塔2024年4月号 好きな短歌
「塔」2024年4月号より好きな短歌を引いてみました。いつも楽しく読んでいます。
病院の夫想いつつよく伸びる雑煮の餅を三つ食べたり/数又みはる
入院中の夫を思う一連。愛の深さと静かさに泣いてしまいそうになる。自分の日々を全うするというのも愛のかたちなのかも、と思う。
ようやくに連絡つきて義姉はいま散らばる仏具を拾うていたり/林芳子
故郷が震災の被害に遭ったことがわかる。「散らばる仏具」がリアル。
われは今焼香台に向き合へる佳き人のごと昏き目をして/新谷休呆
友人の焼香台と読んだ。自分を見る目が冷静でおもしろい。友人が主体を「佳き人」にしてくれたのかもしれない。
アナウンサーの「あーりがとさーん」に抑揚なしアホの坂田の訃報読むとき/山田恵子
ニュースの映像がありありと思い浮かぶ。アナウンサーも案外同じことを思っているかもしれない。
パワハラを告げることなく辞めてゆく小雨に濡れて派遣のひとは/春野あおい
小雨で傘を差さないように、辞める職場のパワハラのことを言わない。そういうひとなのか、派遣という立場がそうさせるのか。
官邸に防災服らが並びをり本気になつてくれなつてくれ/山下好美
「ポーズとして」防災服を着ていることに作者は気づいている。下の句は怒りのようで、祈りのようでもある。
増水のタイムラプスを見ていると時々誰かが川を見に来る/藤田エイミ
増水の川は危なく、知人が見に行こうとするなら止めたいところ。「タイムラプス」でなんだかコミカルな景になる。
評を書くのは勇気がいりますね。いつも短歌を読み、伝えてくださる方に改めて感謝したいです。
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