見出し画像

5月11日(土)メディア日記

 NHKは11日夜、ETV特集「汚名~沖縄密約事件 ある家族の50年~」を放送した。元毎日新聞記者の西山太吉は、1972年、沖縄返還時に日米に密約があったことを迫ったが、国の密約問題が男女間のスキャンダルにすり替えられ、一挙にメディアは敗北した。その後を綴った妻啓子の日記が見つかり、番組では夫婦の葛藤を描くとともに沖縄返還の日米密約の原点を探った。見応えがある力作だった。
 ディレクターは2002年に西山を30年ぶりにテレビに引っ張りだした土江真樹子。日米間で沖縄密約があったことを米公文書館で突き止めた琉球大の我部政明は「この番組は取材者が顔や声を画面に出したことで、ドキュメンタリーが客観的だという神話を打ち砕いてくれた」と評価した。西山夫妻と土江との絆の深さがなかったらこの番組の深化はなかった。
 また「密約~外務省機密漏洩事件~」の著者、93歳の澤地久枝もたびたび登場し、啓子の苦悩と西山のジャーナリスト魂を語った。 琉球新報は、「西山事件」、「外務省機密漏洩事件」などとは報道せず、一貫して「沖縄密約事件」と呼称している。このきっかけを作った同紙の松元剛は、生前の西山から「沖縄の記者は単なる国と対峙する記者ではなく、ジャーナリストは権力と対峙することを忘れるなと何度も言われた」と語った。辺野古新基地建設をのぞむ場で語る松元剛は、西山の強い意思を感じる説得力あるものだった。
 西山啓子の日記は、達筆で文章も素晴らしい。日記の中で一度は「死」という文字もあったが、夫、西山太吉に対しては、最後まで新聞記者としての信念を理解していたことが行間ににじみ出ていた。熱い一文に感涙した。しかし、気になったことがひとつあった。日記の中に赤線が引かれた部分が映像にあったことだ。日記に赤線を引くなど死者への冒涜と思い、問い合わせたところ、担当ディレクターが書いたものではなかった。啓子が書いたものでもなかった。今は大型画面で番組を見る視聴者が多く非常に目立つ。この赤線は何とかならなかったのか。

 毎日新聞によると、イスラエルのエルダン国連大使は10日、国連総会の壇上でパレスチナの加盟を支持する決議案に反対する意思を示すため、小型のシュレッダーを使って国連憲章を細断、「恥を知れ」と言い放った。国連の基本文書である国連憲章は、「国際の平和と安全を維持する」など設立の理念や加盟国の権利などを定めている。国連のハク副報道官は同日、加盟国大使による個別の言動にはコメントしないとしつつ、「今も昔も加盟国による芝居がかったプレゼンテーションはあった」と言及。 国連総会は同日、パレスチナの国連加盟を支持し、安全保障理事会に再検討を求める決議案を採択した。日本を含む143カ国が賛成し、反対は米国やイスラエルなど9カ国にとどまった。 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?