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【特集・前職候補者の「今期の業績」を見てみよう!】多彩な「本書く派」の読み取りにくい素顔 その「コア」は何か?―宮城2区・秋葉賢也候補

投票には、選挙運動での信条や政見・政策や人物の経歴を踏まえた「未来の選択」の要素とともに「過去の業績評価」という側面もあります。
今期、衆議院48期に宮城県の前職衆議院議員はどんな活動をしていたか。役職などの目に見えるだけの経歴だけではなく、それがどんな内容を持つのか、国会での活動や政党での活動の実際や実態も考慮しながら、政策だけにとどまらない、その政治家の個性も含めた政治家全体としての活動を、公的な情報に基づきながら振り返ろうとするものです。

今期の各候補者の業績や活動を振り返るこの企画【リンク先は記事一覧】。5人目は、秋葉賢也氏です。

おことわり

・文責・著作権は、筆者(池亨)に属します。また評者の所属先にも一切関係しません。
・資料協力:海辺の図書館 庄子隆弘さん
・本批評は、特定の候補者への支持投票を呼びかけるものではありません。

宮城県第2区 情報

宮城2区には他に、立憲民主党公認 鎌田さゆり候補NHK党公認 林マリアゆき候補が立候補しています。お二人の名前をクリックしていただくと、それぞれの動画インタビューをご覧いただくことができますので、ぜひ参考にしてください。

秋葉賢也候補は、メディアージが申し入れを行った独自インタビューについて返答をいただいておりません。ボートマッチのアンケートには回答いただきました。

いろいろな「現場」や分野に顔を出す、してその正体は……?

 元・宮城県議会議員から出発し、2003年の補選を契機に国会議員へ。自由民主党の政治家のキャリアとして県議会議員出身者はしばしば見られます。そのなかで秋葉氏は「議員立法」(地方議会では条例の提案ですが)を売りにしてきました。『地方議会における議員立法』(2001年)はじめ、著書も多く、宮城県内の衆議院議員としては出版点数が多い「本書く派」といえるでしょう。その内容もまた多彩な分野で、『広報DX』(共編著)『世界の刑務所を訪ねて』(共著)『厚生労働省改造論』(単著)『健康寿命――60のヒント』『「ジブリワールド」構想』(安倍元首相昭恵夫人の帯付きです。秋葉氏は宮城県へのジブリワールド建設を謳っています。ただし制作の中心にいる宮崎駿氏との思想的相性は必ずしもよくなさそうです)、また松下政経塾出身であることもあって『松下幸之助「最後の言葉」』等々。

 著書が多いことは悪いことではないのですが、自己啓発書や一見政治とは関係のなさそうな「健康本」も含まれていて、この政治家はいったい何を目指しているのだろうかと思わせるラインナップではあります。
 それでも、たしかに「持続せる」関心というものを見出すことができるでしょう。その辺りに的を絞って論じてみます。

「議員立法」への関心――その内実やいかに

 在仙民放の夕方のニュース(8月3日金曜日放映TBC東北放送「Nスタみやぎ」)で、秋葉氏は「今期も議員立法に取り組んだ」旨をコメントされていました。地方議員時代に取り組んだテーマの延長にこの「自負」があることが見て取れます。
 しかしながら、国会における議員立法の実態は、なかなか一般有権者につかみがたいものです。というのも衆議院のWebサイトに各国会で成立した議員立法の一覧があるにはあるのですが、提出者の「代表者」名しか見ることができないのです。

 衆議院での議員立法には大きく分けて2つのタイプがあります。(1)超党派による、主として議員連盟で取り組まれて各委員会の委員長が提出するもの(委員会発議)、(2)一部の議員が提案者となって提出するもの。です。このうち(2)のタイプは政権につくことのない野党が非常によく使う手段です(議員立法は、提出者となる議員の政党の機関決定がないと提出されない慣習になっています)。
 そうすると、「議員立法に取り組んだ」ということは与党と野党ではおよそ位置づけが変わってきますし、またそこでの貢献度のなかみも個々の法案へのアプローチのしかたによって意味付けが変わってしまいます(また地方議会と違って、国は議院内閣制ですから、与党議員としての法案への関与は、必ずしも議員立法だけである必要はなく、内閣提出法案の与党内での事前審査でも関与が可能です)。

 秋葉氏の事務所に問い合わせたところ、事務所発行の「サポータータイムズ」(月1回)に秋葉氏が「主導した主な議員立法」として、以下の4つの紹介がある旨をご教示いただきました。

(1)「チケット転売禁止法」[197国会 衆法 文部科学委員長提出](秋葉氏がライブエンターテイメント推進議連を創設し事務局長に就任して取りまとめたものと説明)
(2)「成育基本法」[197国会 衆法 厚生労働委員長提出](厚労副大臣のときに議論)
(3)「動物愛護法改正」[198国会 衆法 環境委員長提出](秋葉氏が「環境委員長のときに成立」と説明)
(4)「重要土地規制法」[204国会 内閣提出] (秋葉氏が自民党外交部会長だったときからのとりくみと説明)。

(4)は内閣提出法案なので、「議員立法」というよりは、自民党の部会で議論をリードしたという理解をすべきなのかもしれません。なるほど関わっていらっしゃるのかなとは思えるような書き方なのですが、どういう議論への関わり方なのかが、支持者周りにはともかく一般有権者には伝わりづらいと思えます。実質的にどういうポイントや役割において議論をリードしたのかについてももう少し触れてほしいのです。「〇〇のとき」では単なるタイミングにすぎないようにも受け取れてしまいます。関わった議員立法の本数がそれなりに他の議員よりも多いのかどうかもわかりません(多ければよいというものでもないのですが)。贅沢な要求ですが、せっかくですから博士課程への在籍経験も生かして、ご自身のご経験も織り交ぜつつ『国会における議員立法』という著書を是非書いていただきたいものです。

こまめな政策意識と全体像をどう有権者に伝えるか

 このほかに注目すべき点としては、『世界の刑務所を訪ねて』(共著)にもありますが、刑事更生政策への取り組みです。秋葉氏は県議会議員時代から保護司を務めており、国会の保護司議員連盟・更生保護を考える議員連盟の事務局長も務めているとのこと。このあたりは「ライフワーク」としてのテーマ性を感じさせます。その結果何が変わってどう改善されたのかのなかみが端的にわかるような情報提示が望まれます。
 情報発信に熱心であり、広報活動も盛んなのですが、具体的な情報が少なく、今ひとつ政治家像を結びにくいのはむしろその多彩さ(多才さ?)ゆえかもしれません。
 今回(2021年第49回)の選挙戦で応援演説に立った村井県知事は、秋葉氏の決起集会で「あれから4年。毎日、毎日、秋葉さんの何を褒めようか、ずーっと考えたんですが、やっぱり何も思い浮かばなかった」(河北新報オンライン10/30(土) 6:00配信)と言ったと報じられました。「村井知事が前回の終盤でも使ったネタで、200人超の聴衆を沸かせた。」と続きます。もちろん冗句なのでしょうが、秋葉氏に議員としての自分の「コア」があるのか、またその「コア」をうまく伝えてきれているのかが周りからは問われるところに来ているのかもしれません。

 情報発信は多彩で多様でも、それぞれの情報が形式的で大味か薄くなってしまい、個別の課題同士のつながりにおいて今ひとつ像を結びません。主張や提案がどう立体的に位置づけられるのか、体系的な信条や政策観が今ひとつ伝わりくい。演説や日常の活動の紹介でも、そこに何らかの「論」が含まれていると思わせる「広報」をぜひ心がけていただきたいと思います。

データ

秋葉賢也 候補【宮城県第2区】自由民主党公認(当選回数6回)
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衆議院 第48期 2017(平成29)年10月22日〜2021年10月19日
国会会期 第195回国会〜第204回国会
質問・出席回数は、政治学者菅原琢氏作成のWebサイトによる。

国会役職 環境委員会委員長
政府役職 内閣総理大臣補佐官(少子高齢化・ふるさとづくり担当)
理事・委員として所属した委員会 
     決算行政監視委員会
ほか出席した委員会
     厚生労働委員会(42回 発言なし)
     予算委員会(24回 発言なし)
 憲法審査会(15回 発言なし)
質問主意書 0本

注意:政権与野党どちらに所属しているかの違い、政府や国会の役職によって、議員としての出席や発言回数は異なりますので、あくまでこれらの数値は参考に留めてください。与党議員は質問主意書を出さないのが慣行となっています。野党のほうが発言回数・質問主意書数が多くなります。

政党役職 再犯防止推進特命委員会 副委員長
     交通安全対策特別委員会 副委員長

2021年衆院選(宮城県選挙区)特集について

2021年衆院選(宮城県選挙区)に関する情報発信のまとめ
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*池亨(いけ・とおる) 1977年、岩手県一関市生まれ。埼玉県で育つ。宇都宮大学教育学部社会専修(法学・政治学分野)、東北大学大学院情報科学研究科博士前期課程(政治情報学)を経て、東北大学大学院法学研究科博士後期課程満期退学(政治学史・現代英国政治思想専攻)。修士(情報科学)。現在、㈱日本微生物研究所勤務。これまでに、宮城県市町村研修所講師(非常勤)、東北工業大学特別講師ほか。著書に『新幹線で知る日本』(天夢人刊)。

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