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「予期せぬできごと」

 音大に通っていた頃のこと。大学そばのバス停から立川駅行きのバスに乗り込むと、車内はかなりの混雑状態。額の汗を拭こうと、つり革から手を離し、胸ポケットのハンカチに手をおろそうとしたときでした。運悪く目の前にいた小柄な方の頭に当たってしまったのです。頭の禿げた70過ぎの男性でした。あまりにもきれいに命中してしまい、ペチャっと音をたてて、平手で頭全体を掴むみたいな感じになってしまいました。
 そのまんまの状態で、一瞬のお見合い状態。
「しまった!」と思う間もなく、男性は顔をしかめ、
「なにしやがんだい!」
 と江戸弁で呟いたのです。
 その様子が何とも可愛くユーモラス見えて・・・、つまり本人の意思に反してギャグとしてのツボに嵌ってしまったのでありまして・・・、
 謝らなければいけないと思い、「すみません」と言いたくても、声を発すると、そのまんま吹き出してしまいそうで、失礼だと思いながらも、笑いを堪え続けるだけで精一杯。そうしている間に、その男性は益々気分を害し、そっぽを向いてそのまま背を向けてしまいました。

 今だったら、そんなに困るほど笑いはこみ上げてこないでしょうけど、何しろまだ20代ソコソコだったのがまずかった。
 おじちゃん、あのときは、ゴメンナサイ。

                2006年09月02日の日記より

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