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~パキスタンアップデート~ アメリカ批判、軍との対立、デフォルト危機。最悪期からの脱出
※今までのパキスタン情勢につきましては、過去の投稿↓をご覧ください
総選挙の結果
去る2/8、パキスタンの総選挙が行われました。
総議席数は266、三大勢力が議席を争っていましたが、以下のような結果となりました。
パキスタン正義運動(PTI):93
パキスタン人民党(PPP):54
パキスタン・イスラム教徒連盟シャリフ派(PML-N):75
どの政党も単独で過半数を取るには至らず、PPPとPML-Nが連立政権を組むことになり、勝利が確定的となっています。
首相の座にはPML-Nのシャバズ・シャリフ氏を据えることで合意しているとのことです。
![](https://assets.st-note.com/img/1708246238827-g05PpncJ8t.png?width=800)
出典:Aljazeera
選挙結果に関する報道:
2010年代からの政治(ダイジェスト)
2013年から2018年まで、PML-Nが政権を担っており、ナワズ・シャリフ氏が首相の座についていました。
シャリフ氏は2017年のパナマ文書流出が発端となり、汚職疑惑で首相の座を降りることとなりました。
その後行われた2018年総選挙においては、342議席中142議席を獲得し、PTIが圧倒的勝利を収めることとなります。
同党は元クリケット選手であるるイムラン・カーン氏が代表を務めていますが、氏は民衆、とりわけ都市部の若者からの指示が高かったそうです。
(後ほど解説しますが、このPTI政権時代が同国の政治・外交関係において大きな意味合いを持つこととなります。)
しかしながら、軍との関係悪化が発端となり、ここに野党の政治的な動きも加わり、2022年カーン氏は内閣不信任を受け失脚することとなります。
その後は、再びPML-Nが政権を担い、ナワズ・シャリフ氏の弟にあたるシャバズ・シャリフ氏(今回の首相候補)が首相の座につきました。
そして、今回の総選挙に向けて議会はいったん解散となり、暫定政権による国の運営が行われています。
アメリカ批判、軍との対立、デフォルト危機。最悪期を脱したパキスタン
上記のような政権の入れ替わりを踏まえた上で、最近の政治的・経済的流れを考えるキーポイントとなるのが、PTIの存在です。
同国の運営は、歴史的に軍、もしくはPML-NとPPPが担ってきました。
しかし、2018年の総選挙においてはPTIという全く新しい政党が大勝しています。
このPTI、同国において強大な権力を持つ軍や、アメリカに敵対する立場を取ることで、民衆からの支持を得る。ポピュリスト的な側面が強い政党のようです。
しかしながら、パキスタンにおいて軍に敵対する立場をとることはご法度とも言える行為でした。
1940年代のインドからの独立当初から、軍の影響力が大きいという背景があるためです。インドとの間に抱えるカシミール問題やアフガ二スタンとの関係から、安全保障上の役割が大きいのでしょう。
その軍と対立してしまったことで、国内の政治的な安定が崩れていくことになります。
時を同じくして最悪期を迎えたのが、対米関係です。
元々、2010年代のパキスタンにおいては、対米関係が悪化の一途をたどっていました。
その契機となったのが、2011年のビンラディン殺害事件にあったと言われています。
米軍の特殊部隊が現地でビンラ ディンを殺害した際、パキスタン側には一切の事前通告がなされなかったことか ら、関係悪化の要因となりました。
加えて、同年にNATO軍によるパキスタン検問所の誤爆事件が起き、西側諸国との溝が深まります。
このような状況下で出てきた反米・反軍のPTI。貧しい民衆からの支持を得るため、仮想敵として米国や軍を据えた戦略を取っていたと思われます。
所謂ポピュリスト政権の誕生です。
軍との関係悪化で、政治的な安定性が損なわれるとともに、代表のカーン氏がアメリカ批判を続けたため、西側諸国との関係も悪化の一途となりました。
そんな中、2022年はパキスタンにとって苦難の年となります。
国土の3分の1が一時冠水する豪雨被害により、主力産業の農業が壊滅的打撃を受ける中、世界的なインフレを受けてスタグフレーションとなり、外貨が不足。デフォルト待ったなしの状況となったのです。
同時期に、軍と野党の動きによりPTIが政権の座を追われ、PML-Nへの政権交代が起きることとなります。
そこから、アメリカとの 関係も改善の兆しが見え始め、閣僚の往来が再開しました。
貧しい国がデフォルトを回避するためには、先進国=IMFからの支援が必要不可欠です。生き残るために方向転換せざるを得なかったのでしょう。
その甲斐あってか、同国はIMFからの支援を取り付けることに成功します。
最後に株価の話を少し。
投資家が最も同国に冷たい視線を送っていたのがPTI政権時代。そして最悪の状況となったのが、2022年のインフレ・洪水被害の時だと思います。
以下はその際の同国ドル建てETF(=通貨下落分含む)のチャートです。
![](https://assets.st-note.com/img/1708246924342-K25eqInMnO.png)
70%の下落
■総括
パキスタンでは、2011年のビンラディン殺害事件を機に対米関係が悪化の一途をたどっていました。
そんな中、2018年に反米・反軍を掲げるPTIが選挙に圧勝し、アメリカとの関係が最悪期に突入します。
2022年、世界的なインフレと洪水被害により、同国は壊滅的な打撃を受け、デフォルトが目前に迫る状況となります。
期を同じくして政権交代が起き、新政権はデフォルト回避のためにアメリカに最接近する外交を展開、これが功を奏しIMFからの支援を取り付けることに成功しました。
次回は今後のパキスタン経済、主にIMFからの支援継続の道筋と、経済発展に至るまでを論じていきたいと思います。
■参考資料
NIRA総合研究開発機構のレポート:
今までの政治の経緯、外交関係について分かりやすく解説されています。
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