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不倫ヒューマン小説 ◇ 後悔の余韻

タイトル:後悔の余韻 第一回 作:Naruto


この物語は、第一章から第九章までで構成された、不倫をテーマにしたヒューマンドラマです。

・あらすじ

  1. 日常の裂け目

    • 健太の停滞した日々

    • 美咲との運命的な出会い

  2. 芽生える情熱

    • 密会の始まり

    • 高まる期待と興奮

  3. 揺れる心

    • 家庭での違和感

    • 絵里の不安と努力

  4. 決断の時

    • 健太の離婚宣言

    • 絵里との別れ

  5. 新たな船出

    • 美咲との新生活

    • 周囲の反応と社会的圧力

  6. 亀裂

    • 現実との戦い

    • 美咲との関係の変化

  7. 過去との対峙

    • 失った絆の重み

    • 家族の思い出に苛まれる日々

  8. 後悔の淵

    • 絵里の再出発

    • 健太の深まる孤独

  9. 余韻

    • 取り返しのつかない選択

    • 公園のベンチでの独白


あらすじ


あらすじから〜第二章まで(ミュージックと朗読)

▲ よろしければダウンロードしてお楽しみください(無料)
©️ Naruto



朗読ビデオです ストーリーと共にお楽しみください

人生の岐路に立たされたとき、私たちは何を選択するのか。

そして…その選択がもたらす結果に、どう向き合うのか。

「後悔の余韻」は、平凡な日常に埋もれていた中年サラリーマン・健太が、若く魅力的な後輩・美咲との出会いをきっかけに、激しい情熱と苦悩の渦に巻き込まれていく物語です。

15年間の結婚生活、二人の子供たち、そして安定した仕事。
健太は、それらすべてを捨てる決断をします。新たな人生への期待に胸を膨らませ、美咲との未来を夢見るのです。

しかし、現実は甘くありません。

社会の冷ややかな目、家族との絆の喪失、そして徐々に冷めていく情熱。
健太は、自らの選択の重さに押しつぶされそうになりながら、失ったものの大切さに気づいていきます。

一方、残された妻・絵里は、傷つきながらも新たな人生を歩み始めます。

美咲もまた、理想と現実のはざまで揺れ動きます。


佐藤健太

果たして、健太の選択は正しかったのか。失われた絆は取り戻せるのか。
それとも、全てを失って初めて、本当の幸せに気づくのか。

「後悔の余韻」は、愛、家族、そして人生の選択について深く問いかける物語です。
読者一人一人が、自らの人生と向き合うきっかけとなるでしょう。

時に切なく、時に激しく、そして深い思索へと誘う本作品は、現代社会に生きる私たちの心の機微を鋭く描き出します。

あなたは、どんな選択をしますか?そして、その選択の先に何が待っているのでしょうか。

「後悔の余韻」が、あなたの心に深く響く物語となりますように。


美咲のあどけなさの残る笑顔

第1章:日常の裂け目

東京のオフィス街。朝8時。サラリーマンの群れが駅から溢れ出し、それぞれの職場へと急ぐ。
その中に、主人公の佐藤健太(42歳)の姿があった。

健太は15階建てのガラス張りのビルに入り、エレベーターに乗り込む。
7階で降り、営業部のフロアに足を踏み入れる。

周囲からの「おはようございます」の声に、健太は小さくうなずくだけで挨拶として返した。 はたから見たら怪訝そうに見えたかもしれない。
彼の表情には、かすかな疲労と諦めが混ざっていた。

窓際の自分のデスクに座り、パソコンの電源を入れる。
画面に映るのは、昨日までと変わらぬエクセルシート。数字の羅列が、健太の目の前で踊る。

「はぁ...」

小さなため息が漏れる。健太は15年間の結婚生活を振り返る。
最初の頃は、妻の絵里(40歳)との生活に幸せを感じていた。
子供が生まれ、家族との時間を大切にしていた。しかし、いつからか全てが日常に埋もれてしまった。

朝、妻が作る味噌汁の味。
休日の公園での子供との遊び。
夜、テレビを見ながらの会話。

どれも、かつては幸せだと感じていたはずなのに、今では全てが色褪せて見える。

「俺の人生、このままでいいのか...」

そんな思いが、健太の心の中でぐるぐると渦を巻いていた。

昼の休憩。同僚たちが誘う社員食堂行きを断り、健太は一人でコンビニ弁当を買って戻ってきた。
デスクで黙々と食事をする。周りの話し声が、どこか遠くに聞こえる。

午後3時。取引先との電話会議が終わり、健太は疲れた表情で椅子に深く腰掛ける。そのとき、

「失礼します。佐藤さんでしょうか?」

清々しい声に、健太は顔を上げた。そこには見慣れない若い女性が立っていた。

「はい、そうですが...」

「初めまして。私、山田美咲と申します。今日から営業部に配属になりました」

28歳。艶やかな黒髪に、知的な雰囲気を漂わせる女性。

しかし、それ以上に健太の目を引いたのは、彼女の輝くような笑顔だった。

「あ、はい。よろしくお願いします」

美咲と健太

健太は慌てて立ち上がり、美咲と握手を交わす。
その瞬間、電気が走ったような感覚が健太の体を貫いた。

「この案件の資料をお願いできますか?部長から、佐藤さんに聞けばわかると言われまして」

「ああ、そうですね。少々お待ちください」

健太は資料を探しながら、妙に落ち着かない自分に気づいた。美咲の存在が、彼の退屈な日常に小さな亀裂を入れ始めていた。

資料を渡しながら交わす会話。美咲の真摯な眼差しと知的な受け答えに、健太は久しく忘れていた高揚感を覚える。

「ありがとうございます。また分からないことがあったら、ご相談させていただいてもよろしいでしょうか?」

「ええ、もちろんです」

美咲が去った後、健太は長い間、彼女が立っていた場所を見つめていた。心の中で、何かが大きく動き始めていることに、まだ気づいていなかった。

その日の夜。健太は久しぶりに高揚し、なかなか寝付けなかったが、いつのまにかまどろみ、それこそ堕ちるように眠りについた。


第2章:芽生える情熱

美咲との出会いから2週間が過ぎた頃、健太の日常に小さな変化が訪れ始めていた。

朝、会社に向かう電車の中。健太は普段より少し早い電車に乗っていた。

理由は単純で、美咲と同じ電車に乗れる可能性が高かったからだ。
まるで中学生の頃のようだ。

「あ、佐藤さん!おはようございます」

期待通り、美咲の声が聞こえてきた。健太は心臓の鼓動が少し速くなるのを感じながら振り返る。

「あっ、おはよう...」


電車内で会話する二人

二人は並んで立ち、会社までの20分間を他愛もない会話で過ごした。

仕事の話、趣味の話、最近見た映画の話。
どれも取るに足らない話題だったが、健太にとっては一日で最も充実した時間のように感じた

オフィスでも、二人の距離は徐々に縮まっていった。
昼食時、健太は社員食堂で一人で食事をしていた。

「佐藤さん、こちらに座ってもいいですか?」

美咲が笑顔でトレーを持って立っていた。健太は慌てて隣の椅子を引いた。

「どうぞ」

最初は業務の話から始まったが、次第に個人的な話題へと移っていく。
美咲の笑顔、その知的な会話に、健太は久しく忘れていた高揚感を覚えていた。

「佐藤さん、趣味はなんですか?」

「そうだなぁ...昔はギターを弾いていたんだけど、最近はすっかり...」

「え!私もギター好きなんです。今度、弾いているところを聴かせてください!」

美咲の目が輝いていた。健太は思わず、「ああ、いいよ」と答えていた。

その日の夜、健太は15年ぶりにギターを手に取った。
錆びついた指を動かしながら、彼は明日美咲に聴かせる曲を練習した。

妻の絵里は不思議そうな顔をしていたが、健太は「ちょっと思い出しただけ」と誤魔化した。

週末、健太と美咲は仕事帰りに近くのカフェに立ち寄った。健太は緊張しながらギターを取り出し、かつて得意だった曲を弾き始めた。

美咲は目を閉じて聴き入っていた。演奏が終わると、彼女は彼女は笑顔で小さな拍手を送った。

「素敵です!佐藤さんの新しい一面を見られて嬉しいです」

その言葉に、健太の心は大きく揺れ動いた。美咲の笑顔、その優しさに、彼は自分の中に眠っていた情熱が呼び覚まされるのを感じていた。

カフェを出た後、二人は夜の街を歩いた。肩が触れ合うほどの距離で歩きながら、健太は罪悪感と高揚感が入り混じる複雑な感情に包まれていた。


二人で歩く夜の街

「健太さん...」

美咲が立ち止まり、健太の名を呼んだ。それは初めて、お互いの名前で呼び合った瞬間だった。

夜の街を歩きながら、美咲の心は激しく揺れ動いていた。健太との距離が近づくにつれ、彼女の胸の鼓動は加速していく。

(これは間違っているわ...)

理性がそう告げる。健太には妻がいて、子供もいる。そんな人を好きになるなんて、倫理的に許されることではない。

(でも、この気持ちは...)

健太と過ごす時間が増えるにつれ、美咲は自分の心が徐々に彼に引き寄せられていくのを感じていた。彼の優しさ、知性、そして時折見せる脆弱な一面。全てが美咲の心を掴んで離さない。

(私には資格がないの?幸せになる権利が...)

美咲は自問自答を繰り返す。社会の目、道徳観念、そして何より自分自身の良心との戦い。

しかし、それと同時に、抑えきれない感情が彼女の中で膨らみ続けていた。

健太の横顔を盗み見る。街灯に照らされた彼の表情に、美咲は息を呑む。

(もし、この気持ちを伝えなかったら、一生後悔するかもしれない...)

決断の瞬間が近づいていることを、美咲は感じていた。胸の内で、恐れと期待が混ざり合う。

そして、ついに美咲は足を止めた。

もう一度「健太さん...」

美咲が健太の名を呼んだ。心臓が喉元まで出そうなほど激しく鼓動している。

「どうした...」

健太が振り返る。二人の目が合う。

美咲は深呼吸をした。もう後には引けない。全ての葛藤、躊躇、そして希望を込めて、彼女は言葉を紡ぎ出した。

「私...あなたのことが好きかもしれません」

その言葉と共に、美咲の中で何かが大きく変化した。後悔と解放感、罪悪感と幸福感。相反する感情が彼女の中で渦を巻いていた。

「好きかもしれません」

その告白に、健太の理性は音を立てて崩れ去った。
彼は美咲を抱き寄せ、唇を重ねた。15年ぶりに味わう、激しい恋の味。

罪の意識と快感が入り混じる中で、健太は心の底から生きている実感を得ていた。

その夜、健太は遅く帰宅した。玄関で待っていた絵里に、「仕事が忙しくて」と言い訳をした。

絵里は何も言わずに頷いたが、その目には不安の色が浮かんでいた。

告白を聞いて抱きしめる健太

ベッドに横たわりながら、健太は美咲との熱い抱擁を思い出していた。

同時に、隣で眠る絵里の姿に、激しい罪悪感を覚える。しかし、もう後戻りはできなくなっていた。

健太の心は、既に美咲へと傾いていたのだった。


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