「第九」の話
はや年末である。
この時期になると、時候の挨拶的に
「街中からクリスマスソングが聞こえ」
とか
「コンサートホールでは第九が響き」
などと言ったり、言わなかったり。
ともかく、時節柄ということもあり、今日のお仕事BGMはベートーヴェンの『交響曲第9番』にした。
そう、この時期のコンサートホールをジャックするかのように演奏されまくるあの「第九」だ。
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いくつか聴き比べながら思う。
「カラヤン×ベルリンフィルは、無敵感がすごいなぁ」
「日本人指揮者だと、コバケンこと小林研一郎の指揮もいいなぁ」
そして、
「またオケで弾きたいなぁ(昔コントラバス弾いてた)」
今はもう、左手は全然指が回らないし、右手は弓を安定させられないだろう。
でも、弾きたくはなるなぁ。
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ところで、「第九」というと、四楽章の
「♪♯ファーソララソ♯ファミレーミ♯ファ♯ファーミミー」
がとても有名だし、チェロとコントラバスで始まるあそこは、
見せ場でもある。
もし聴く機会があれば、そこ以外でもチェロとコントラバスに注目してほしい。
特に終盤のトチ狂ったように盛り上がる箇所、そこのちょっと手前くらいから信じられないくらい動き回ってるから。
コンサートなら見ていてほしい。
指板の上から下まで、左手が生き物のように激しく這いまわってる様を。
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あそこは練習してもちゃんと弾けたことがなかった。
曲中のトップスピードに近いテンポのところなので、速すぎて無理。
だいたい、一時間くらい演奏を続けた最後の最後で一番激しい動きをするなんて、追い込み方がエグい。ㅤ
学生オケやアマオケの場合、一人二人は“弾いてるフリ”の人がいる。
生温かい目で見てほしい。ㅤ
そういうわけで年の瀬。
年末だから「第九」というのは、ベタではあるけど、私にとってはそれなりに思い入れがある曲でもある。
しんどいことがあっても、そうでなくても、今年も「第九」を生きて聴けたという事実だけで、来年もなんとかなるような気がする。
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Diesen Kuss der ganzen Welt!
この口づけを世界に!
歌詞をみてみると、こんなことを言っている。
世界に、なんて大それたことは言わない。
ただ、私の周りの人たちには、愛する誰かに口づけできるような年末であってほしい。
残念ながらそういう相手がいなくても、「まあなんだかんだ良い年だったな」と思ってほしい。
歓喜でなくても、ささやか喜びとともに新年を迎えてほしい。
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私は、もう少し仕事が残っているので、口づけはおあずけです。
七緒よう
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