RTX 2000シリーズを(買ってもいないのに)振り返る: Nvidiaにとって必要だった失敗
最初に
高性能ゲーミングPCに必要不可欠なグラフィックボード(GPU)ですが、市場のシェアは現状Nvidia一強となっています。
現在の主力商品はRTX 4000番台ですが、早ければ今年の年末には5000番台が発売されると噂されています。基本的に2年周期で新しいシリーズが発売されますが、TiやSuper等複雑な符号が付いたマイナーチェンジ版も適宜リリースされています。
今回は自分が購入を見送ったRTX 2000番台を振り返りたいと思います。
GTX→RTXへ
2018年、Nvidiaは今までGPUに使用してきたGTXの呼称を廃止し、RTXと名前を変えました。GPUを販売開始してから10年以上使い続けてきたGの頭文字を変更したのは、ゲームのグラフィックにおける新技術レイトレーシング(Ray Tracing)の推進のためだと言われています。
当時の最新技術であるレイトレーシングは負担が大きいうえに対応するゲームが少なく、RTX 2000番台では実用出来る範囲が非常に限られていました。
レイトレーシングと同時にRTXが対応を発表したのがDLSS。AIによる高解像度処理で、低負荷かつ高解像度な映像出力が可能となりました。レイトレーシングとの併用も可能ですが、こちらも初期の対応タイトル数は限られていました。
これらの新機能の代償か、基本性能の伸びは前世代と比べて控えめという評価に落ち着きました。特に前世代GTX1000と次世代RTX3000の性能の伸びが良く、そちらと比べて見劣りしてしまうスペックとなりました。
Radeonの台頭と広がりすぎたラインナップ
2019年にはライバル会社のAMDが競合GPUであるRadeon RX5000シリーズを発売し、近い性能の製品をより安い価格で提供しました。
これに対抗するべくNvidiaは、既存のRTX2000シリーズのマイナーチェンジである2000Superを打ち出します。Super以前(無印)の価格は維持しつつ性能を微増させることで、Radeonの優位を崩します。
しかし、無印とSuperの販売される時期が重なりあったり、無印の小売価格が下がったこと等によって製品のラインナップが広がってしまい、ユーザーは自分に合ったグレードのGPUを選ぶのが困難になりました。
RTX 3000番台による市場の席巻
2020年には次世代のRTX 3000シリーズが発売され、驚異的な基本スペックの向上とDLSS2.0の搭載によりNvidiaは市場の人気を取り戻しました。
発売当時はコロナウイルスの影響によるステイホーム特需や、サイバーパンク2077によるPCパーツ買替需要が高まっており、更に仮想通貨のマイニングにも使用できるとの情報から世界中で品薄が広がりました。
最もこの時期は上記の影響からゲーム関連のハードウェアはどれも品切れ続出。次世代機のPS5やXBOX Series X/S等も店で普通に置かれるまで2年以上かかった未曾有の時期でした。
なぜRTXは全盛を迎えているのか
そして現在ではRTX4000シリーズが現行で販売されています。性能もさることながら消費電力効率の良さが特徴となっています。
2000シリーズで思うような進化を見せられなかったRTXが何故現在こんなにも人気なのか、それはNvidiaがRTXへの名称変更を機に、ソフトウェア開発に力を入れ始めたからだと考えます。
レイトレーシングとDLSSは2018年には未知の技術でしたが、2024年現在は多くのゲームがいずれかの機能をサポートしています。レイトレーシングは未だ主流とは言えませんが、DLSSは着実に進化を進めており、現在はAIが自動でフレームを生成して画面のカクつきを無くす技術も採用されています。
Radeonにもレイトレーシングや高解像度技術はありますが、どちらもNvidiaと比べて見劣りしますし、何よりイメージが湧かない。2018年から導入と開発を進めたRTXが長い時間をかけて消費者にイメージを浸透させてきた戦略勝ちとも考えられます。
現在はゲームだけでなく生成AIやデータセンターでの活用等にも利用されるGPUですが、そちらに関してもNvidiaがリードしています。というよりもそちらの方が売上や利益も高く、ゲーム用のGPUは片手間の売上になっているとの意見も一部で見られます。
最後に
このままNvidiaが一人勝ちを進めてしまうと市場で競争が起こらず、価格も高止まりしてしまうという懸念もあります。
IntelもGPU開発に乗り出しましたがそちらは低価格、中性能をターゲットとした売り出し方のようです。また、新製品にはドライバや古いアプリケーションとの相性問題が存在する可能性が拭えないため、初めての購入や買替には向かないと個人的には考えます
RadeonにはRX5000時代のような高性能、低価格商品を打ち出すと同時に、ソフトウェアの改良によってRTXとの差を詰めていって欲しいものです。
自分がGTA VIに向けてPCパーツを新調するのがいつになるか予想はつきませんが、その頃までには価格競争が起きて、円安も収まって、転売屋も足を洗っていて、お得に買えるようになることを祈るばかりです。
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