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メダカに学んだ下水とエネルギーの問題

フィルターの面白さ

世の中には様々な種類の水槽フィルターがある.それぞれのフィルターに特徴と使用する理由があることに感心せずにはいられない.自宅の水槽にあった濾過システムを考え,構築するのはそれだけでも楽しいし,その結果水槽の水が澄んでいると気持ちが良いものだ.世の中には水槽の濾過システムを自作する方までいるから恐れ入る.そこまでではなくても,濾材やバクテリアの導入をあれこれと考えるのも楽しい.

しかしよく考えてみると水槽の濾過とは,人間に置き換えれば下水処理である.そう考えると下水に俄然興味がわいてきた.小さな水槽でもお金をかけて機材を準備し,電力を使用して濾過しているのだ.人間ではどうであろうか.ちょっと調べてみた.

下水処理に使用される膨大なエネルギー

小さい頃,母方の祖母の家は汲み取り式であった.トイレの中を覗き込んで,その暗さに怖くなったことを覚えている.父方の祖父の家は浄化槽方式だから,定期的な浄化槽のメンテナンスが必要だ.我が家はそれほど都会では無いが下水道が整備されているから,それに慣れた生活を長く送っていると,いつの間にか下水の処理について気になることがなくなってくるのだ.

実は,下水の処理には毎年途方もないエネルギーが費やされている.日本で1年間に処理される下水が実に約146億立方メートル,下水処理のための電力が約70億kWh,年間約1100億円の電気代が費やされているという.

 国交省資料  https://www.npobin.net/research/data/176thTsuchiya.pdf

まず,下水は処理場まで真っ直ぐに重力だけで流れていくわけでは無い.ゆるい傾斜で汚水を自然に流すだけでは,すぐに土管は詰まってしまうだろう.ポンプ場を経由して下水を持ち上げなければ,下水の輸送が行えない.つまり下水を処理場まで運ぶだけでエネルギーが必要であり,電力が失われれば下水は街のあちらこちらに溢れてしまう.

下水処理場でも膨大なエネルギーが必要だ.バクテリアによる分解を効果的に行うためには,大量の酸素が必要とされる.これこそ水槽に似ているが,大量の空気を下水に通す処理(曝気)を行い,ようやく下水は浄化される.汚泥に曝気を行うためにはもちろん大量のエネルギーが必要だ.

さらには,最終的に生じる汚泥などは焼却処理されたりする.なんてこった.ここでもエネルギーが必要だ.

見えない大切なシステム

メダカのフンを掃除するのは楽しくても,人間の生み出す大量の屎尿の処置のこととなると想像を絶する.自分が年間に排出する排泄物を,公共の迷惑にならないように自分で処理するなんてことは,ちょっと簡単には行えない.

飛鳥時代,藤原京が遷都した理由は,下水処理がうまくいかず都全体が臭くなってしまったから,と聞いたことがある.おそらく現代の下水処理がうまくいかなくなれば,我々もあっという間に藤原京の人々の気分を味わえることだろう.

見えないところで高度なシステムを構築し,管理されている方々がいることで我々は快適に衛生的な生活することができているのだ.そして,さらには大量のエネルギーを消費させてもらっているのである.

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