12月6日(水)メディア日記

 集団的自衛権の行使を認めた安全保障関連法は憲法違反だとして福島県内の戦争経験者や家族らが国家賠償を求めた訴訟の判決が5日、仙台高裁であった。小林久起裁判長は「憲法9条に明白に違反とまでは言えない」と述べ、初めて憲法判断を示した。その上で、原告側の請求を棄却した一審判決を支持し、控訴を棄却した。東京新聞だけは6日の社説で、「矛盾と詭弁の判決だ」と厳しく批判した。
 当「メディア日記」がスタートしたのは安倍政権が発足して5カ月目の2014年春だった。今は亡きジャーナリストの大先輩の原寿雄が「安倍政権になってからメディアの動きが怪しい。誰か記録しておいた方がいい」という助言がきっかけとなった。安倍首相は2014年7月1日夕の臨時閣議で「集団的自衛権の行使」を認めた。「行使」を禁じてきたこれまでの歴代政府方針を180度転換し、翌2015年夏には安保関連法が成立した。この違法な解釈改憲について、当時は全国各地で反対運動が起き、憲法学者もほとんどが「違憲だ」と批判した。メディアはその頃から容認と反対にはっきり分裂し、今に至っている。安倍政権の最大の負の遺産は閣議決定しただけで「集団的自衛権の行使」を認めたことだ。メディアは安倍政治のアベノミクスはじめ、「負の遺産」をもっと再検証すべきだ。
 6日朝刊の仙台高裁の判決報道をみると、朝日は2社会面3段、毎日は3社会面3段、産経2社会面2段。読売は1行も報じず。テレビはNHKが5日夜の「ニュースセンター9」で詳細に報じたが、民放ニュースはどこも見当たらなかった。メディアは「違憲だ」とあれほど反対した安全保障関連法じゃないか。同法の初の憲法判断なのに時の経過とともにあの当時の熱意はどこに行ってしまったのか。

 首相官邸記者クラブ「内閣記者会」加盟の報道各社は6日、パーティー券問題について説明を拒否している松野博一官房長官に記者会見できちんと説明するよう求める要望書を渡した。政府の立場で行う会見では難しい場合、別に会見を開くことも要請した。しかし、松野長官は7日事実上のゼロ回答で応じた。東京新聞の望月衣塑子記者によると、「内閣記者会はここにきて、記者が一斉に手をあげて松野長官に迫るなど、本来の記者会見に戻ってきた」とネットで感想を述べた。

 テレビ東京は6日の「ニュースWBS」の中で、「木原誠二・前官房副長官の妻の元・夫が2006年に死亡したことについて、遺族側が、元夫を司法解剖した医師と11月24日に初めて直接面会し、自殺と断定できないとする見解を確認したことがわかった」と報じた。この事件について、テレビ東京は10月、遺族が刑事告訴を提出したときも報じているが、事件経過を詳細に放送したのは、地上波テレビではテレ東が初めて。同局の独走状態が続いている。
 同ニュースによると、 テレビ東京が独自に入手した遺族側の「上申書」は、12月5日付で、警視庁大崎署と東京地検に送付された。そこには、元夫の安田種雄(当時28歳)を解剖した医師による「死体検案書」が添付されていて、直接の死因を「失血及び右血胸」とし、死因の種類を「自殺」ではなく、「その他及び不詳の外因」と結論付けている。

安田種雄の死体検案書

 安田種雄の死因をめぐっては、露木康浩警察庁長官が今年7月、「自殺と考えて矛盾はない」「事件性は認められない」などと個別事件にコメントするという異例の事態に発展した。遺族は今回の上申書の中で、「(医師の)死体検案書には、他殺であることと整合的な事実が記載されており、自殺と考えるべき医学上の理由は何ら記載されていない」とし、警視庁と検察庁に対し、積極的な捜査と真相解明を改めて求めている。
 テレビ東京が放送しても翌7日の一般紙はどこも追っかけなかった。露木警察庁長官が自殺を匂わし「事件性なし」と言ったことがひっくり返ったのだ。警視庁記者クラブはなぜフォローしないのか。テレ東のニュースを観た百田直樹は7日の自身のチャンネルで「この事件はワイドショーでやればすごい視聴率取れるのになぜ他局はやらないのだ。そんなに忖度することがあるのか」と前置きし、「この事件の疑問は、一つは17年前の死因は何なのか。他殺としたら犯人は誰か。二つ目は5年前に再捜査があったが、あっという間に解散してしまった。その後ろに何があったのか」だと指摘した。

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