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A Day In The Lifeの噺

ことの始まりは、ビートルズファンツイートに、ジャイルズマーティンが絡んだことだった。


Q:アデイインザライフには50年間議論の的となっている箇所がある。ここを歌っているのは誰だろうか?

ジャイルズ:ジョンレノンだ。ポールはバックのオーを歌ってる。

別のファンがジャイルズに反論を投げかけると、彼は再度リプライを送った。

ジャイルズ:答えを出しても議論が続いているのは面白いね。僕はでっちあげてないと約束するし、テイクも持ってる。それに世界ではもっと大事なことが起きてる

ちなみに大元のツイートの動画の全貌はこちら

他人の動画の引用かーい!

ついでに、ジャイルズは過去にも同じ内容のツイートを繰り返してる。

ジャイルズ:(アーは)ジョンだ、ポールは高音のオーを同じマイクで、いっぱいリバーブをかけて歌ってる。

今回よりちょっとだけ情報が多い🤏

というわけで、「アー」は誰が歌ってるのか議論の存在は知りつつもほぼスルーしてきたのに、なぜかいきなり琴線に触れて知りたくなっちゃった。

で、答えを探してたらこの曲の成り立ち、レコーディングとか溢れんばかりの情報に飲み込まれて、でもそのどれもこれもが面白くて、忘れてしまうのが勿体無いので、ここにメモしておくことにした。

情報はほぼすべてネット上で探せたものだから、深みは足りないかもしれないけど、最後に参考文献も貼っときます。

1.曲の生い立ち

1967年1月17日のデイリーメール紙の記事をネタに、ジョンが曲を書いた。
サビを思い付かなかったジョンはそのままの曲と新聞をポール宅に持ち込んだ。
2人はキャヴェンディッシュのピアノ部屋で曲を練り、ポールが「I love to turn you on」の歌詞を思い付く。

ジョンの歌詞メモ、確かに同じメロディの歌詞がひたすら書かれている。
ポールは曲を聴いた瞬間に、「すごい曲になる」と思ったらしい。
で、なぜか自分の未完成の小作をくっつけることを思い付く。

マルのノートに書いた小作を記憶してたのか、元々ポールのノートだったのか(1ページ目だし)、スタジオでくっつけることを思いついたのか(ジェフエメリックは、スタジオでポールがノートをめくって考えていたと)、
とにかく本人が言ってるように、バス通いしてた学生時代の記憶そのまんまな歌詞で、どっちかってとStrawberry Fields Forever、Penny Laneに通づる歌詞。ジョンパートとの共通点といえば、Turn you onとsmokeのドラッグ連想くらいじゃないかなあ。

この曲の共作に関しては、どんな時期でもジョンもポールも共作の醍醐味を認める発言が多い。二人とも気に入ってたんだろうな🎶

2.レコーディング

かくしてデイリーメールの記事の2日後、1月19日にレコーディングを開始。
はやっ!
レコーディングはSgt収録曲の中で1番始め!
アルバムを締め括る印象に反して、制作はこの曲からだったんだ。

おそらくレコーディング用に書き直された歌詞カードには、「I LOVE TO TURN YOU ON」が書き足されたり、4000の穴が「VERY SMALL」から「RATHER SMALL」に修正されたり、仕上がり感が漂ってる。(RatherをVeryに変えると、節はあってるけど言葉が軽くなる。ジョンの語感天才!マルだったりしてw)


Sgt.50周年盤のおかげで、なんとテイク1から聴ける!
(ってか今まで心を込めて聴いてなくてすみません)

ジョンのボーカルの完成度にスタジオのみんなが圧倒されたってコメントに納得のデキ。カッコよすぎる、セクシーすぎる!

続くテイク2

素人耳にはテイク1との違いはよくわからない。
ピアノを聴いてると、テイク1・2の時点で既に、ポールパートとアーの進行がポールの頭の中にあったんだなあと。ってかジョンのギターもコードを追ってるし、ポールパートはボーカル入れてないだけって感じ。

コード進行に関しては、この動画が詳しい。

オーケストラ部分のピアノのキーがポールパートと一緒とか、5度圏のアーでE(ポールパート)とG(ジョンパート)をつなぐ構成って聞くと、つなぎの流れを作ったのは、ピアノでリードしてるポールの技に他ならないだろ!って思う。


翌20日は、ポールのガイドボーカルとベースとドラムをオーバーダブ。
で、作ったファーストモノミックスがこれ。

ポールさん、歌詞間違えてアーまで辿り着けず苦笑。
何を考えてたらsomebodyをeverybodeに言い間違えるんだろう😅
当初はポールパートも夢見心地サウンドにしたかったらしい。

アンソロジーバージョンはここまでのテイクの編集にオーケストラが追加されてるんだって。テイクまで書いてくれてありがたい🙏


そして2月3日にポールパート・ベース・ドラムを再録。グルーヴ500%増し🥁
リンゴのドラムを引き出すためにみんなで口説いたみたいだけど、Tommorow Never KnowsといいA Day In The Lifeといい、どうやってこんなドラミングを思い付くんですかね。ポールのベースも当然のごとく天才的。

で10日に有名なオーケストラレコーディング、22日に最後のバーン!をレコーディングしたらしい。この辺りの詳細は語り尽くされているのでは割愛。

最終的にこんなトラックになりましたと。


19日、テープ1に録ったのが、トラック1のリズム(アコギ、ピアノ、ボンゴ、マラカス)と、トラック2〜4のジョンボーカル(トラック4はエルビスエコーとマルのカウント、目覚まし音入り⏰)

テープ2のトラック1はテープ1トラック1のコピーで、トラック2にドラムとベース、トラック3はテープ1のトラック2〜4+ポールボーカルの編集版。

って、箱に書いてあるのはトラック2と3逆だけど。
あの複雑難解そうな曲が、こんなに短期間で仕上がってるっていうのも、改めてびっくり。

3.核心に迫る

キッカケはなんでもよかったってくらい、ネタが充実すぎるA Day In The Life。
けど一応元の話題に戻っておこう、

ポールボーカル直後の「アー」を歌ってるのは誰?

すっごいわかりやすい動画があった。
(音源箇所以外は1.5倍速くらいでさくっと)

そして尊敬する研究家さんの検証がこちら。

検証してないで本人に聞けばいいじゃんという意見も散見されるけど、
これに関する当事者たちの発言が全くもってあてにならない。

まず冒頭のジャイルズマーティン

ジョンがアーでポールがバックのウーだと言ってるけど根拠がない。
バックのウーはLOVEミックスからフィーチャーされてるから思い入れが強いのだろうと推測はできるし、その頃はジョージマーティンもいたのだから間違えなそうに思えるけど、決定的な証拠がない。

次に、50周年ミックスをジャイルズと一緒に作ったサムオケル

ミックスを作る際、ポールパートをジョンパートから切り出し、ジョンパートと異なるエフェクトをかけたらしい。アーを含むポールパートの4トラックすべてを「Paul Vocal」と名づけ、「彼の4つ目のトラックはアーの部分で〜」って話してるけど、2・3個目のトラックに分けてるの「ハッハッハッ」って息、ジョンじゃないの?(エメリック談)誰が歌ってるかは特に気にしてない感が、、

で、当時のエンジニア ジェフエメリック
自伝「ヒアゼアアンドエヴリホェア」の中で以下のように語っている。

「ポールのボーカルはジョンのリードボーカルのトラックに落とし込んだんだけど、ポールのwent into a dreamとジョンのAhhの間は間がなさすぎて、落とすのに苦労した」「よく聞くとポールが最後の歌詞を急いで、終わりをはっきりさせるためにdreamを発音してる」

ここへの否定根拠は野咲さんの検証の通り。
ジェフはこの曲に関して、明らかにマイクを繋いで録っているマルのカウントも「入っちゃった」って言ってるし、信用ならん。と。


そして作曲・レコーディングの張本人ポールマッカートニーは、2021年にRedditで行われたファンとのQ&Aの中でこんな風に証言してる

「みんなで歌ったような気がするけど、少なくとも僕はそこにいた」

なんという元も子もないコメント!オーケストラのレコーディングについてはあちらこちらで散々語りまくってるくせに、なんだそれ。

ちなみにファンからのマニアックな質問が相次いだこのQ&A、
「ストーンズのダンデライオンにも参加してる?」→わからない
「ジョンに最後にあったのは76年?78年?」→わからない
とかわし続けてるから、
本当にわからないのか、わかってて答えてないのか見当がつかない😵‍💫

そのポールは、2008年からこの曲をライブステージで演奏してた。

レコードに近いアーだけど、歌ってるのはポールというかエイブとラスティ??

ニールヤングに飛び入っちゃったライブをみると、アーを自分のパートと思ってないようにも見える。


Redditの約半年前に収録されたMcCartney321では自分が書いた歌詞部分に散々解説を加えながら、アーの部分には郷愁のような眼差しをむけている。果たして自分のボーカルにそんな表情をするのか⁉️


ロジックで考えると、ポールが書いた歌詞だし、ポールが作った音階だし、ポールパートと一緒にレコーディングしてるんだから、ビートルズの定石に従って、ポールが歌うのが筋だろうと。

けど強いていえば、Turn you onはポールが書いたけどジョンが歌ってるし、
アーのバックのウーは超高音でありながら最後しっかり音をとってるからポールじゃないかって気もする、
そしてdreamから瞬時にアーを超開放的に発声をするの、ポールとて難しくないんだろうか。(2008年以降のライブはdreamの発音フェイドアウトしてる、けど年齢違いすぎて参考にならない)

In My Lifeの作曲箇所問題(ジョンとポールで自作箇所の主張が異なる)といい、この曲といい、何でこんな名曲が正体不明になるのだろう。二人が渾身をこめて共作した作品だからこそ、と解釈しておこう😊😊

個人的に新発見がいっぱいでますますこの作品が好きになったので、もっと長く深く見つめてこられた方々のご意見ご知見を伺えたら、とってもうれしいです☺️❤️


4.参考リンク

以下、本文に混ぜられなかった参考リンク🔗
大変勉強になりました、ありがとうございました。


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