発想はCHLで学んだとしても、地元でそれを行使するときに伴走しきれない実感を持ち始めたことがあります。受講した人が見ている景色は、固有的です。遠くにいるCHLの企画者、同期の受講生や修了生サポーターにはわかりません。その景色を共有するひとと地元で議論を重ねてほしいから、むしろわからなくてもいい、と思っています。けど、研修で一歩を踏みだす発想法がわかっていても、やっぱり壁にあたるんです。その壁は必要な試練であり、学びと成長・自己変革の機会だと考えていました(いまも変わりませんが)。ちゃんと壁にあたるためにも「マイプロ(マイプロジェクト:受講中に地元で進めるプロジェクト)」を設定して、研修ごとにその進捗を共有し、コメントしあってきました。けど、期を重ねるにつれ、より丁寧にマイプロにコメントし、フォローしていかないと、壁の前で足踏みする受講者が増えてきた実感があるのです。

受講者の学びとりに問題があるわけではないことは、期間中のコミュニケーションや受講者自身と周囲が実感する変化をみればわかります。マイプロをとりまく環境がより豊かになり、さらには変化が早くなってきた印象があります。誤解を恐れずに端的にいうと、戸惑う場面が増え、CHLで獲得した批判的思考や複眼的視角が、さらに本人たちを戸惑わせ、混乱させる場面が増えてきたのかもな、って感じています。

毎年CHLの学びの最後に、マイプロを公開プレゼンするイベントを開講地ごとに開催していました。アイデアピッチ、と呼んでいたものです。発表した人にフロア参加者が発言やコメントシートでフィードバックをするのですが、マイプロの「未成熟さ」を指摘するようなコメントが増えていたことも事実でした(未成熟で途中経過を発表して磨く場なので、それ自体悪いことじゃないです!)。

画像3

第9期では、マイプロの設定を受講と修了の要件から外しますが、マイプロに取り組みたい人には、より丁寧にフォローしていこうと思います。マイプロの型(かた)みたいなものを少し提示してみて、使ってみてもいいと思う人に試してもらおうかと考えています。できる範囲でやるマイプロではなく、できないかもしれないけど、できるように考えやってみるマイプロに受講者といっしょに引き続き応援していきます。

なのにあと2年も続けていいのか?

いや、本当にその通りです。いいのかな。けど、不安で悩んでいることを受講する皆さんに伝えたうえで、じゃ、どうしたらいいの?を一緒に考えていきたいとも思っています。CHLというプログラムを批判的にみてもらって、自らの地域活動に生かしてほしい、と思っています。その意見をうけてできる限り積極的に改善していきます。なにごとも実験ですからね。

最後の2年は、風呂敷を畳む時期とはとらえていません。むしろ拡げちゃってもいいかな、と考えています。けど、そう思えるからこそ、野崎さんと坂本はいまの状態を「肩の荷が下りた」と言葉できている気がします。

という、2回目のおしゃべりで気づいたことのメモでした。

2021年4月4日まで、CHL-Ⅸ(第9期)の参加メンバー募集中ですよ(*'ω'*)