11月12日(日)メディア日記

 テレビ朝日は12日、検証番組「テレビ朝日 旧ジャニーズ問題検証」を午前10時から1時間にわたって放送した。進行は同局の大下容子と小木逸平両アナが担当。民放キー局のジャニーズ問題の検証番組は、日本テレビが10月4 日、TBSは7日、フジテレビは21日、テレビ東京は26日にそれぞれ放送した。テレビ朝日だけは11月12日と大きく出遅れた。同局は103人にヒアリングし、その結果を報道、編成・制作の各局長が顔出しで説明した後、スタジオでフリップにまとめた。とくに目新しい内容はなかったが、各局にこれだけ遅れて放送した割には具体性がなく、期待を裏切った。証言の中には、「7人が忖度はあったと証言した」、「ジャニーズタレントのキャスティングや出演交渉は歴史的に編成や制作の幹部が動くことが多く、そのため忖度するという局内の空気が醸成された」との本音も聞かれた。

 ジャニー喜多川とテレビ朝日幹部との蜜月状態を示す驚きの映像が9月にネットに流れたが、これは25年前の話。しかし、それ以降も同局とジャニーズの関係は脈々と続いていたのは事実だ。同番組では、何故か個々の番組名などは一切明かさなかったが、長く続いた問題の生音楽番組はジャニーズの温床といわれた。証言の中には「テレビ朝日は後発局だから」などの言い訳を入れていたのにはあきれた。テレビ朝日にはもっと本質的な要素が欠けているのではないか。梨元勝の番組拒否問題はじめジャニーズ問題の真相究明はいくつもあったはずだ。

 同番組には、テレビ朝日の社長や常務、局長らが次々に登場して正論を述べたが、具合性はほとんどなかった。やはりすべてを知悉し、これまで最高権力を振るってきた早河洋会長が証言してこそ検証番組の意味があった。

 この中で、テレビ朝日Hの監査取締役の池田克彦が登場したのには意外だった。池田は元警視総監。民放局の役員に警察官僚出身がいるとは知らなかった。ただ、池田はこんなことも言っていた。「放送局内部で中立性、不介入が守られているかは反省すべき部分だ。報道の中立性を保つために一種の報道の治外法権みたいなものをつくって中立性を確保すべきだ」。彼が言う「中立性」とか「治外法権」はいったい何だろう。「テレビとは何か」「ジャーナリズムとは何か」・・・この人はまったくわかっていないのではないか。

 今回の検証番組でのヒアリングは確かに現役の多数社員から聴取したのだろうが、ジャニーズと直接かかわった70代、80代のOBから話を聞いたのだろうか。同番組の中で、旧テレ朝構内のリハーサル室でジャニー喜多川氏から性被害を受けたとの報道について、「事実関係については、既に建物が壊されており、関係スタッフの多くが亡くなっているため、確認が困難だった」とした。リハーサル室の被害は事実とすれば35~40年前の話だ。短絡的に「関係スタッフの多くが亡くなっている」で済まされてはかなわない。検証番組で「確認できなかった」と表記するのは「検証した」とは到底いえない。

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