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【特集・前職候補者の「今期の業績」を見てみよう!】国土交通分野一筋、強面にも見え表現に朴訥で不器用さも―宮城1区・土井亨候補

投票には、選挙運動での信条や政見・政策や人物の経歴を踏まえた「未来の選択」の要素とともに「過去の業績評価」という側面もあります。
今期、衆議院48期に宮城県の前職衆議院議員はどんな活動をしていたか。役職などの目に見えるだけの経歴だけではなく、それがどんな内容を持つのか、国会での活動や政党での活動の実際や実態も考慮しながら、政策だけにとどまらない、その政治家の個性も含めた政治家全体としての活動を、公的な情報に基づきながら振り返ろうとするものです。

今期の各候補者の業績や活動を振り返るこの企画【リンク先は記事一覧】。6人目は、土井亨氏です。

おことわり

・文責・著作権は、筆者(池亨)に属します。また評者の所属先にも一切関係しません。
・資料協力:海辺の図書館 庄子隆弘さん
・本批評は、特定の候補者への支持投票を呼びかけるものではありません。

宮城県第1区 情報

宮城1区には他に、同じく前職で立憲民主党公認の岡本章子候補日本維新の会 春藤沙弥香候補、無所属 大草芳江候補が立候補しています。岡本候補、春藤候補は名前をクリックしていただくと、それぞれの動画インタビューをご覧いただくことができますので、ぜひ参考にしてください(大草候補は多忙でインタビューが受けられない旨連絡をいただいています)。
そして岡本候補についても記事を公開しています。

土井亨候補は、メディアージが申し入れを行った独自インタビューについて取材に応じていただいております。こちらもぜひご覧ください。またボートマッチのアンケートにも回答いただいております。

国土交通畑一筋、右派的な主張が目立つ

 秋葉氏と同じ県議会議員出身の土井亨氏。「国土交通畑一本槍」のカラーが強く、今期は国会で国土交通委員会委員長として議事運営にもっぱら勤しみました。
 そこでWebサイトに掲げられた業績一覧は……ずらり地元の土木事業ばかり。県議会議員ならともかく、国会議員として(地元の役に立つ予算のついた事業を紹介するのはわるくないとしても)これでは国家レベルの政策にいったいどう貢献したのがわかりません。せっかくTwitterアカウントもお持ちなのですが、政策というよりは、地元のどこどこの式典や会合に参加しましたという活動報告ばかり。地元有権者へのアピールを狙ってのことなのでしょうが、新しい支持者を獲得する上ではもうすこし、「紋切り型」の自民党の公約アピールを繰り返すだけではなく、時宜を得たかたちで国会自民党内部での動向や他の政策を自分のことばで捉え直して語ってもよいのではないでしょうか。

 もともと書き物が非常に少ない議員さんでもあります。5区の安住さんのように若い頃からテレビ出演に恵まれている人でも単著があったりしますが(『安住淳の国会日記:二〇〇一年〜二〇〇五年』)、調べられる限りでは、土井氏の著作は『震災学』(東北学院大学発行)に寄せている防潮堤問題をめぐる論文ひとつのみです。
 このように表現が乏しく、一本調子なところに、憲法や「夫婦別姓」「歴史問題」のようなテーマの右派的な主張がしばしばでてくるため、一見強面に見えます。

朴訥さのなかに異議申し立ての気概も

 とはいえ、もともと土井氏が名を馳せたのは宮城県連の幹事長時代。元森首相への批判ともいえるテレビCM――「今度という今度は堪忍袋の緒が切れたわよ!…こんなんだったら私が総理大臣やった方がよっぽどマシよ!」というセリフを主婦役にいわせた企画で話題をかっさらったことでした。
 その後、自民党本部からの抗議をうけ、「私が〜」以降に放送禁止音をかぶせたことで、このCMはまた話題を読んだわけですが、この禁止音部分について「あなたならどう表現しますか?ご意見をお寄せ下さい」と視聴者に問いかける字幕を入れました。宮城県連CMには、女子高生の携帯電話に自民党からメールが届き、「皆さんの声を聞かせて下さい」とのナレーションが入る若者向けCMも。このとき宮城県連執行部は「自民党の謙虚な姿勢を示す、少しでも効果的なCMにしないと」と、語ったとされます。
 普段の土井氏は、表現にあまり長けず朴訥で不器用な感じが否めないのですが、過去のこうしたエピソードから、土井氏のこうした反骨心や「聞く」姿勢も垣間見えます。

 そうした宣伝を先導した土井氏のこうした姿勢が、昨今のインターネット上に書かれたものからはあまり垣間見えませんでした。強い力を持った党本部には抗えないということだったのかもしれませんが、ときに強権的にみえた今期の自民党の第4時安倍〜菅政権の政権運営について、こうした「謙虚さ」を見せて良かったのかもしれません。

問いかけや傾聴を豊富にして――どう有権者に「語りかけるか」

 実は弊団体のインタビューではこうした「聞く姿勢」、丁寧に問答しようとする姿勢が垣間見られる瞬間があります。インターネット上の記述や演説での、一本調子な素朴さとは違った印象を受けます。
 また表面上の公約でアピールする国土交通政策の追求には、行き過ぎた競争によって疲弊した地方を下支えするという信念が透けてみえます。インタビューでそうした論点にもふれていたのですから、ご自身でそうした点をふだんのSNS からでも発信すれば大分印象も違います。

 それにしても、自民党の財政金融部会長を務めるなど、国土交通分野以外の活動もされているのですから、なかなか土井氏本人の「声」を聞くことがすくない有権者に対して、ご自身の考えや、有権者の疑問に答えるというかたちでもう少し議員活動や政策についての多様な表現(手段)を工夫されてはいかがでしょうか。あのCMをつくる力能があるのですから。もし、既存支持層以外の、なかでも若者に訴求したいと思えばです。ぜひ「初心」を思い出していただきたいと思います。

データ

土井亨 候補【宮城県第1区】自由民主党公認(当選回数4回)
個人WebサイトTwitterFacebookInstagramYoutube

衆議院 第48期 2017(平成29)年10月22日〜2021年10月19日
国会会期 第195回国会〜第204回国会
質問・出席回数は、政治学者菅原琢氏作成のWebサイトによる。

国会役職 国土交通委員会 委員長
政府役職 復興副大臣
委員や理事として所属した委員会 
国土交通委員会
ほか出席した委員会
東日本大震災復興特別委員会(11回出席 政府役職としての発言あり)
予算委員会(5回出席 発言なし)
財政金融委員会(22回出席 発言なし)
原子力問題特別調査委員会(9回 発言なし)
法務委員会(1回出席 発言なし)

質問主意書 0本

注意:政権与野党どちらに所属しているかの違い、政府や国会の役職によって、議員としての出席や発言回数は異なりますので、あくまでこれらの数値は参考に留めてください。与党議員は質問主意書を出さないのが慣行となっています。野党のほうが発言回数・質問主意書数が多くなります。

政党役職 自民党財務金融部会長

2021年衆院選(宮城県選挙区)特集について

2021年衆院選(宮城県選挙区)に関する情報発信のまとめ
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*池亨(いけ・とおる) 1977年、岩手県一関市生まれ。埼玉県で育つ。宇都宮大学教育学部社会専修(法学・政治学分野)、東北大学大学院情報科学研究科博士前期課程(政治情報学)を経て、東北大学大学院法学研究科博士後期課程満期退学(政治学史・現代英国政治思想専攻)。修士(情報科学)。現在、㈱日本微生物研究所勤務。これまでに、宮城県市町村研修所講師(非常勤)、東北工業大学特別講師ほか。著書に『新幹線で知る日本』(天夢人刊)。

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