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【特集・前職候補者の「今期の業績」を見てみよう!】官邸と政務で汗をかく:多忙すぎて「個性」が見えない!?―宮城3区・西村明宏候補

投票には、選挙運動での信条や政見・政策や人物の経歴を踏まえた「未来の選択」の要素とともに「過去の業績評価」という側面もあります。
今期、衆議院48期に宮城県の前職衆議院議員はどんな活動をしていたか。役職などの目に見えるだけの経歴だけではなく、それがどんな内容を持つのか、国会での活動や政党での活動の実際や実態も考慮しながら、政策だけにとどまらない、その政治家の個性も含めた政治家全体としての活動を、公的な情報に基づきながら振り返ろうとするものです。

今期の各候補者の業績や活動を振り返るこの企画【リンク先は記事一覧】。4人目は、県南の宮城3区から出馬している、西村明宏氏です。

おことわり

・文責・著作権は、筆者(池亨)に属します。また評者の所属先にも一切関係しません。
・資料協力:海辺の図書館 庄子隆弘さん
・本批評は、特定の候補者への支持投票を呼びかけるものではありません。

宮城県第3区 情報

宮城3区には他に、立憲民主党 大野園子候補、無所属 浅田晃司候補が立候補しています。大野候補について知りたい方は、ぜひ動画インタビューを覧ください。なお浅田候補はインタビュー取材をお断りされています。

なお西村明宏候補は、メディアージが複数回申入れを行った独自インタビュー、ボートマッチについて、一切返答をいただくことができませんでした。

政務担当官房副長官として多忙な今期

 宮城3区の西村明宏氏。今期は第4次安倍内閣(再改造)で官房副長官(政務担当)となり、多忙な日々を過ごしました。政府・国会・政党(自民党)の役務を数々こなし、評者もすべてを把握することが難しいほどです。
その今期の政府での働きについてはご自身のホームページに詳しいので、そちらをご覧いただくことにしましょう。

 もともとの出自としては「党人派」と言ってもいいかもしれません。中選挙区時代の旧宮城1区で当選を重ねた三塚博元運輸大臣の政策秘書を務め、後継指名を受けて、仙南地域を主とした小選挙区制移行後の宮城3区の議席を守ってきました。
 宮城6区の小野寺氏や、宮城5区の伊藤氏と比べると、政策秘書の経歴ながら、政策面での論客というよりも「組織人」としての顔が目立つと言えるでしょうか。ここも「党人」たる所以かもしれません。
 その組織人としての「実績」として何を見るべきか。なかなか具体的なデータは参照しづらいのですが、前期(第48期:2017-2021年任期)の組織人としてのひとつの実績を西村氏が垣間見せる瞬間がありました。そこから論じていくことにしましょう。

地道な「票田のトラクター」

 皆さんご記憶でしょうか、2019年の参議院議員選挙宮城県選挙区。ここでは、自民党の愛知治郎氏と立憲民主党の石垣のりこ氏の一騎打ち。仙台市区の得票を多く得て、石垣氏が接戦を制しました。そのなかで、大変な接戦ではあったのですが、地域の各自治体でどちらの票が上回ったのかを見てみると興味深い現象が見て取れるのです。

西村図

 図を御覧ください。西村氏の地盤である第3区のうち、名取・岩沼・大河原という「都市部」では石垣票が上回ったものの、他自治体に比べて僅差の接戦、3区の残りの地域ではほとんど愛知票が石垣票を上回っています。比例区の自民党の得票率も、宮城3区では総じて高い傾向がみられました。
 これは県北の宮城5・6各区と比較してみるとかなりはっきりしてきます。もちろん各自治体による事情の違いはあるとはいえ、かなり明瞭な傾向があるようにみえます。
 このときの参議院選挙でマスメディアの記者からは、旧中選挙区時代に同じ選挙区内で自民党候補者同士が得票数を激しく争った「三愛(三塚-愛知の)戦争の後遺症」を指摘する声が聞かれました。しかしその指摘は、時代錯誤さもさることながら、こうしたデータをあまり見据えていないように思われます。なぜなら西村氏は、自らの地盤において(政策秘書を務めた三塚氏のライバルであった愛知家出身の候補者であっても)、宮城県連会長の立場をもって票集めに一定の成果を出しているという評価が可能なのです。

 ちなみにこの参議院議院選挙で、改選議席をあわせ自民党は宮城県から議席を失いました(櫻井充参議院議員が国民民主党を離党(認められず除籍処分となる)し、自民系院内会派入りする前の話です)。自民党宮城県連の責任問題になりかねない事態で、会長としてのそれを問われなかったことは、こうした「実績」も考慮されたからかもしれません。
 これだけでなく、町村議員選挙で、決して自分の味方にならないような議員のところへも当選祝いの挨拶に事務所員が回っているのを評者は直で目にしたこともあります。そうした細やかで地道な地盤培養活動も「党人」「組織人」としての相貌ゆえかもしれません。

本来の政策は国土交通分野、復興が落ちついたあとの国土のグランドデザインは?

 1区の土井亨氏と並んで、もとの師匠故三塚博氏が「運輸族」であったところから、国土交通分野が得意分野で、2017年には(土井氏の前に)衆議院の国土交通委員長も務めました。
 地元の道路などの問題についてはこまめにフォローしているようです。ここでは地元に利益を誘導する「代議士」の顔がみてとれます。
 政府の役務におり、自民党の政策と官邸をつなぐ一種の調整役としての役割が長かったこともあって、いわば自民党政権の顔としての役割がWebサイトでも強調されるのはやむを得ないのでしょうが、裏を返せばご自身の声、政策や構想が具体的、立体的になかなかみてとれません。国会での活動も委員長や副官房長官としての政府の立場の説明に終始したところがあります(予算委員会では、「桜を見る会問題」で、野党議員の追及に答えきれずに答弁者を交代する場面もありました)。

 ホームページの活動の記録も震災直後の2012年で止まっています。ブログやSNSも活用されていません。早稲田大学大学院で学び、政治学修士号もお持ちの西村氏。ご多忙なのは承知ですが、何らかの形でご自身の政見、「分析」をぜひ披瀝していただきたいものです。
 とくに地元の道路をどこに引くか(引いたか)だけではなく、鉄道・航空等々のインフラのあり方――なかでも師匠が手掛けた「国鉄改革」のあと――に出てきた様々な諸課題、JR北海道の経営問題やローカル交通のあり方もふくめた「総合交通体系」のありかたや復興10年後の東北のあり方についても雄弁にぜひ語っていただきたいものです。

データ

西村明宏 候補【宮城県第3区】自由民主党公認(当選回数5回)
個人WebサイトYoutube

衆議院 第48期 2017(平成29)年10月22日〜2021年10月19日
国会会期 第195回国会〜第204回国会
質問・出席回数は、政治学者菅原琢氏作成のWebサイトによる。

国会役職 国土交通委員会 委員長
政府役職 官房副長官

委員や理事として所属した委員会 
 国土交通委員会(委員長)
 経済産業委員会(委員長)
 東日本大震災復興特別委員会(委員長代理)
 
ほか出席した委員会
 予算委員会
内閣委員会
 厚生労働委員会
 法務委員会

注意:政権与野党どちらに所属しているかの違い、政府や国会の役職によって、議員としての出席や発言回数は異なりますので、あくまでこれらの数値は参考に留めてください。与党議員は質問主意書を出さないのが慣行となっています。野党のほうが発言回数・質問主意書数が多くなります。

政党役職 自民党経済産業部会長
     自民党宮城県連合会会長
     自民党政務調査会副会長兼事務局長
     同、選挙対策委員会筆頭副委員長

本会議・委員会出席すべて政府役職、国会役職(委員長)としての出席(回数カウントせず)

2021年衆院選(宮城県選挙区)特集について

2021年衆院選(宮城県選挙区)に関する情報発信のまとめ
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*池亨(いけ・とおる) 1977年、岩手県一関市生まれ。埼玉県で育つ。宇都宮大学教育学部社会専修(法学・政治学分野)、東北大学大学院情報科学研究科博士前期課程(政治情報学)を経て、東北大学大学院法学研究科博士後期課程満期退学(政治学史・現代英国政治思想専攻)。修士(情報科学)。現在、㈱日本微生物研究所勤務。これまでに、宮城県市町村研修所講師(非常勤)、東北工業大学特別講師ほか。著書に『新幹線で知る日本』(天夢人刊)。

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