見出し画像

MSL(メディカルサイエンスリエゾン)ってどんな仕事?-1. MAの中のMSL

初めまして!リクルーターをしています岩野です。
製薬業界を経験しリクルーターに転向した私が、実際に経験した職種の一つである「MSL(メディカルサイエンスリエゾン)」について解説・情報発信を行っていきます。

MSLは製薬業界以外の方にとってはあまりなじみのない職種ですし、それぞれの会社や組織によっても実際の役割や仕事内容が少しずつ異なる現状もあるため、なかなか全貌を把握するのが難しい側面もあります。

ただ、私自身MSLとして働いていた日々はとても充実しており、MSL業務によって様々な経験値やスキルがアップしたことを実感しています。

MSLになったばかりの方やMSLを目指している方が、MSLを様々な側面から理解することでMSLとして働くイメージを具体化でき、MSLの仕事を通じてどんな価値が得られるのか、どんな価値を生み出せるのか思い描けるようになっていただけたら嬉しいなと考えています。
そしてより充実したMSLキャリアを歩んでいただけたらと願い、この発信をします。
これから就職活動を始める方や転職・キャリアチェンジをお考えの方などにも、本記事がMSLをキャリアの選択肢の一つとして検討する際のご参考になれば嬉しいです。
 
前置きが長くなりましたが、ここから本題に入ります。

Medical Affairs(MA)とは?

Medical Affairs(MA)についてご存知でしょうか?MAは製薬会社や医療用機器会社、バイオベンチャー等のヘルスケア企業における一部門で、患者さんに最適な医療を届けることを目的とし、アンメットニーズの特定やエビデンス構築、情報発信や提供、医学専門家との医学・科学的な交流等を担っています。

具体的には、医療従事者や患者さん、厚労省(PMDA)、学会等とのコミュニケーションや製品・疾患に関する新しいエビデンスの創出、疾患啓発等の活動を通じて、医療の質の向上や患者さんのQOLの向上に貢献します。
営業活動から独立した別の組織としてMAを存在させることで、自社の製品の販売を目的とした活動ではなく、あくまで医療と患者さんのために活動する組織と位置付けているのですね。 

MAの歴史と存在意義

日本の企業においてMAが一般的に活動するようになってきたのは最近のことという印象ですが、欧米での歴史の方が長く既にMA部門が多くの企業に設置されています。その歴史は、2000年代よりOIG (the U.S. Department of Health and Human Services Office of Inspire General) やFDA (the Food and Drug Administration) による研究・教育費の助成と製品プロモーション活動との分離に対する規制強化や活動ガイダンスの発出等の活動が行われたことに始まっています。ただし、1960年代から既にMAの前身となる組織・機能が米国企業においては存在していたそうです。

国内でも、本社を欧米におく外資系企業が影響を受け、やはり2000年代にMA部門を設立した企業があったようなのですが、内資系企業も含め多くの企業がMA部門を設立するようになってきたのは2010年代に入ってからでした。

昨今の医薬品は作用メカニズムも複雑化しており、さらに希少疾患やがん領域に必要とされる個別化医療といった診断が重要な疾患に対する治療選択肢も増えてきており、医療従事者はより科学的・医学的に適切な情報に基づいて診断・治療を行うことが求められています。その状況に対し、エビデンスを基にした信頼性の高い情報を中立的に提供できるのがMA、ということになります。
さらに、日本特有の背景として、国内の製薬企業が関与した臨床研究での不正や医療従事者への不適切な情報提供等が問題となっており、製薬会社がいかに真に患者さんにとってのベネフィットとなる活動が出来るかという点で信頼性を欠く事例が生じてきたことも事実です。
営業活動を目的としないMAであるからこそ出来る医学的・科学的な価値の高い活動に、高いニーズがあるのです。

Medical Science Liaison (MSL)とは?

ではMSL(Medical Science Liaison)についてはご存知でしょうか?本記事をお読みになっている方であれば、ある程度は目に、あるいは耳にされたことがあることでしょう。

MSLはMA部門に所属し(企業によっては臨床開発部門やマーケティング部門に属する場合もあります)、医師や研究者などの医学専門家(Key Opinion Leader:KOL)と直接対面して、企業と医療現場との架け橋として両者の円滑なコミュニケーションを促進します。
KOLとのコミュニケーションと一口に言っても、実際は非常に多くの種類のコミュニケーションを担っており、主に下記のような役割を果たしています。

<MSLがコミュニケーションを通じて果たす役割>

  1. 自社製品や疾患に対する最新情報や科学的根拠を提供することで、製品の適正使用や製品価値の至適化等を推進する

  2. 医学的・科学的なディスカッションを通じアンメットメディカルニーズを特定し、その解決に寄与する

  3. 収集したアンメットメディカルニーズや情報、KOLの意見等からInsightを得て、社内関連部署に伝える

  4. 専門的知識や経験をもって臨床研究の企画・運営をサポートする

  5. Publicationプロジェクトや学会等の共済イベントセミナー等の企画において、著者や発表者となるKOLと企業をつなぐ窓口となる

  6. 要請に応じ、医師(研究者)主導研究に対し科学的なサポートを行う

  7. 要請に応じ、未承認薬に関してや市販後製品の適応外使用に関する問い合わせに対し情報提供を行う

コミュニケーションを担う立場であるからこそ、MSLは上記以外にも多岐にわたる場面でまさにリエゾンとしての重要な役目を果たします。その役目を果たすうえでは、常に医学的・科学的な知識や情報、専門性が必要とされるのです。
そして、MSLの役割の重要なポイントとしては、MSLは営業(MR)とは異なり自社製品の販売を促進するような活動は行わない、という点です。MRとは異なる立場で活動することによって、MSLは患者さんのためにその活動に中立性を保つ必要があります。

MSLのより具体的な仕事内容については、今後詳しくご紹介して参りますね。

MSLの歴史

MAの歴史については前述しましたが、MSLが世界で最初に米国で登場したのはMAよりもさらに前の1967年と言われており、今から50年以上も前のことになります。MA部門が設置されるようになったのが2000年代ですから、30年くらいはMSLが単独の役割・機能として活動していたことになります。

一方、日本においては、2010年代にMAが輸入されたのと同時にMSLという役割も作られ始めたと考えて良いでしょう。

まとめ

MSLはMA部門に所属し、主にKOLや医療従事者とのコミュニケーションを担う重要な職種です。MRと異なり営業活動を目的とせず、中立的な立場で医学的・科学的な観点から活動を行うことで、医療の質の向上や患者さんのベネフィットに貢献します。

MSLが実際に業務として行う活動は多岐にわたりますが、医療従事者に対してのコミュニケーションのみならず、企業と医療現場との懸け橋としても活躍します。
 
今後、MSLについて様々な観点から解説していきますので、乞うご期待ください!
 

いかがでしたでしょうか?
ご興味を持っていただけた方は、ぜひフォローをお願いします。
また、本記事の内容に対してのご感想やご意見もいただきたいです!
実際にMSLとして仕事されている方の生の声は大変貴重です^^
 
お読みいただき、ありがとうございました!


いいなと思ったら応援しよう!