サッポロOMOIDE IN MY HAND

2月末に北海道大学というところを受験し、手応えがあまりに悪かったのでその夜人生で初めて風俗に行きまして、その当日に書いた記録。

風俗なんて当然初めてで、詐欺られたりいかついお兄さんが裏から出てきたりしたら怖いのでめっちゃ下調べした。
どうやら大手の情報サイトに載ってる店なら大概安全らしい。
金がないので風俗サイトのクーポンを使うために、電話予約で「風俗じゃぱん見ました!」と最初に言わなければならなかった。なんかすごい屈辱だった。粗品のピンネタに「じいさんが実家の焼肉屋に『風俗じゃぱん見ました!』『チェンジで』って2回も間違い電話してきた」っていう漫談があったけど、これのことか……って知るというプチ感動もあった。

電話に出てくれた店の人の男性はえらく丁寧で、安心すると同時に怖いくらいだった。

予約を済ませてホテルから店まで歩いた。雑居ビルの上階にテナントとして入ってるタイプの店らしく、どうにか「ぼ、僕は別に風俗とかじゃなく別の店に用事があるんですよ」って雰囲気ですすっとビルに入ろうと思ったら、テナント全部が風俗だった。最高かよ。

ビルのエレベーターはタバコ臭くてボロい。コナンの図書館殺人事件みたいに上に死体乗ってたりしないよな……??って感じだった。

店に入るとまず名前と年齢を書かされた。この後身分証提示もあるのか?と思って全部正しく書いたけど何もなくて、ただ本名で風俗に行った人になった。合掌。

コースの説明(お互いに手のやつまで)と禁止事項(これを破ったら警察呼びますよ~ってやつ。女の子の連絡先しつこく聞くとか、かなり細かく決まってた。)を確認されて、薄暗くて狭い部屋に通された。女の子がペラペラのコス用制服を着て座っている。

女の子は20歳で、1つ年上だった。サイトには18歳って書いてあったからこそ多分本当に20歳なんだろうなと思って、なんかぐっときた。僕が髪を前に多く流してたのとマスクをしてて輪郭が隠れてたから、「尾崎世界観じゃん~!」が女の子の第一声だった。
終始のことだけど、本当に会話の端々にお世辞を挟むのが上手ですごいなーと思わされた。こうなりたい。

30分のコースだったのもあってか女の子はスムーズに手順を踏もうとしてくれていたので、「あのそういうのがしたくて来たんじゃなくて……」と性欲で来たんじゃなくて誰かとおしゃべりしたくて来た旨を簡単に話して、ベッドに隣がけで腰掛けて雑談をした。「そうなの、それで満足なら嬉しいわ~」と。実際こういう仕事してて性欲ってあるもんですかって不躾に質問したら「ないよ笑」って言ってて、またひとつ新しい世界を知った。

女の子が31歳のホストに激ハマりしてる話とか(昨日もシャンパンをおろした?らしい)、クリープハイプの曲の話とか、クズ男・歳上の異性って良いよね~って話とかをした。
こっちからは少しだけ受験の話をして、「私馬鹿だから全然わかんないけど、多分受かってるよ大丈夫!」って言ってくれた。こういうしんどい時の応援の言葉って、無責任であればあるほど嬉しいんだな~とわかった。

時間が過ぎ、カラオケと同様にまもなく終了を告げる内線がかかってきて、最後にxoxoだけして終わった。受かってたら4月から札幌来るので、そしたらまた来ますねって言った。部屋から受付までの10mくらいの廊下を女の子と手を繋いで歩いた。30分前に知り合ったお互いをほとんど知らない女の子と、薄暗く細い廊下を恋人繋ぎをして歩くのはまるで儀式のようで、なんだか可笑しかった。受付に近づくにつれて私たちは赤の他人になる。親しい仕草をした瞬間から赤の他人にたった10m、数秒で変化する感覚は完全に未知のものだった。

店を出るとボロいエレベーターまで最初に電話で応対してくれた男性店員が見送ってくれて、「来週出勤予定の〇〇ちゃんも可愛いので、またぜひ!」という営業をかけられた。扉が完全に閉まるまで、直角のお辞儀をされた。

女の子と30分雑談するのに7時間労働分も払ったのは正気じゃないけど、今日みたいな日には正解だったなーって感じだった。受験爆死でヘラってる中で安易に友達を頼って連絡とると後で気まずくなりそうなので、初対面でその日限りの人、かつサービスだからほどよく適当に全肯定してくれるっていうのはとっても嬉しい。

女の子がメッセージを添えてくれた名刺を大切にしまって、ほのかに化粧の匂いが残る指でこの文章を打って、数時間前よりも少し楽な気持ちで、とりあえず寝ようかな、と思った。

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