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「4歳の誕生日 ~ 瞬間的な記憶」

 ふと思い出した。
 4歳の誕生日の時、ケーキに立てられた蝋燭の炎を「フッ」と一吹きで消した瞬間のことを。

 皆が拍手してくれ、その作業に成功したことがとても誇らしかった。
 「もう4つになったんだから泣くんじゃないぞ」
 父にそう言われたことを覚えている。高校の体育教師だった父は、男は常に男らしくあるべしという考えを持っており、いつもそんな言葉で、幼い私にプレッシャーをかけてきた。

 ― 男の子なんだから泣くな… ―

 軽い気持ちで言っていたのだろうが、4歳で泣くなというのは、かなり難しい注文であり、その言葉にはいつも打ちのめされていたものである。

 その誕生祝いは、夜ではなく昼間に行なわれた。

 そこでまた、ふと思った。

 昼間の誕生祝に、高校教師だった父が家にいたということは、その日は日曜日だったのだろうか…。

 それまで、一度もそんなことを気にかけたこともなかったのだが、なぜか突然そう思った。

 目の前に人生の謎解きパズルが現れ、正解を知りたくなった。

 そこでネット検索。

 4歳の誕生日、1960年の3月13日は、果たして何曜日だったのか?
 自宅にいて、簡単に調べが付く。便利な世の中になったものである。

 その結果…、

 4歳の誕生日は、日曜日であった。

 ― やっぱりそうだった!―

 だからどうということもないのだが、曖昧性のカーテンにぼんやりと潜んでいた記憶の整合性が証明され、すっきりとして気分が良かった。


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