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乗り越えるべき高い壁

こんにちは目箒です。

教育によろしくないメンズラブについて語る記事です。18話19話分。

今までの記事は「#氷点の水底」で読めます。

※教育にはよろしくありません。

小田桐の方が真面目に考えてる

 小田桐は中堂がすぐに寝入ってしまったことに驚いた。もっと何か話すものだと思っていた。2人のこれからのことだとか。
 中堂が徐々に自分に心を開いてくれつつあることを、小田桐は感じ取っていた。だから、今はただ中堂の「男(というか血の通った大人の玩具)」としてこの家に置かれているが、「同居人」としてきちんと2人で暮らしていくことを話し合うべきではないかと思っている。
 思っているのだが、小田桐から言い出すと中堂が怒り出しそうなので言い出せずにいる。中堂がどこまで考えているのかは知らない。ただ、ずっと性行為の相手だけで同居を続けるのは難しい。いつか関係の破綻が来る。
 おやすみなさい、と声を掛けたのとほぼ同時に寝入ってしまった中堂の顔をしげしげと眺める。死んだように眠っていると言うのはまさにこのことで、
「中堂さん?」
 小田桐が声を掛けても、中堂は起きない。寝息を立てている。
「うそ……」
 起こしたいわけではないが、一体どんな心境の変化でこんなことをしたのか。それは知りたかった。まじまじと顔を見る。

いつもは4話目が小田桐視点なんですけど今回はイレギュラーで3話目です。

小田桐が結論を出そうとしていることがわかります。

しかしこれ書きながら「あんな始まり方した男とよく同居続けようと思うな……」って思っちゃう

 翌朝、目覚ましで起きると、中堂はまだ寝ていた。目覚ましにも気付いていないらしい。こんなに深く寝入っていて、起きるのだろうかと心配になるくらい。
(疲れてたのかな)
 家事はほぼしてもらっている。12月に入って、1年の疲れも出ているのだろう。そう言えば、リースを見て泣いていた。神谷に捨てられてから、そろそろ1ヶ月。自覚していなかったショックや疲れが出ているのかもしれない。
 そうだと思ったから、小田桐は中堂を起こさなかった。朝食を済ませて、付箋を書いてテーブルに貼っておく。昼休みに連絡した方が良いだろうか。それか早く帰って……。
(ああ、でも……)
 今日は薬局の忘年会だ。
(大丈夫かな)
 前からカレンダーに入れていた予定だから、中堂も知っているだろう。後ろ髪を引かれる思いをしながらも、小田桐は家を出て行った。

ぐっすり寝てる中堂は可愛いと思いました。

小田桐は結構中堂の内面を洞察してるっていうか、気に掛けているって言うか。

大型犬中堂

「帰りました」
 玄関で靴を脱ぎながら声を掛ける。リビングを通って洗面所に行こうとすると、テーブルに突っ伏している中堂が見えた。
「中堂さん?」
 脳裏に「卒中」という言葉が浮かんで、小田桐は慌てて駆け寄った。しかし、中堂は寝息を立てている。テーブルには、ワインボトルとグラス、つまみを置いてあったらしい小皿が置いてあった。独り飲みをしていたらしい。
「うん……」
「びっくりした……」

この前、居眠りしている人を見て実際に「卒中!?」って思った私です。幸いにも本当にただの居眠りでしたけど……。
ちなみにこれ「寝息」って書いてるのは、「生きてる」くらいの意味です。死んでると思って駆け寄ったら生きててほっとした、くらい。

 死んでないなら良い。いや、このまま放置しても風邪を引く。小田桐はひとまず手洗いうがいをするために洗面所へ行った。中堂に口を酸っぱくして言いつけたように、30秒よく洗って、うがいをする。リビングに戻ると、中堂が眠そうな顔をして起きていた。顔は赤くない。顔にセーターの編み目の跡が付いてしまっている。そう言えば、シーツの跡が頬に付いたときに、「もう歳だからなかなか戻らなくて……」とぼやいているのを思い出した。
(そう言えば、中堂さんがお酒飲んでるところ見るの初めてかも)
 夕食の時も飲まないし、そう言えば晩酌もしていない。何だろう、このワインは。神谷の趣味だろうか……と思ってよく見るとコンビニのプライベートブランドだった。料理用だろうか。
「帰りました」
「ああ……おかえりなさい。たのしかったですか?」
「ええ……」
「わたしはさびしかったです……」

(中略)

「おだぎりくん……さびしい……」
 そう言えば、明日は休みだ。だから、本当なら中堂とベッドに入る日なのだが、今日は忘年会だから免除される、筈だった。
(いや、でもなんかすごい判断力落ちてるっぽいな……)
 これで行為に持ち込むのもアンフェアな気がする……いくら中堂の方から持ちかけた約束とは言え。
 正直、小田桐の方がその気になりかけていた。中堂さん、ベッド行きましょう。そう誘いたくなる。だから小田桐は言った。
「中堂さん、ベッド行きましょう」
 肩を掴む。
「風邪引きますよ」

相手が酔ってるのを良いことに推し倒したりはしない小田桐くんです。優しい……。私の心の中の腐女子が「ヤっちまえよぉ!」って叫んでるけどスルーします。Yes以外はYesじゃない。

(わたしはさびしかったです……)
 まさか、中堂が小田桐の不在にそんな感情を持つとは思わなくて、小田桐は動揺している。
(やっぱり、ちゃんと話し合った方が良い気がする……)
 自分たちは一体どう言う関係であるべきなのか。1ヶ月過ごして、中堂は自分をどう思っているのか。自分は中堂をどう思っているのか。関係を変えて同居生活を続けるのか、はたまたこの関係を解消してしまうべきなのか。肉体関係を持ってるだけ、と言うには人間関係ができてしまっている。
 考えることがたくさんあった。
(それにしても……)
 自分の胸に顔を埋めてすやすや眠っている中堂を見ていると、顔が緩んだ。
(可愛いな……)
 抱え直して、小田桐も目を閉じた。難しいことは、ちゃんと寝てから考えよう。

もうこの時点で起こして告白しちまえよ!!!!

この次の日は甘い時間(隠喩)を過ごします。で、次の19話に続く。

対話拒否のポーズ

散々いちゃいちゃした挙げ句。

「突然って言うか、前からちょっと考えてて」
「何を」
「俺たち、これからどうしようって」
「え……」
 中堂は絶句した。
 どう言うことだ? もう出て行きたいとか、そう言うこと? じゃあさっきの何だったんだよ。
「中堂さんはどうしたいんですか? 俺をこのまま手元に置きますか? それとも」
「その話、今したくないです」
 折角良い気分だったのに。身体に甘く残っている熱が一気に引いてしまった。けれど、小田桐の身体を離す気にならなくて、中堂は彼の胸に顔を埋めて布団を被った。対話拒否のポーズだ。
 良いじゃないか。小田桐だって、この関係に慣れて、自分の方からしたがるくらいなんだから。この関係に何の不満がある?
 一昨日、小田桐の中身にもっと触れたいと思ったことを忘れて、中堂は考えることを止めた。

対話拒否のポーズ(ヨガ並感)。

 このまま自分が封じ続ければ、何も変えないで済む。
 小田桐のことなど知らなくても良い。リースを見る度に生じる心のざわめきは、クリスマスが終わるまで我慢する。それからしまい込んで、彼がいなくなったら捨てれば良い。
 小田桐の望んでいることがわからないまま、自然に終わりがくるのを待つ。
「年末年始、ご実家帰りますか?」
 だから、自然に終わったとしても、痛くもかゆくもない距離に戻りたい。
「そうですね。多分、顔出すと思います」
 そのまま居心地が良くなって、実家に戻ったって構わない。私たちは、元々何の義理も無い関係なんだから。
「ご両親によろしく。ああ、何かお土産でも」
「いえ、お気遣いなく。中堂さんこそ、ご実家は」
「私は帰りませんから」
 もう何年も帰ってない。それで良いと思ってる。その距離感が自分には丁度良いんだから。
「私の事はどうぞお気になさらず」
 あなたの温かい内面には触れたいけれど、それはきっと、私を焼き尽くす熱。

離れられて傷つくってことは好きって事じゃないですか~~~~(論理の飛躍)!!!

という高い壁を設置して最終話でなんとかします。見てな。

今回はこの辺で。ごきげんよう。

これはとても真面目な話ですが生活費と実績になります。