アージャ/阿奓

日本在住🇨🇳中国小説を日本語訳しています。(職業の翻訳者ではありません)原則原作の購入者…

アージャ/阿奓

日本在住🇨🇳中国小説を日本語訳しています。(職業の翻訳者ではありません)原則原作の購入者のみ閲覧。日本向けのローカライズはしていないので単語など翻訳の参考になれば^^ 完全に個人、原作者様、企業団体様には一切関係ありません。 更新情報はTwitterにて。

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【天涯客(山河令)日本語訳】第4章 義士

黒衣の男と紫衣の少女はすぐに闘い始め、周子舒はその様子を傍観していた。この二人の功夫の度合いはあまり同じとは言えなかったが、意地の悪さは同程度で、いわゆる名門の正統派の中で完成されたものとは違っていた。 十四五手の内に、黒衣の男は不意に少女の掌を躱すと、すかさず彼女の膻中穴を蹴った。 少女は横向きに身を躱すと、軽く怒声を上げ、鋭い手付きを向け、彼の膝骸骨に狙いを定めた。ところが突然、黒衣の男の褲子から音が鳴ったかと思えば、彼の脛から折れた矢がバネのように飛び出し、少女の顎

    • 【天涯客(山河令)日本語訳】第3章 荒庙

      周子舒は気にも留めなかった── 元より死を求めて色々なことをするつもりだ、それ以外のことは何も気にせず、あの老漁樵の口から出た不浄な話は、全て酒の肴となった。 烏篷船が静かに川を離れていくと、 川岸の向こうで、娘が愛嬌のある声で叫んだ。 「菱角、菱角はどう。」 まるで川の流れのようにゆっくりと年月が流れているようで、周子舒はここで死ぬのも悪くないなと思った。 彼は蓬莱を通る際に伝説の仙山を訪れ、 山の中腹でそう考えていたが、 後になってまた思い出した。 "杏花煙雨江

      • 【天涯客(山河令)日本語訳】第2章 偶遇

        七竅三秋釘には秘密がある。 この秘密は、今のところ周子舒のほかには誰も知らない。今後も知る者はいないだろう── 一度に七本の釘を刺せば、人はその瞬間不能になってしまう。周子舒のように功力のある者も、おそらく皇宮を出るまで呼吸が続かず、皇宮の門にたどり着く前に、動くことも話すこともできない腐った肉の塊となる。 しかし、三ヶ月ごとに釘を一本打ち込み、その釘を少しずつ自分の体の中に入れて自分と一体化させ、徐々に適応していけば、三年後には同じ結末を辿ることにはなるものの、少なくと

        • 【天涯客(山河令)日本語訳】第1章 天窗

          庭には梅の花が一面に咲き、地面に散って、まだ綺麗に残る残雪の上に敷き詰められている。一見しただけでは、どれが雪でどれが梅なのかわからないほどで、風が吹くと薄い香りが悠々と庭中に漂っていた。 黄昏時を過ぎ、軒先に月が上る。 その光は水のように冷やかだ。 小院の外れには梅の花で半分ほど覆い隠された角門があって、年季の入ったその小門を開けて通ってみると、中は随分と異なる光景を見せていた。 入口には二人の鎧を纏い、 刀を持った立派な男が立っていた。 門廊は狭く窮屈、下には大き

        【天涯客(山河令)日本語訳】第4章 義士

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        • 山河令日本語訳
          4本