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「おねえちゃーん!」 と誰かを呼ぶ声が聞こえた ~ 15年前の日記より

 

  平成20年7月28日火曜日

 土曜日の夕方、僕は鹿児島市の中心地から少し外れた古い商店街を歩いていた。

 昔は賑わいを見せていたであろうその街も、今では下ろされたシャッターが目立ち、米屋、煙草屋、花屋、クリーニング屋などが、ぽつりぽつりと営業している状態。

 日が傾きかけ、猛暑も峠を過ぎ、近所のおかみさん同士の立ち話がどこからか聞こえてきた。

 ふと会話が途切れ、誰かを呼ぶ声が響いた。

 「おねえちゃーん」

 最初は環境ノイズの一部だとしか思っていなかったのだが、

「おねえちゃん、おねえちゃん、おねえちゃーん」

 と、繰り返されるうちに、それが言葉として耳に入ってきた。

 何があったんだろう? 

 そう思い振り返ってみると・・・。

 声を発した人の視線は、他でもない、この僕をまっすぐに捕らえている。

 それでも僕を「おねえちゃん」と呼び、話しかけてくる。

 ― なんだ? ふざけてるのかな??

 そこで、ようやく気付いた。

 ― あ! さては勘違いしてるな・・・

 そのとき僕は、直の日差しを避けるため頭にタオルを巻き、顔が隠れるような格好をしていた。
 男性としては肩幅が狭く胸板も薄い。そのせいか、ごくたまに、後姿を女性と見まがわれることがある。後ろから「おばちゃん」とか「奥さん」とか呼びかけられてムッとしたこともある。

 そこで、ちょっとイタズラ心が・・・。

 頭に巻いたタオルをバサッと取り払いつつ、

 「おねえちゃんじゃなくてオジサンだけど」

 御婦人お二方、一瞬「はとに豆鉄砲」状態。

 ちょっと遅れて大笑い。

 「あはははは~~!」

 「こんなオレンジ色のTシャツなんか着てるから、女性だと思ったんでしょ?」

 「いや、しぐさがなんか」

 しぐさ?

 仕草が女性っぽいわけがない。僕はただ歩いていただけなのだ。

   ** ** **   

 検証するために、ちょっと 後ろ姿なんぞ 鏡に映して撮影してみた。

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