「ある雨の日のひととき」
年金振込日。食材買い出しのため、雨の中傘を差しつつ郵便局経由で天文館まで歩いた。4.5キロメートル約1時間。イワシやサバなどの生魚は、この辺りだと、あけぼの天文館店が最も品揃え豊富で安価なので・・・
買い物を済ませ、帰りは路線バスに乗ろうと思い、天文館バス停に行き時刻表を確認すると、次の便までの待ち時間が約1時間。徒歩で帰るのに要する時間と変わらない。いっそのこと歩いて帰ろうかとも思ったが、買った荷物で重くなったリュックを背負っての城山越えは、楽ではない。しばらく迷った後、このところ筋トレを日課としているせいか、以前よりリュックを軽く感じるようになっていたことを思い出し、体力を試すつもりで城山団地経由で歩くことにした。
鶴丸城ご楼門前から鹿児島医療センター前を通過し、城山トンネルの上り坂を歩く。
草牟田にさしかかったところで、ディスカウントドラッグ《コスモス》に寄って、オリーブオイルとビスケット一袋、缶チューハイ1本を購入。重いリュックを更に重くして、さらに自分の体力を試すことにした。
玉江橋を渡り、リュックの重みを十分過ぎるほど背に感じながら、坂道をゆっくりゆっくりとのぼり我が家に到着。帰宅後、すぐにリュックの中身を冷蔵庫に移し、水分補給した後、昼食を準備するのが面倒だったので、買ってきたばかりのビスケットを口に放り込み缶チューハイ350㎖を喉に流し込む。糖尿を患っている実で最悪の食事だと言える。度を過ぎると良くないだろうが、いつもこんなことをしているわけではない。血液検査の結果は今のところいつも良好で、血糖値を抑える薬も処方されていない。
一休みした後、さほど疲れを感じていないことに気を良くして、さらに体調の良さを楽しむかのように、またすぐに徒歩で外出。
まず、坂道を下ってすぐの所にあるファミリーマートに寄って、公共料金の支払いを行う。
レジに立っていたのが顔見知りの女子店員だったので、財布を取り出しながら、軽口を叩きつつ小銭を探す。
「また雨だね。こんなに雨の多い年って、最近なかったよね」
「そうですよね」
「いいかげんイラつくよ」
「ほんとにねえ」
こんなどうでも良い会話にも、笑顔で対応してくれるのが嬉しい。
「1円玉が3枚あれば丁度なのに、2枚しかない運の悪さ。たぶん、晴れてたら3円あったんだぜ。全然、理屈になってないけどさ」
このあまりにも馬鹿々々しい冗談ともつかない冗談にも笑顔で対応してくれている。
かくしてめでたく支払いを終えると、
「雨が降ってるので、気を付けてください」
と笑顔を浮かべながら一声かけてくれた。
「そうだね。雨の中気負付けないとね」
もしかして、これって年寄り扱いされてるのかな?
タイヨー原良店に向かう途中、久々にモンシェリー松下でチョコレンガを買いたくなり立ち寄ることにした。支払いを済ませ出入口のドアを開けると、すぐ右後ろに店員の女の子が立っていて、笑顔を浮かべながら一声かけてきた。
「おしゃれですね」
「え?」
「素敵です」
「照れます・・・」
からかわれたのかな? あの店で、そうやって店員が外まで付いてきて見送ってくれたのは初めてのことで、ちょっと気分良かった。自分以外に客がいなかったのも今日が初めてのことなので、もしかすると、手が空いている時はいつもそうすることになっているのかな?
その後、タイヨーで買い物を済ませ、城西公園前から明和行きのバスに乗った。わざわざバスに乗らなくても良さそうなものだが、天文館からバスに乗らなかったのが何となく心残りだったという、なんともおかしな理由から。
「かけごし」「山田」等のバス停を経由し、車窓から見慣れた街並みを眺め、そして「明和北」バス停で降り、そこから自宅まで徒歩にて坂道を降りる。このコースを辿ること自体に愛着が生じており、ささやかな趣味みたいになっている。
帰宅後、しばらく休憩したあと、カードマジックの基本練習をしながら、あれこれとマジックの演技について考えを巡らせた。
なんとささやかでありふれた午後。
一昨日、町内の敬老会役員の方が二人で訪ねて来た。
「この前の『お楽しみタイム』が、マジックしたりクイズや歌もあってすごく楽しかったので、次回五月にまた予定が入ってますけど、ぜひまた同じような内容でやって欲しいとの声が出ています」
笑顔で声を弾ませて、そう言ってくださったのが嬉しかった。
「もちろん、そのつもりでいますよ」
町内という小さな集まりでのささやかなできごとではあるが、周囲の人々に歓迎されているということに幸せを感じ、活動の場があるということに感謝している。
仕事でスケジュールが埋まっていれば、こんな時間もなかなかないのだと思えば、忙しくないということも、それはそれで幸せなのかな?
そんなこんなで、最近人と接することが楽しい。ここに書いたように、レジでの支払いというほぼ瞬間的かつ単純な関わりさえも楽しく感じられる。
この何の変哲もないほっこりとした日常のひとときを、何となく文章として残してみたくなり、こうしてタイピングしたみた。
ではまた!
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