お盆の夕方に墓参り
序章
毎年お盆の夕方、私は母と共に祖母の墓参りに行くのが恒例だった。今年も例に漏れず、夕暮れが迫る中、私たちはお供え物を持って山道を登っていた。墓地は山の奥深くにあり、静寂と薄暗さが漂っていた。
墓地の静寂
到着すると、墓地にはほとんど人影がなく、周囲はひっそりとしていた。私たちは祖母の墓前に膝をつき、花を供え、線香を立てた。ふと、後ろに人の気配を感じ、振り返ったが、誰もいない。母も不思議そうな顔をしていたが、すぐに気にしないようにと言った。
不気味な影
墓参りを終え、帰ろうとしたとき、遠くからかすかな唸り声が聞こえた。風の音かと思ったが、次第に近づいてくるその音は、人の声のようだった。再び振り返ると、墓石の影から白い着物を着た女性がこちらを見つめているのが見えた。彼女はゆっくりとこちらに向かって歩いてきた。
恐怖の体験
驚きと恐怖で動けなくなった私は、母の手を強く握りしめた。しかし、母もその女性に気づいたようで、青ざめた顔で立ち尽くしていた。女性は近づくにつれて顔がはっきりと見えてきた。彼女の目は真っ黒で、虚ろな表情を浮かべていた。口からは赤黒い血が滴り落ち、静かな墓地に不気味な音を立てていた。
謎の解明
恐怖に駆られた私たちは急いでその場を離れ、家に戻った。家に帰ると、父が私たちの様子を見て驚き、何があったのかを尋ねた。私たちはすべてを話すと、父は深刻な表情を浮かべた。彼は古い写真を取り出し、その中の一枚を私たちに見せた。それは祖母の若い頃の写真で、そこには白い着物を着た女性が写っていた。彼女は祖母の妹で、戦時中に行方不明になっていたのだという。
結末
それ以来、私たちは毎年お盆の夕方、墓参りに行くたびにその女性の姿を見るようになった。彼女は静かに微笑んでいるだけだったが、その目は常に私たちを見つめていた。お盆が終わると、その姿は再び消え、次の年の夕暮れまで現れることはなかった。
この体験が私たちに教えてくれたのは、亡くなった人々の魂がまだこの世に存在し、私たちを見守っているということだった。お盆の夕方に墓参りをするたびに、その思いは一層強くなった。
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