ソラを見上げて #20 渡り鳥
遥:久しぶりだなぁ、仙台に来るの。
梅:私は春に来て以来かな。
遥:お仕事ですか?
梅:ううん、プライベートで。ほら、このまえ牛タンラー油あげた時。
遥:あ、そういえば! 本当に仙台行ってたんですね。
梅:そ。さぁて、牛タン食うぞ~!
(梅澤美波と賀喜遥香は番組収録のため、仙台を訪れていた)
遥:あ、美波さん。今年もおっきなフラッグ飾ってくれてますよ。
梅:ホントだ。いつもいつも、ありがとうございます!
(駅構内の天井に梅澤美波卒業コンサートと大きく書いてある大型フラッグが飾ってあり、梅澤は目を細め手を擦り合わせている)
遥:やだぁ美波さん。おばあちゃんみたいですよ?
梅:ちょっと! まだ二十代なんですけど?
遥:えっへへ。
(仙台駅は乃木坂46のライブ開催が近づくと、大型フラッグの設営やコラボ商品発売など他の大都市には無い程の盛り上がりを見せる)
梅:下のフロアって何やってるんだろ? かっきー見える?
遥:展示会ですかね? たくさんお洋服を飾ってるみたいですけど。
梅:え、見たい!
遥:えぇ? だってもう待ち合わせの時間が
梅:大丈夫大丈夫。ちょっと時間あるし、行こ?
遥:時間あるって、5分くらいしか
梅:だったら尚更早く行かなきゃ。ねぇ~行こうよかっきー。
遥:もー、しょうがいないですね。
(梅澤のワガママに押し切られ、仕方なく展示会に同行する遥香であった)
―仙台駅2階・ステンドグラス前コンコース―
梅:うわ、すご。これ一人でデザインして作るんだ、大変だろうな。
梅:これは……ソラって読むのかな? 綺麗な水色……え?
(【sora】という作品の前で立ち止まった梅澤は、モデルのラフ画に目が釘付けになる)
梅:どうして……
遥:美波さん、気になるお洋服ありました?
梅:かっきー。この作品のモデル見て。
遥:モデルですか? え……これって、どう見ても
梅:だよね。
遥:凄い、生きてるみたい……あぁ駄目です。思い出しちゃいます。
(作品を見た遥香が涙を流している)
梅:作品のモデルは校内の生徒、もしくは近親者に協力を得て制作しています。か……
(パンフレットの注釈を読み、荷物からメモ帳とペンを取り出す梅澤)
遥:美波さん、何を書いてるんですか?
梅:作品の寸法とモデルのサイズ、メモしておこうと思って。
遥:?
―都内某所・送迎車内―
遥:美波さん、お先に失礼します。お疲れ様でした!
梅:うん。また明日ね
(遥香を降ろした送迎車は再び動き出す)
梅:すみません。自宅じゃなくて、事務所で降ろして頂けませんか?
運:えぇ、構いませんが……よろしいんですか?
梅:はい。
運:わかりました。
梅:ありがとうございます。
(20分後……)
運:では、ここで。
梅:ありがとうございました。
―SME六番町ビル・乃木坂46事務所―
梅:お疲れ様です
今:お疲れ様……って梅澤じゃないか。今日は直帰じゃなかったか?
梅:そうなんですけど、前に着た衣装とか見たくなっちゃって。
今:はは、そうか。じゃあスタッフに保管室の鍵を開けるように言っておくから、少し待ってろ。
梅:はい、ありがとうございます。
【ピッピピ……📱】
今:今野だ、いま大丈夫か? 梅澤が保管室の衣装見たいって言ってるから開けてやってくれないか? あぁ、鍵は俺が閉めるから……
(電話をしながら事務所から出ていく今野)
梅:……
―乃木坂46事務所・衣装保管室―
梅:2024、2023……2022、あった。
(大量に置かれているダンボールに囲まれ何かを探している梅澤)
梅:これで、本当に……
(梅澤は深刻な表情を浮かべ、ダンボールから取り出した衣装と展示会で書いたメモをテーブルに並べる)
梅:……
(衣装にメジャーを合わせ測った数値をメモの横に書き込んでいく)
梅: あぁ!
(壁に投げつけられたメジャーが大きな音をたてて床に転がる)
梅:メンバーのサイズは非公開。何があっても外部に漏れることなんてあり得ない……
(愕然とした表情で立ち尽くす梅澤)
梅:どうして同じなの? なんで……なんでよ! うっ、あっあぁ……ごめん、ごめんね。会いたいよ、声が聞きたいよ。
(測っていた衣装を抱き締め、泣き崩れる梅澤)
梅:久保……
—つづく―
【おまけ】
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