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新型コロナと向き合う介護職の方へ

新型コロナウイルス感染症(COVID-19、以下新型コロナ)の感染が始まって半年以上が経ちました。いまだワクチンや治療薬がないなか、日々感染者が増え続けています。10月1日には東京発着の“Go To トラベル”が解禁になりましたが、まだ心の警戒を解いてはいけない状況です。

経済活動を戻すためとはいえ、インフルエンザの流行期にも差し掛かり、新型コロナとの同時流行のリスクも考えられ、まだまだ心配の種は尽きません。

一般の方々は旅行に行くことができるようになりましたが、医療従事者の方、介護の仕事をしている方、その他エッセンシャルワーカーの方々は、旅行などが制限されていると聞きます。

このようななかで、患者の治療にあたっている医療従事者のみなさまを尊敬し、深く感謝いたします。

介護事業が止まると困る要介護者がいる家庭

我が家には脳性麻痺による身体と知的の重度重複障害児がいます。緊急事態宣言で世の中の動きが止まってしまったら、家族だけで息子を支えていけるのか、不安しかありませんでした。

緊急事態宣言により福祉作業所が閉所して、利用者が通所できないところもあったようですが、息子が通う福祉工房は、自粛要請はあったものの、家庭だけで介護ができない人の通所を許してくださいました。

息子はマスクをすると感情のコントロールができなくなってしまうためマスクをしていません。そんな息子に対し、職員のみなさまは感染を恐れず、体の接触を含む介護をしてくださいました。日々の通勤も感染の恐怖と危険を抱えながらだったと思います。

居宅内サービスをしてくださっている事業所のヘルパーさんたちも、時間数を減らすことなく来てくださいました。みなさん、複数の介護利用者のお宅に行かれるので、感染者、濃厚接触者を出すわけにはいかないと、細心の注意を払って感染予防をされています。しかし、人の家に入ることは大変な緊張や苦労があったと思います。

介護職の方に知識と情報を

介護の現場では、体に直接触れたり、咳の飛沫を正面から受けてしまうことが日常茶飯事です。しかし、介護にあたるヘルパーさんは、医療従事者ではないので、感染症に関する専門知識が十分とはいえません。

介護者の家に入り、感染させない・しないようにするには、さまざまな知識が必要ですが、コロナ禍においては、行政がその指導をする余裕はないようです。ヘルパーさんを迎える側としても、整理された正しい情報があると良いと思っていました。

そんな折、9月12日に放送されたNHK BS1スペシャル「在宅クライシス~医療・介護最前線の闘い~」という番組の内容に感銘を受けました。

番組では、全国の医師、看護師、介護士が垣根を越えて立ち上げた“在宅医療・介護現場支援プロジェクト”が紹介されました。プロジェクトメンバーはオンラインでミーティングをし、介護現場での問題点や疑問点について話し合いを重ねます。

現場ではどのような動きで介護したらいいか、防護服を脱ぎ着する際の注意点、介護の現場で飛沫はどのように飛散するかの可視化実験した結果報告など話題はさまざま。介護者からの質問に医師と看護師が回答するなど、立場が違う者同士の意見交換のシーンもありました。

在宅医療は基本的に高齢者対象のものですが、介護の現場では、高齢者も重度障害者も同じことをしています。実際、我が家に来てくださっている事業所さんの中には、高齢者と障害者両方の介護をしているところもあります。それもあり、このプロジェクトの取り組みはすごいと思うと同時に、このようなプロジェクトがあるのに、放送されるまで知らなかったことに自身の怠慢を感じました。

今、ライターの私ができること

情報発信を担う者としてできること。それは、介護職のみなさまがより安心して介護の仕事が続けられるよう、得た情報をわかりやすく、実践しやすい形でお伝えしていくことだと考えています。また、行政に対して、介護職の方々を対象に、感染症専門医の先生にセミナーを開いてもらうなどの働きかけをする予定です。

今回の新型コロナのような未知の感染症は、今後も発生、流行する可能性があります。こうした感染症に対して、重度重複障害を持つ方は持病がある場合も多いので、非常にリスクが高いです。

しかし、そのリスクに対して、十分に周知されている、また環境が整っているとは言えません。重度重複障害を持つ方の人数は多くなく少数意見となってしまうことや、さらに、家族は長年にわたる介護疲れのため、声をあげる力が残っていない人がほとんどです。

声を上げられる人間が、その声を拾い届け、行政・介護職の方との連携につなげていけたら……と思います。

改めて、介護職のみなさまには平時でも緊急時でも変わりなく対応してくださり、深く感謝するとともに敬意を表します。

■著者プロフィール 
小佐野 由利子(おさの ゆりこ)
大学卒業後、出版社に勤務し心理学の学術書などを担当。出産後、地元の情報紙(東京中日新聞系)、女性誌出版社の編集部、編集プロダクションと渡り歩き、取材、原稿執筆、写真撮影、美容誌・ムック・児童書の編集業など、10年以上に渡りライター・編集業界でキャリアを積む。
その後、出産した子に障害があり、フリーの編集者として1年仕事をした後、ブランク期間を置いて、駆け出しのメディカルライターとして活動再開。主に障害者の医療・介護・福祉について書いてまいります。


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