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元中国衛生部長高強氏のメッセージ〜「ウイルスとの共生はあり得ない」

 新型コロナ対策は、「ウイルスとの共生」を目指す開放型か、厳格な隔離を続ける中国のような「ゼロコロナ」封鎖型か。中国側の意見として少し興味深い記事が出ていたのでnoteで紹介しておきます。中国の防疫対策を理解する上で、参考までにご覧ください。

 2003年4月20日、SARSが中国で猛威を振るっていた頃、中国衛生部(いわゆる厚生労働省)のトップに急きょ就任した高強氏。突如記者会見に登場。当時、情報の透明性を訴え、政府内で大なたを振るった印象を私は持っています。感染者数を正確に把握すること。それが感染症対策の根本であることをSARSの頃も上海にいた私は強く感じました。その高強氏が、昨今の世界、そして中国でのデルタ株の猛威について、(強烈な)メッセージを人民日報に発表していました。今後の中国の防疫対策の指針を暗示しているようにも思われ、少しここに紹介しておきます。

 原文は、ここにあります。

 ”最近、世界各地で感染者が再度増え始めている。米国でも1日10万人の新規感染者の報告もある。この背景には、英国・米国など欧米諸国の「ウイルスとの共生」(With コロナ)政策と深く関係がある。いわゆる個人主義価値観からすれば必然的な結果ともいえ、他の発展途上国の国々もその誘惑に負けて、開放する方向に進みつつある。その結果、世界各地でまた感染のピークが発生し始めている”

”このような全世界での感染拡大に関して、英米を初めとする国々は、感染拡大の原因を、政府の失策と捉えず、ウイルスの変異のせいにしている。多くの国際世論も異口同音にその流れに乗っている。デルタ株の感染力などが強すぎるのが原因だと。確かに、ウイルスの変異が防疫対策に与える困難は計り知れないが、最終的に防疫対策を決定するのは人である。もし人類が防疫対策に失敗すると、どれだけ弱いウイルスでも蔓延してしまう。間違った対策でデルタ株に臨むと、深刻な結果になりかねない。防疫対策の失敗をウイルスのせいにしてしまうと、政府の失策が見えなくなっていまう。”

”デルタ株の脅威を広く知らしめる一方で、「ウイルスとの共生」もPRする。これは大きな矛盾にも思える。ウイルスと人類の関係は生きるか死ぬかの関係。新しいウイルスは次々と出てくるかもしれない。人類がウイルスに勝利するには、ウイルスを制圧出来る新薬の登場を待たなければならない。それまでの間、無策の状態で「ウイルスとの共生」を続けるのではなく、厳格な隔離対策等によってウイルスの伝播を断ち切らなければならない。そして、ウイルスを最も小さな範囲に抑え込み、少しでも消滅させるようにもっていかなければならない。これが本来、感染症に打ち勝つための有効な方法の一つだ。”

”中国と世界各国との往来。これは必ず健康かつ安全な条件で行われなくてはならない。国家と国民の利益に合致しなければならない。決して、盲目的な往来であってはならないのである。中国が世界と往来出来るかどうかは、世界の感染状況と深く関係がある。中国が入国者に対して厳格な隔離を続けているのも、世界との往来を断ち切るためではなく、国民の健康と安全に対して責任を持つ為でもあるのだ、”

”今回の南京での失敗は、一部地方での防疫対策の不備を露呈した。反省すると同時に、改善していかなくてはならない。中国の対策は、厳格に防疫対策を行い、同時にワクチン接種を広く広めていく二重保険の対策を採っている。厳格なコントロールをせず、ワクチン接種だけに頼る方法でも決してなく、ましてや「ウイルスの共生」は絶対にあり得ない。そのため、今後も防疫対策を緩めることなく、弱点を補強し、各地での感染状況観測し警戒を強化する方針には変わらない。”

”では、「ウイルスとの共生」は可能か?という質問に対して、筆者はあり得ないと考える。「ウイルスとの共生」政策がもたらした全世界での影響は、既に計り知れない状況になりつつあるが、我々は決して同じ轍を踏まない。世界で流行が続く限り、厳格な輸入例対策も変わらない。感染源を探し出し、伝播を断ち切る戦略も変わらない。早期発見・早期コントロールの方針も変わらない。いつ国を開放するかは、世界の感染状況から、国と国民全体の利益の見地から判断される。つまり、海外からの輸入例を厳重に防ぎ、国内での感染をコントロールしつつ、実際の状況を見ながら、防疫対策を臨機応変に調節し、正常な経済社会生活をベストなタイミングで回復させるのだ。”

 最近、中国の専門家の間でも「ウイルスとの共生(中国語:与病毒共存)を主張するものが出始めています。ただ、この高強氏の論調を見る限り、国内でワクチン接種と厳格な防疫コントロールを今後も継続する一方、海外の感染状況が良くならない限り、隔離のない自由な中国との往来実現は難しいように感じました。中国は人口14億人の巨大な国家です。決して「ワクチン接種して、集団免疫獲得して往来OK」とか「ワクチンパスポートうんぬん」というレベルの問題ではないことには、まず間違いないと思います。

 皆さんの中国の防疫対策を理解する上で参考までに。






 

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