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新型コロナと向き合う医療従事者の心のケアを

新型コロナウイルス感染症(CIVID-19)の感染拡大が始まって半年以上が過ぎました。これまで、最前線で感染した患者さんに向き合ってこられた医師、看護師のみなさまに心より感謝いたします。

医療従事者への差別や偏見が続くという悲しい状況

ワクチンも治療薬もないなか、感染終息の見通しが立たず、インフルエンザが流行する季節に入りました。さらに、感染者数が200人を超える日もある東京が10月1日からGo Toトラベルキャンペーンの対象に加わり、医療従事者のみなさまはさらに不安を感じていることと思います。

そのような状況下、飲食店の来店拒否や、賃貸住宅の家主から退去するよう言われたりするなど、いまだに医療従事者に対する差別や偏見が続いているというニュースがありました。このような悲しいことは世界中で起こっており、 赤十字国際委員会によると、医療従事者や患者に対する暴力行為や嫌がらせ、誹謗中傷が600件を超えているとのことです。

人をターゲットとした事件のうち、医療従事者に向けてのものが実に67%を占めているという事実も、人の弱さを露呈した恥ずべきことで、あってはならないことです。

また、新型コロナ患者を受け入れている病院で、一般病棟に入院していた患者さんから感染した看護師は、回復して仕事復帰した後に同僚からの偏見や差別に悩まされたといいます。

闘病中に死の恐怖と向き合い、役に立たなければならない自分が感染してしまったことへの申し訳なさで心が弱っていたところに、後遺症の苦しみや差別・偏見があり、完全に心が折れて復職を断念したそうです。新型コロナに感染した医療従事者の職場復帰が難しいことは、人材確保の面でも大きな問題です。

厚労省をはじめ、各自治体など多くの機関が医療従事者への差別をやめるようアナウンスしています。ある小学校では、授業で「差別をしないようにするためにはどうしたらいいか」を話し合ったところもあります。しかし、こういうことをしなくてはならないこと自体、情けないことだと思います。


こころのケアを大切にしてください

不眠不休で患者さんを診るということは、身体的に相当な負担がかかると思います。それに加えて、未知のウイルスと無防備で闘っていることへの不安感、そして先行きのわからない不透明感、病院外での差別……。つらい思いをされていることでしょう。精神的なダメージは大きいと思います。自分は大丈夫と過信せず、心の負担だけでも、軽くしていただきたいと思います。

日本予防理学療法学会では、「COVID-19に関する情報(心の健康予防)4」で、医療者向けの情報Q&Aを紹介しています。特に「Question 2. 最前線で働く医療従事者のこころの健康状態の保ち方についてわかることがあれば教えてください」では、複数の答えが用意されています。すでにご存知かもしれませんが、少しでも参考になれば……と思います。
http://jspt.japanpt.or.jp/prevention/covid_info/mental_health4.html

また、心の相談ができるサイトもあります。
Covid 19関連ピアサポート特設室 http://heals.jpn.org/pg2642003.html


メディカルライターとしてできること

筆者は10年以上編集者として働いていましたが、出産に伴う仕事のブランク後、メディカルライターを志し、勉強を始めました。コロナ禍で医療従事者の方々のご苦労を知ることになり、筆者ができることは何だろうと考えました。

赤十字国際委員会で保健部門を統括する医師のエスペランサ・マルチネス氏は、「医療従事者やコロナ患者に対する暴力行為などの根本的な理由には、ウイルス感染症への基礎知識の欠如がある。コロナの感染原因や拡大の仕方、予防について正しい情報を発信することが重要だ」と述べています。


日本赤十字社では2020年3月26日に「新型コロナウイルスの3つの顔を知ろう!~負のスパイラルを断ち切るために~」というスライドを紹介し、その中で「ウイルスがもたらす第三の感染症は嫌悪・偏見・差別です」として、それを防ぐために「確かな情報を拡めましょう」と言っています。

新型コロナに関して、たくさんの人がインターネットやテレビなどで情報を流しています。それを見聞きする人たちが惑わされないよう、書き手はより情報を精査していかなくてはならないとあらためて身が引き締まる思いです。

そして、書いて発信するだけでなく、必要があれば、状況を動かせる立場にある行政担当者の耳に入る、目に触れる努力もしていかなくてはならないと強く感じます。新型コロナと向き合っているすべての医療従事者のみなさまの「真の助け」になれるよう、努力を続けていきたいと思います。

■著者プロフィール 
小佐野 由利子(おさの ゆりこ)
大学卒業後、出版社に勤務し心理学の学術書などを担当。出産後、地元の情報紙(東京中日新聞系)、女性誌出版社の編集部、編集プロダクションと渡り歩き、取材、原稿執筆、写真撮影、美容誌・ムック・児童書の編集業など、10年以上に渡りライター・編集業界でキャリアを積む。
その後、出産した子に障害があり、フリーの編集者として1年仕事をした後、ブランク期間を置いて、駆け出しのメディカルライターとして活動再開。主に障害者の医療・介護・福祉について書いてまいります。


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