見出し画像

父の話

2月8日は父の命日。今年で3年になる。
父は病院と老人ホームを行ったり来たりして、最終的には療養型の病院で亡くなった。最後の2週間はナースステーション横の個室に入り、コロナ禍だったが、1日15分の制限付で面会が許された。それは、もうそろそろ、、、という意味だったことに気づかず、しばらくはこんな日々が続くのだと思っていた。
亡くなったのは月曜日の早朝だった。母からの電話に慌てて家を出てタクシーで病院に向かった。間に合わなかった。母はものすごい大声で泣き、私も泣きたい気持ちはあったけど、母の大声に引いてしまい、あまり泣かなかった。
姉がやって来た。3人で「まだあったかいね」と何度も確かめた。
昨日、病院の近くを通った。一瞬、父がまだそこにいるような気がした。

父はとても真面目で丁寧な人だった。
近所のスーパーにある宝くじ売り場で毎週ロト6を買っていた。自分の番号と当選番号を手書きで一覧表にまとめていた。どんな分析をしていたのかは分からない。最下位の数百円は何度か当たったけど、高額当選は一度もなかった。
新聞の下段にある本の広告を見て、買いたい本があれば、新聞を切り抜いて本屋さんに行った。面白そうな本より、知識として得ておくべきだろうという本を選んでいたようだ。本の表紙ウラには買った日付を書き、切り抜いた新聞が挟んであった。
父は「三途の川の渡り方」の本を買いに行きたかっただろう。初めてのことだから予備知識が必要だ。きっと近くの本屋さんには置いていないから注文しないといけない。注文票の控は丁寧に折りたたんで手帳に挟んでおく。重要なことが書いてあるページは、コピーした上で赤ペンを引き、手帳サイズに切って、貼っておくに違いない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?