ソラを見上げて #13 お線香
―○○の部屋・夕方―
(〇〇が帰宅)
〇:よいしょっと。
ソ:あら、何買ってきたの?
〇:お線香だよ。
ソ:お線香? お仏壇も無いのに、何に使うの?
〇:故人は生前の様に飲食できないから、その代わりに香りを食べるって昔から言われているんだって。だからソラにも効果があるかなって思ってコンビニで買ってきた。
ソ:なるほど、お線香ね。じゃあ早速焚いてみる?
〇:うん
(テーブルに置かれたマグカップの中に、数本のお線香が立てられている)
〇:じゃあいくよ? 痛かったり、具合が悪くなったらすぐ言うんだよ?
ソ:うん、わかった。
(ジ、ジジ……と音を立て、お線香の先端が赤く光る)
〇:わぁ、お線香の香りなんておばあちゃんの家に行って以来かも……
ソ:……
〇:ソラ、何か変化はある?
ソ:んへへ……えへ。私、お線香好きかもぉ
〇:ソ、ソラ? ちょっと大丈夫?
ソ:何がぁ? だいじょうぶよ~、ちょっと気持ちよくなってきた……だけ、らからぁ
(うっとりした表情で目の焦点が合っていないソラ)
〇:えぇぇ? ソラが酔っぱらっちゃった……
ソ:えへへ。なんか楽しいね、○○。
〇:まぁ、確かに楽しそうだけども。
ソ:うふふ。○○は今、好きなヒトはいるの?
〇:うぇ? いや……って実体化してる!?
ソ:えへ。じゃあキスした事はある? 私はねぇ……うふふ
(妖艶な表情で迫ってくるソラ)
〇:ちょちょ、ちょっとタンマ! 何かおかしいって!
ソ:それとも私じゃ嫌?
〇:そ……そういう問題じゃなくて! くっ、早く消さなきゃ!
(急いでお線香の火を消し、部屋の換気をする○○)
ソ:あぁん、おせんこぉ……
〇:はぁっはぁ……なんつー声出してんだよ。戻ってこいソラ!
(頬っぺたをぺちぺち叩かれているソラ)
ソ:ぁぅ……はっ! わたし、今まで何を……
〇:嘘だろ? お線香でハイになっちゃう体質ってどうなってんの?
ソ:あれ? お線香の香りを嗅いでからの記憶が……
〇:……ソラ、お線香はやめよう。
ソ:なんで? いい香りだったのに……
〇:僕の心と体が持たないからダメ。
ソ:え? 何かあったの?
〇:……(張り倒したろか)
ーつづくー
【おまけ】
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