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レールロード、それは永遠のテーマ

 留学のために、日本に上陸したのは11年前だった。よく梅田駅を利用してたので、阪急線の始発のフォームには電車が行き来するのを待っている人、カメラを構えていた人をよく見かけていた。後々、その人たちが「鉄ちゃん」、いわゆる鉄道愛好者のことがわかった。ちょうどその時「ビッグバンセオリー」が人気で、その劇中のハイパーエリート主人公も鉄道愛好者だったので、そのときから、「鉄道」というテーマがギークの好みの一つであることを心に残ったわけだった。
 特に鉄道にいうほどの魅力を感じずに数年経ったけれども、大学でアナログゲームのサークルに入って、ボードゲームにハマり始めたころには、「チケットトゥーライド」に出会った。線路コマを舗装していく、自分の「領地」を拡大していく爽快感は、いまだに忘れられない。ボードゲームの世界に入って数年後、鉄道テーマで最も有名なシリーズ「18xxシリーズ」に出会って、鉄道というテーマが段々と身体に染み付き、いつの間にか、私も蒸気を吐く、大陸横断までできる巨大マシーンに魅せられてしまった。

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 そんなわけで、今年で遊んだ3つの「鉄道」テーマのゲームを紹介したい。私の中では「鉄道ゲーム」と言っていいのはやはり「18xxシリーズ」だけだった。でも残念ながら、去年の新作「18Chesapeake」すら遊べなかった私には「18xxシリーズ」をここでレビューする権利がなかった。

鉄道テーマのワーカープレイスメント
Ultimate Railroad

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 新作といっても、すでに名が知られている「Russian Railroad」のBig box版だった。
 最近のBig box商法には気に食わないが、「Russian Railroad」くらいの絶版ゲームが再版できるのは本当にうれしかった。その上に、ドイツ、アメリカ鉄道にアジア鉄道を追加し、(ホイッスルマークの)新しい拡張も登場した。誠意があふれる新作だった。さすがハンス社!

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 鉄道テーマでワーカープレイスメントが「Russian Railroad」を越える作品はなかった。ワープレによって、鉄道の舗設、工業トラックの進歩など、さまざまなストラテジーを取れて遊びごたえがある。しかも、機関車と工場が同一タイルの裏表で統一することによって、違う戦略をとったプレイヤーの間でもきちんと「衝突」を作った。決して一人で黙々ワープレするだけの単調なゲームではない。なにより驚くのが点数の変化だった。4人プレイで6ラウンドのゲームなのに、最初に1、2ラウンドにほんの十数点しか取れなくて、はじめてプレイしたときに「この300点トークンっているの?」と疑ったが、4ラウンドくらいからのテンスのインフレが半端なく、「Russian Railroad」の基本ゲームだけでも、400点以上が取れて、爽快感があふれた。
 ここまでは「Russian Railroad」に触れたことのないプレイヤーの説明をしたが、やはり新拡張(「Asia Railroad」)が出て、このゲームはさらに進化した。

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 この二枚が新しいプレイヤーボード(上)と一番基本のプレイヤーボード(下)の比較である。誰でもわかるように、鉄道舗設のボーナスがかなりの数で増えて、その上にいろんなバリエーションがあるわけだ。追加のアドバンテージトークンなど細かい調整はいろいろあるけれども、個人的に直感でいうと鉄道舗設メインのプレイでも工業トラックを進めることができて、だいぶ強化されたようだった。
 もう一つのゲームの流れを大きく変えたのは「共通の工業ボード」だった。

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 旧版では、ロシア、ドイツ、アメリカのどれも、工業トラックに対する調整はあったのが、所詮自分専用のトラックでした。それによって生じる大きな問題点があった。工業トラックの収益が工場によって大きく変わるのに、初期に工場を取り過ぎると、早い段階で線路の方のアドバンテージトークンが解禁され、ボーナスレベル9の機関車が取られてしまう。そうなると、レベル9機関車を取ったプレイヤーがロシアドイツ鉄道だと1ターンに2連続アドバンテージトークンの解禁ができ、アメリカ鉄道だと、東西線の開通ボーナスもかなり早いラウンドにとれるわけで、大きくリードをつく。層のようなバランス調整はアメリカ鉄道で株やダブル工業トラックで調整をしてみたようだったが、レベル9の機関車の争奪は激しいままで、誰も先に機関車/工場アクションをしたくなく、序盤のゲームの進行が遅かったケースが多かった。
 アジアン鉄道では、まず先頭マスにもきちんとボーナスを置くと機関車スロットを増やすことで、9レベル機関車の重要性を落とす。さらに共通の工業ボードで工場を取るたびにボーナスをもらえるようにし、機関車/工場アクションの使用を促して、ゲームのテンポがかなり速くなった。(新要素のおかげでもあるが)それにつれて、全体の点数も爆発的向上した。
 ロシアンレールロードが発売されて以来、かれこれオンライン/オフライン含めて、300戦くらいはしてきたが、頑張ってもアメリカ鉄道で最高得点が600点台だった。今回の「Ultimate Railroad」が発売前からBGAで遊ぶことができたので、30戦くらいして、平均得点が500で、最高得点が800のプレイヤーも見たことがあった。まだ試してない拡張や、各拡張の組み合わせもいろいろあるので、これはますますオフラインで遊びまくりたくなったわけだ。

2Fの変化球
「Freie Fahrt(Free Ride)」

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 2Fのおじさんは私が一番尊敬しているボドゲデザイナーといっても過言ではない。好きなようにボードゲームを作っていて、ちゃんと面白いし、デザインのセンスが一回もぶれない。何より、マーケットに左右されない強い意志が大好きだ。
 今回も鉄道テーマゲームではかなりの変化球が出されていたのでこの間プレイできた「Free Ride」を紹介したい。

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 ゲームのメインボードは無限に「TtR]を連想させてしまうのが、全く違う方向のゲームでした。
 どちらかというと、Splotter SpellenのDuck Dealerの「ピック&デリバリー」に近いコンセプト。プレイヤーは手番で自分専用の線路を舗設2コマ分(トンネルと橋は1コマ分のみ)するか、自分の列車を2マス動かせるかを選べられる。線路の舗設はとても重要ではあるが、何より、列車の移動が難しい。駅名が書いてあるカードがあり、始発駅と終点がセットとなり、そのたびを自分の列車で始発から終点まで旅をしたことで得点となる。それが何が難しいかというと、まず始発の駅に行かなければ、そのカードセットが取れないことだ。当然、複数の線路のセットを持っていれば、同時に数線路の旅を完成させることもできる。そんな時に、どのように線路をセットを取るプランニングが重要となり、ほかのプレイヤーの列車の位置を確認し、先に取られることも考えないといけない。
 さらに、人を悩ませる要素がある。「線路」のことだ。自分専用の線路は当たり前にただで旅ができるが、他人の線路はお金を支払わなければ使えない。なお、このゲームではお金の入手方法は極めてすくなくて、マップの端にある駅に旅するくらいしかなかった。となると、中心部の線路の争奪は激しくなる。でも、一度他人に使われた線路は「国有化」となり、以降誰でもただで旅できるようになるので、交通の要を取ったとはいえ、それで無尽蔵にお金が増えてくることはない。さらに、このゲームの点数計算はただ多くの線路を旅するのではなく、(例えば、ロンドン-パリー、パリー-アムステルダムを旅して)同じ駅に何回いっても、2回目以降の点数が低くなるので、なるべく全ヨーロッパを踏破するのが点数効率がいいので、辺境地にある線路も自然に利用されるようになる。
 一見軽量級のストラテジーゲームではあるが、得点の仕組み、線路舗設のジレンマ、カード取りのプランニングがあって、じっくり考えこんでしまう、味のある鉄道テーマゲームだった。遊んだ後は必ず「なるほど、これがただ旅(Free Ride)なのか…」

2021最強のストラテジーゲーム
「Imperial  Steam」

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 「Imperial  Steam」、オーストリアの鉄道歴史を振り返るワーカープレイスメントゲーム。

 工業時代が到来し、工場の生産、鉄道網の建設、何もかも労働者が必要だ。 そうでなければ、私たちの製品が、より利益の高い地域に送られて、より多くの利益を得ることができない。 鉄道がトリエステにつながった瞬間、我々の努力は報われるのだから。

 ワーカープレイスメントが非常にシンプルで、11個の簡単なアクションの中に、最大5個まで選んですればよい。なお、このゲームにおいてはすべての要素がつながっている。ゲームの最終的目標は一番お金を持つものだ。でもそのための努力がおかしいほど重い。
 お金労働者もがなければ、工場を作れないし、労働者とエンジンニアを雇えない。工場がなければ、加工材料を生産できない。加工材料と労働者を集めなければ、鉄道を舗設できない。鉄道網がなければ、自分が作った原料をほかの都市に送って売ってお金に換えることもできない。お金がなければ....
 自分の鉄道会社を立てて、経済を回すのがどれほど大変なのは、このゲームで実感できるわけだ。8ラウンドの間、やることが多すぎて、考えすぎて脳が死んでしまう。工場建設、加工材料の輸送、販売、鉄道の舗設、労働者を雇う、エンジンニアを雇う、株価を調整する、契約を履行する、何一つもほっておくことができない。行動回数が限られている中、ほとんどのことは次のラウンドの準備になってしまう。序盤に一つでもやらかしてしまったら、救済措置が一切なく、そのまま最後まで負けてしまうのも人を選ぶのだが、重ゲーはそうでなくちゃ。

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 ゲームセットアップ以外にランダム性が全くないところも、私がこのゲームが好きな点の1つ。最初から盤面を読んで、誰よりも先に未来のことをプランニングする変態ムーブは重ゲーマーにしかない理解できないだろう。
 本当はいろいろ解説したいんだが、自分でも4回しかプレイできてなくて、なにもわかってない。
 とにかく、遊べ。これこそ2021年にすべての重ゲーマーに遊んでほしいゲーム。グッドジョブ、Capstone Games。そして賞を取ってくれ!

ほかのいろいろ

 この3つのゲーム以外にも、鉄道テーマがかなりの数が今年に出た。その中では気になっていて、まだプレイできていないのは「Lisbon Tram 28」と「Shinkansen: Zero Kei」

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 この2作もアートデザインとメカニズムがとても気になっている。残念ながら時間がなくて体験できてないので、またの機会に、紹介をしたい。

 いつから、鉄道は人の夢をつなぐものになった。線路の中央に立つと、2枚の鋼のレールが地平線につながり、見えるのか、見えないのか、いささか神秘に感じる。遠方、それはどれほど遠いのか。鉄道の向こうの世界はいかに素晴らしいのか。これこそ、鉄道が与えてくれた、遠い世界への憧憬であった。

 長々と下手な日本語で長文を書いてしまった…また時間があったら、私と「18xxシリーズ」の話を、するのかな…日本では遊んでる人がすくないんだよな…

*写真はほとんどBGGから取ったもの。

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