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【OCG】クシャトリラ・フェンリルは何故許されなかったのか

・前置き
23/07のリミットレギュレーション変更によりクシャトリラフェンリルが一年もたずに禁止カードとなりました。
個人としても登場当初から愛用し、その理不尽なまでの単体性能の高さに助けられ、また苦しめられてきました。
今回は何故禁止にまでされ、クシャトリラというデッキが否定されたのかをざっくり個人の観測の範囲内で考えてみます。
「何故もなにもない」ことは最初に強調しておきます。

1.単体性能の高さ
遊戯王カードの歴史上壊れカードと呼ばれるカードは多数あれど、「メインデッキに入るカード」でカードゲームで強いとされる「サーチ・除去・ステータス」が全て一枚に凝縮されているカードはこのカードくらいなものだと思います。
テキストを読むだけでも一枚で3枚分の働き、昔のデッキが40枚費やして分担してやっていたことを集約させたものです。除去ガジェットやサイカリエアーといった往年の有名どころのデッキの強みそのままです。
時代は変わり、カードパワーのインフレを起こした現代でもカードゲームにおいて強い基本事項が変わったわけではないので、よほど相性の悪いデッキ以外では出張採用され、とりあえず3枚、制限化されてからはとりあえず枠があれば1枚入れておけば役に立つカードとなっていました。ダブついた誘発とリンクやシンクロに出来る点も「基本的に腐らない」ことに繋がります。

令和のパンクラと呼ばれていたこともありますが、本質的に全く異なります。先攻後攻問わない緩い条件、盤面に残ること、使い切りでないこと、挙げればキリがないです。

2.各効果の完結したシナジー
まず緩すぎる条件での特殊召喚効果です。チェーンブロックを組まないので、スタンバイに投げない限りGをもらうことがないです。
同名含めたサーチも後続の確保に繋がり、止めどころになってしまいます。うららや泡影を使わせることが出来ますが、本命を通すための囮になり、逆に本命が通らなくても返しのリソースを抱えられ、そもそもフェンリルを超えるだけでも何かしらのカードを使わないといけないため、置いておくだけで強いです。
除去効果の性質も裏側除外なので止めにくく、対象を取るとはいえ破壊でもバウンスでもないのでカードを有効活用出来ません。トリガーもモンスター効果の発動だけでなく攻撃時にも可と隙が0です。放置すれば往復で、無限にアドバンテージを稼がれます。

総じて、おおよそ許容出来るカードパワーのラインをここまで引き上げてしまっている環境でも突出した強さと汎用性があります。

3.テーマとして
クシャトリラである以上はクシャトリラでもユニコーンと並んで主軸ですが、クシャトリラにおいては初動をまかなうよりも中継地点として使われることが多いです。
ユニコーンからパーピヤス、パーピヤスからフェンリル、フェンリルからライズハート。この動きだけで最低2妨害+マクロコスモスになります。
盤面に触れる妨害がテーマ内だと原則アライズハートかフェンリルに寄っているため、単なる中継地点の域を超えた役割があります。


ここまでは当たり前の基本事項と共通認識の確認です。
ここからが本題です。

4.ダメな理由
まず前提として「このカードが刷られたこと自体がおかしいレベル」です。使ってて違和感がないと今後正常なカードパワーの判断が出来なくなるとすら思えます。
最初から禁止前提の、いつ使えなくなってもおかしくないカードがたまたま今回禁止になっただけです。前回なぜ許されたのかがわからないです。

圧倒的なまでの汎用性と単体性能を一枚で備えたカードがあったら他のほとんどのカードに価値がなくなります。極論、フェンリルが20枚積めればあとは汎用と適当な補助カード(ユニコーンやパライゾス、バースなど)である程度なんとかなります。
環境の多様性確保という上辺の面じゃなく、根本的にこのカード1枚でデッキになると他のカテゴリを使う理由がほぼなくなりかねません。
(閃刀姫レイに閃刀姫リンクの各効果をつけてそれぞれを100倍強くするようなもの、といっても過言ではないです。)

テーマとしてのクシャトリラも同様です。そもそものコンセプトが許されるはずがなかった、それだけのことです。
クシャトリラはアライズハートによる強烈な制圧、シャングリラによる封鎖、ディアブロシスによるEXとデッキ破壊、それらが裏側除外という最も回収しにくい場所で、先攻においては情報アドバンテージを得ながらゲームごと否定するのが基本戦術です。誘発に弱くてもリリース系含めた除去に弱くても、デザインとして遊戯王をしないことが主眼です。

もしこれらが許され続けたら、これを抑えるためにリミットレギュレーション変更ではなくこれより高いカードパワーを持ったカードを登場させたらどうなるかは想像に難くないと思います。
デフレ傾向に舵を切ったことはここ数弾のパックの収録から予測出来、その中でも一部のカードが暴れている現状で、テーマそのものが強すぎる中の最も中核、それもあらゆるデッキに入りうる可能性のあるカードを運営が放置することは今後の売上やカードデザインに与えるであろう影響が大きすぎます。

ではなぜそんなカードが世に出たのかですが、2022年度のカードは「やっていいラインの見極めのためのロケテスト」だったと考えています。
スプライト、ティアラ、イシズ、ビーステッド、そしてクシャトリラ。直近ではピュアリィや神碑。追加として新規を得たエクソシスターのマルファや斬機のサーキュラー。このレベルのカード群はカードプールの拡大した現在でもまだ早いと思っています。
プレイヤーに使わせて、どれだけの結果と評価が得られるか。規制のかけ方も踏まえて、今後コンテンツとして遊戯王を続けていく上で、どのレベルのカードパワーであれば問題ないのか。この見極めは机上論ではなく実際にやってみるほうが手っ取り早い、と判断されたと思えばもちろん納得は出来ませんが理解しようと試みるくらいは出来ます。
その「ロケテスト」の一環による被害者が、キトカロスであり、エルフであり、今回のフェンリルです。フェンリルが制限ならこの二枚も禁止解除すべきだし、パンクラなんて無制限でいいです。

5.まとめ
今後の遊戯王がどうなるかはわかりませんが、2022年度のテーマ、カードは随時規制がかかるかな、と思います。
セリオンズやエクソシスター、PUNKレベルで留めておいて、R-ACE、御巫、ラビュリンスをデザインするくらいでちょうどよかったのかもしれません。

…思えばどこからおかしくなったのか、最早思い出すのも難しいですが、絶妙なカードバランスを保つための必要な犠牲だった、悪く言えば実験台だった。こう考えるしか、今は出来そうにありません。


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