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ソラを見上げて #19 海へ続く螺旋の階段

大切なものは目に見えない。
え? 透けて見える?
それなら、手を握るように声をかけて、
抱きしめるように目を見て、一緒に笑うんだ。
目を閉じても、すぐ思い出せるように。

(仙台駅の展示会が終わった翌日…)

―○○の部屋・朝―

〇:じゃあ行ってくるね、ソラ

ソ:うん、行ってらっしゃい!

(バタン……🚪)


ソ:ずっと……このまま一緒にいられたらいいのにな。



―○○の通う服飾専門学校・実習室―

(○○と友人が談笑している)


△:で、昨日の展示会どうだった?

〇:どうって、始まってすぐにバイトに行ったからよく分かんないよ。

□:はぁ? お前の晴れ舞台なのに? バイト行ったの?

〇:んなこと言ったって、展示場にずっといたってしょうがないだろ?


△:新入生の課題が優秀作品に選ばれたって学校中の話題なんだぞ? 先輩達だってわざわざ見に行ったって話だ。なのにお前は……冷めてんなぁ。

□:ていうか、ここ最近講義終わったらすぐ帰るけど、お前まさか……

〇:なんだよ、まさかって

△:彼女出来たな?

〇:なんでそうなるんだよ! やること無いからまっすぐ帰ってるだけだろ? しいて言えば、バイトのシフト増やしたくらいで  

□:必死に反論するあたり、怪しいなぁ。

○:疑っても何にも出てこねーよ

△:じゃあ聞くけど、【sora】のモデルって、誰なんだ?


〇:……え?

□:聞こえなかったのか? 【sora】のモデルは誰だって聞いたんだが?

〇:あーえーっと。誰って言われると何て言ったらいいか……

△:警部、間違いありません。クロです

□:よし逮捕!

〇:まてまてまて! プライバシー問題だ!

△:なにも名前や住所を教えろなんて言ってないぞ! はぐらかすには何か理由があるんだろ?

〇:くそ……二人がかりなんて卑怯だぞ!

□:素直に言わないからこうなるんだ。観念して写真の一枚くらい見せろ!

〇:そんなものは無い!

△:いいだろう、時間はたっぷりある。昼飯にかつ丼でも食べるかぁ?

【ガラララ……🚪】

講師:おい! ○○はいるか!?

(血相を変えた講師が教室のドアの前に立っている)


△:○○ならここにいますけど?

○:助かった。

□:運の良い奴め……事情聴取はまた今度だな

講師:大変な事になった! 昨日の展示会に来ていた人が、○○の作品を使わせてほしいって直接電話してきたんだ!

〇:はい?

△:まじかよ!

講師:学校始まって以来、こんなこと初めてだ。なんて事だ……

(途中まで笑顔で話していた講師が、急に深刻そうな表情になる)


〇:どこの誰ですか? そんな物好きは。

講師:乃木坂……46だ。



―○○の部屋―

ソ:○○、早くかえってこないかなぁ♪

-おしまい-








ソラに救われた者がいる。
あの日、彼が見た虹は夢のふもとに掛かる橋だったのかもしれない。









空に希望を奪われた者がいる。
三年前。彼女は見上げた空の青さを拒絶した。








ソラ(空)篇、終了
閉ざされたトビラ(扉)篇、始動

to be continued……

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