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ケンカするメダカたち・その2

ケンカの背景

はじめに,あくまで本記事は狭いキューブ型水槽(AQUA-U)の観察での一時期の考察であることを断っておきたい.

前記事で述べたように,我が家でのメダカのたたかい行動と餌の確保には,明らかな関連があるように思われた.狭い水槽の中では自然にメダカの間で順位,序列が形成される.強いメダカは餌が投入されると,できるだけ餌を確保するために他のメダカを追いやろうとする.水面近くでケンカ行動を行うと一部の餌が沈んでしまい,自身がありつける餌は結果的には少なくなっているのだが,可愛いメダカの脳では理解不可能であろう.水面からこぼれ落ちる餌の量が増えすぎると水を汚すため,水槽管理の面からも好ましくない.

メダカが他のメダカをどのように識別しているのかはわからないが,たたかい行動は明らかに特定のペアで強く起こる.似たサイズのメダカが対象であっても,別個体には全く反応しない.一旦形成されたメダカ 間の順位は一方的な強弱関係であり,一旦少なくとも数日隔離しなければリセットされることはないようだ.

弱いメダカに注意して観察する

序列形成は必然的に起こる現象であり,問題はそれ自体ではない.追いやられたメダカが著しくストレスを感じたり,餌にありつけないことで体調を崩してしまうことが大きな問題となる.

繰り返して攻撃を受けたメダカが怯えてしまうと,ヒレをたたみ水草の影などで動きが鈍くなってくる.尾ビレが十分開かずに並行に近い形になってきたら危険だ.病気にかかる可能性が高くなるため,早めに隔離して餌が十分に取れる環境にしたほうが良いだろう.体力が落ちてゆくと一旦隔離しても,十分に餌をとろうとしなくなってくる.こうなると残念ながら死んでしまう可能性が増えるし,薬浴,塩水浴やグリーンウォーターなどで焦らずゆっくり体調回復を待つしかなくなってしまう.

そのようになる前に,まずは弱いメダカが十分に餌を食べているかを観察することが大切だ.幸いなことに,順位形成されていても攻撃的な行動が一日中見られるわけではないようであった.順位の低いメダカであっても,十分に栄養が得られていれば,別に強いメダカに食べられてしまうわけでもないし,一日の大半はマイペースに水槽を泳いでいる.しかし餌が十分に食べられなければ,メダカ間の強さの差は拡大する一方になってしまう.

一蘭システム

強いメダカによるたたかい行動は,どうやら餌を与えた直後から活発化し,30分程度経過するまでに顕著に見られた.水面から餌を与えるため,見えている範囲の水面をできるだけ自分が支配しようとする.水面からおおよそ4cm程度までの範囲を巡回するように泳ぎつづけ,その間,特に水面近くにいる別のメダカが視野に入ると追い回す.餌を与えて時間が経つと,水面に餌がないことを理解するのか,徐々に攻撃的な行動は減ってくる.十分に時間が経過すると,近くに弱いメダカがいても追い回す行動は見られなかった.

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そこで,餌を与える際にブースのように水槽上部を仕切る隔壁を作成した.名付けて「一蘭システム」である(*).ベランダのビオトープをつくる際に余ったヒノキ板を用いて,水面から約6cm程度を仕切ることにした.そのままだと板は浮いてしまうので,ステンレス の板を貼り付けて重りとした.

各メダカには空いているブースで別のメダカが見えないように,目の前の餌に集中して味わっていただく.弱いメダカであっても,一人でゆっくりと食事していただける空間を確保する.まさにお一人様時代の設備である.少なくとも自分のブースに餌がある間は,メダカ はそこを離れようとしない.

ブースの下部からの移動は自由であるから別のブースにメダカが追いやられたら,そのブースに餌を入れてやる.小さいメダカは順位が低いことが多いので,水槽のガラスとの間に狭い隙間を作って,メダカが別のブースに逃げやすいようにしてやると良い.

各メダカがそれぞれどれくらい餌を食べているか把握しやすいのも一蘭システムのメリットである.デメリットとしては,水槽の鑑賞性を損ねる.そのため一日2,3度の食事以外の時,餌を与えてから20-30分後には撤去する,

ビオトープと異なり,横見が主となる室内水槽での飼育では,水槽にたくさん隠れるところを設置することにも限界がある.一蘭システムは少々手間ではあるが,水槽のメダカ全てが元気な方がずっと楽しんで鑑賞できる.

飼育密度とその他の工夫

飼育密度はメダカ1匹あたり水1リットル,というのが基本であるようだ.しかし少なくとも初心者の私が小さなキューブ型水槽で行うのは難しいと判断した.現在,キューブ型水槽であるAQUA-Uには3匹のメダカ.のこりのメダカ はベランダに作成したビオトープに移ってもらった.水深が浅く,水面の面積が広いビオトープはメダカの自然な生息環境に近いようで,より伸び伸びと生活しているように思われる.

あとは,水槽レイアウトの工夫である.浅いところが好きなメダカだから,キューブ型水槽とはいえ,水面近いところにも水草や流木を配置するなど,視覚を遮る工夫が好ましいだろう.キューブ型水槽の難しいところだと思った.

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しばらく経過して

一蘭システムを開始して1週間.メダカのたたかい行動が明らかに減ってきた.なぜかは分からない.元々餌を自由に確保できないことにストレスを覚えていた順位の高いメダカが,確実に餌を取れることを新たに学習したために,追い回すことを止めたのかもしれない.せっかく作成したしきり板であるが,使わなくても良い日がくればそれに越したことはない.

あと,これもほとんど使用しなかったのが,水底に沈めるタイプの隠れ家だ.水面近くの仕切りだけでなく,簡単に設置・撤去できる素焼きの筒も買ってきたのだが,出番なしである.メダカの行動は日々変化するから,もしかしたらいつか使う日がくるのかもしれない.

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(*)一蘭
言わずと知れた豚骨ラーメン専門店.味も美味しいのだが,カウンター席が全てブース状に区切られており(対応していない店舗もあり),目の前のラーメンを誰にも気遣いなく味わうことができる.我が家の近くには残念ながら店舗は無い.職業柄,他県への移動が現在もまだ制限されているのだが,このコロナ禍が落ち着けばまたあの美味しいスープを味わいにいきたいものである.

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