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Paul McCartney @Glastonbury2022

2022年6月25日、前週に80歳の誕生日を迎えたポールマッカートニーが、グラストンベリーフェスティバル・ピラミッドステージのヘッドライナーを務めた。

史上最高齢のヘッドライナー、元ビートル、Sirの称号を与えられた英国勲爵士、最も成功したシンガーソングライターのギネス保持者、ミュージシャンとして世界一の資産家、ポールマッカートニーの修飾語はリアリズムを失うほど豪華で、ときどき私たちはその立場を忘れそうになるけれど、ピラミッドステージでの圧巻のパフォーマンスは、彼自身の才能と魅力を十二分に思い出させてくれた。

ビートルズ現役時代からのファンだけでなく、今まで興味がなかったという音楽愛好家にさえも「80歳であのパフォーマンスは信じられない」「国宝だ」「伝説をみた」「グラストンベリーベストアクトだ」と言わしめ、家族やバンドメンバーからは最高の賛辞と感謝の言葉が寄せられた。

永遠に語り継がれるであろう特別な日の記録と記憶を、まとめておく。
きっと永久保存版✨✨


1.オフィシャル映像・写真


グラストンベリーの公式放映局BBCから、ポールのステージのダイジェスト🎥
英国でネットに繋げる方はBBCIPLAYERでフルセット視聴できます😊

デイヴグロールをゲストに迎えたバンドオンザラン

ジョンとのバーチャルデュエットが話題になったアイヴガットアフィーリング


BBC SOUNDの公式音源、こっちはアプリをDLすれば日本でも聴ける、全曲収録。そしてMJ Kimによるオフィシャル写真。


2.バンドメンバー・クルー・家族の思い出


ラスティアンダーソン
「僕の心と魂を込めて、ポール、エイブ、ウィックス、ブライアン(バンドオブブラザーズ)、ホットシティホーンズ、マーシャルアーツの素晴らしいクルーに、魔法のような音楽の旅を共にできて最高だった。なんて素晴らしいツアーだ!」


エイブラボラエルJr
「最高!」


ブライアンレイ
「時々ポールが言うように、『こう言うショーにはとてもたくさんの人が関わってくれている』。まさに彼の言う通りだ。グラストンベリーという大きなツアーの締めの余韻に浸りながら、多くの支えてくれたみんなに感謝を述べたい」
機材、ツアーマネイジメント、ケータリング、衣装などへの感謝を記した後、「僕の永遠で最大の感謝を、地球で最も偉大なボス、ポールマッカートニーに!ポールはロックンロールの歴史で誰よりも世界に寄与してくれている。それが真実だ、そうだろナンシー?💜」
ポーツのインスタ担当となったメアリーや撮影隊ら「ベストクルーオンザプラネット」への感謝も認めた。


ホットシティホーンズ
「昨夜は信じられない、忘れられない夜になったよ!」


DJクリス
「誰もが音楽が止んでほしくないと思ってた。ピラミッドステージ、国全体が一緒に歌ってる魔法のような瞬間だ。人生で最もクールで美しい1日だった。こんな楽しみを魔法のような時間をありがとうポール」


チャーリーライトニング
「とにかく驚き、レベルが違う、最強。歴史的な日を収められるなんて本当に光栄だ。ありがとうポール」

「なんて瞬間、なんて素晴らしいツアーの締め。このチームの一員で、歴史的瞬間を収められるなんて素晴らしい。ポール、素晴らしいバンドメンバー、クルーの兄弟姉妹、みんなとこの時間を共有できて幸せだ、ありがとう。みんなが必要な時に、楽しみと愛を与えてくれるポール、なんて素晴らしい夜だろう。また次の機会まで、、、」

メアリーマッカートニー
「音声オンで動画見てね♡dadをステージに呼び戻す観客のヘイジュードの合唱♡このライブの一瞬一瞬すべてがすばらしかった♡」

ステラマッカートニー
「歴史を築いたね、dad、、グラストンベリー最大の観客数だったよ。自慢のdad、 大好き、すごい、歴史的」




リンダマッカートニーフーズ
「夢のような夜だった!」

オリビアハリソン
「ポールマッカートニーのステージは素晴らしかった。すべての軋轢を吹き飛ばす勢いだった。グラストンベリーの一つになった観客も素晴らしかった。ポール、ナンシー、ありがとう❤️」

マイクマッカートニー(TV観戦)



3. 全曲レビュー


当日演奏された曲をマッカートニーファン視点でレビューしてみます。観た方にはちょっとした共感を、これから観る方にはちょっと妄想を膨らませてもらえたら嬉しいです。

1 Can’t Buy Me Love
トレードマークのヘフナーベースと登場し、前週まで行っていた北米ツアーと同じオープニング曲。オーディエンスの合唱がいきなり圧巻。ところどころで声が出ておらず心配になるも、徐々に落ち着きを見せた。

2 Junior’s Farm
3 Letting Go
ウイングスのライヴ映え曲が続く。この辺りもGot Backツアーと同じ曲順。
「グラストンベリーにこれて嬉しいよ、3年前の予定だったんだけど」とポールが話すと、会場は「ハッピーバースデー」の大合唱に。プレゼントするのは得意なのに、されるととても照れた表情をするポールがかわいい。

4 Got To Get You Into My Life
ビートルズ曲の大合唱がとにかくすごい。スクリーンには2009年発売のビートルズゲーム「ロックバンド」の画が使われる。若め世代をターゲットにしてるんだろうか。

5 Come On To Me
2018年発売「エジプトステーション」からの1曲。前回2004年の出演時と比べると比較的新しいアルバムの曲が多いのが今回のセトリの特徴。

6 Let Me Roll It〜Foxy Lady
ツアーおなじみのレスポールで、ジミ・ヘンドリックスのフォクシーレディを弾く流れ。そしてこれまたツアーおなじみのエピソード語り「Sgtの発売翌週末にジミヘンがカバーしてくれたんだ!でもギターのチューニングが狂っててね、会場にいたエリッククラプトンにチューニングをお願いしたんだけど、エリックは『自分でやれよ』って(笑)」。おなじみのエピソードも、英国でしゃべるとグッとローカル思い出感が増す。

7 Getting Better
Sgtエピソードからのこの曲

8 Let Em In
北米ツアーでは最新アルバムからWomen and Wivesを入れてた場所。McCartney III Imaginedでこの曲をカバーしたセントヴィンセントが前日にフェスに出演してたから、共演するかな?と期待したけど全くそんなことはなく、英国色の強いこの曲が入った。

9 My Valentine
今の奥さんNancyに捧げた曲。「今日もこの会場にいるよ」と言ってたけど、フェス前のリゾート休暇以来、お姿を拝見していない笑
スクリーンの手話者はジョニーデップとナタリーポートマン。

10 1985
おなじみ「ウイングスのファンに」と言ったかどうかよく覚えてない。

11 Maybe I’m Amazed
ポール初のソロアルバムから。アルバム裏ジャケにも使われている写真を指して、「あのジャンパーの中にいた娘は、今では4人の子持ちだよ」と愛おしく語った。4人の子持ちどころか、メアリーはグラストンベリーでポールのインスタアカウントの専任カメラマンを務めている。そして観客の中にはメアリーの長男でポールの初孫のアーサーがいた、ような気もする。

12 I’ve Just Seen Her Face
13 In Spite Of All Danger
ビートルズの初期曲と、ビートルズデビュー前の曲。13はTVでは放映されなかった。

14 Love Me Do
これまたおなじみ、「レコーディングの場でいきなりサビを歌うことになって、声が震えまくった。ラジオとかで流れてくるのを何回聞いても震えが気になる」エピソードを語るポールさん。「でも今日は震えないよっ」

15 Dance Tonight
2007年発売「メモリーオールモストフル」からポールがマンドリンを弾く1曲。当時小さかった末娘ベアトリスが気に入ったからと仕上げた曲だったと思うけど、そんなベアトリスもいまやお年頃の18歳。ステージはドラマー・エイブのダンスに盛り上がる。エイブは世界を幸せにするよね。

16 Blackbird
人民権運動や、ギターコピーネタをMCにしたかはわかりません。
後の曲の合間に「ブラックバードとか静かな曲をやってると、他のステージのズンズンって音が聴こえてマッシュアップされてる気分だ」と笑ってた。

17 Here Today
「さっきリバプールの話をしたけど」と話し始めたら異様に盛り上がって、「リバプールに拍手を」と謎のMC登場。ブーイングも発生せず(笑)実際のところ、リバプール出身の元サッカー選手ジェイミーキャラガーや多くのリバプール人が訪れていたみたい。音楽の街、だからね。

「若い頃はクールを装って友だちに愛してるなんて言わないけどさ、この曲はジョンが亡くなった後に手紙の形で書いた曲だ」「ジョンに拍手を」と呼びかけると、しばらく拍手は鳴り止まず、ポールは温かい目とピースサインで応じた。

曲が終わった後にも、「言いたいことがあるときは、とにかく伝えることだよ」と。北米ツアー中にも毎回言っていたけど、この日の言葉はステージ裏のデイヴグロールにも響いていたかも。

18 NEW
「みんなが好きな曲をやるとスマホの光で宇宙みたいだけど、新曲をやるとブラックホールだよ」とおなじみネタ。英国人が好きそうなジョークでとても盛り上がってた「でも新曲やるけどね!」

19 Lady Madonna 

20 Fuh You
PV主演のハリーワットもグラストンベリーに参戦。

21 Mr.Kite
いつものレーザービーム演出がグラストンベリーのピラミッドステージのフィールドを彩っていた。

22 Something
ジョージにもらったウクレレで演奏。ここでも「ジョージに拍手を」と声をかけると会場は大きな拍手に包まれた。そして曲が始まると、ポールの曲よりも大きな声で会場は大合唱。この曲がいかに愛されてきたかが伝わり、スクリーンのジョージの存在感がいつもにも増して感じられた。

23 Ob La Di、Ob La Da
「この曲はみんなに手伝ってもらいたいんだ」とはじまった一曲。サビはお祭りにふさわしい、ハッピーな大合唱に♡

24 She Came In Through the Bathroom Window
「このツアーで初ライブ、イングランドで初ライブの曲だ」と。ツアーで一番この曲が盛り上がった日かも。愛されし「アビーロード」はこの後さらに感じることに。

25 Get Back
ピータージャクソン編集の映画「ゲットバック」のおかげでさらに盛り上がるようになった1曲。「このためにピーターが編集してくれたんだ」

26 I Saw Her Standing There
「アメリカ西海岸からのゲストだ」と紹介された本日のスペシャルゲスト、デイヴグロール。デイヴとの共演はポールのライブやグラミーでたびたび行われているが、フーファイターズのドラマーテイラーが亡くなった後としては初ステージ?デイヴグロールは想いを乗せた熱いボーカルを披露した。
対等な二人のデュエットに、ポールが映える。

27 Band On The Run
この曲もデイヴグロールとの共演。曲が終わりポールが「ここにくるまでのエピソードを教えてよ」と話を振るとデイヴは「木曜日に乗ろうと思ったフライトがキャンセルになったんだ。それで金曜日に乗ろうと思ったフライトがまたキャンセルになった。でも今日は絶対このステージに立つんだって思ってたよ。ありがとうポール、愛してる」と感極まった様子。ポールも「ありがとうデイヴ」と肩を寄せた。

28 Glory Days
「次はアメリカ東海岸からのゲストだ」と紹介されて現れたのは、前週にニュージャージーでもゲスト出演したブルーススプリングスティーン。以前のグラストンベリー出演時に少し確執があったらしいブルースの登場に、一部観客からはブーイングも。ポールは少し顔を緩めると、マイクから離れてブルースに気にするなとでも言っているような耳打ちを。

29 I Wanna Be Your Man
こちらもニュージャージー公演と同じくブルースとの共演。ニュージャージー公演の前にはローリングストーンズがリバプール公演で「地元のやつらが書いた曲だよ」と披露。グラストンベリー前のウォームアップライブではオープニング曲になった1曲、だけどなんでこれにしたんだろう?ポールのハーモニーが映える。

30 Let It Be
ポールとバンドだけの構成に戻ってシンプルに。もちろん会場大合唱。

31 Live and Let Die
ポールの声を拾うためにマイクの集音が大きいのか、ちょっとした呟きや指示も聞こえてうれしいステージ。曲の前には「ライトを落として」と演出を指示するポール。
007のテーマ曲だけに、ビートルズじゃなくても会場が大合唱になったレア曲。さすがボンドの国🇬🇧 野外会場なんのそのでいつもに増して炎に包まれるステージ🔥マジで?大丈夫?と思ったら、なんとラストの花火が不発🧨
いつも通り耳を塞いだポールも、あれ?って感じで、低音ピアノをかき鳴らす締め。そんなハプニングもフェスならではで許せちゃう。

32 Hey Jude
怒涛の、誰もが知ってる名曲の嵐で盛り上がる会場のボルテージ。もちろんしょぱなから超大合唱。10万人が50年前に書いた自分の曲を歌ってくれるシーンなんて、想像つきます?本当に、ポールマッカートニーがとんでもない存在であることを思い出させてくれると同時に、この時間を本人と10万人の観客と、TVを通して観ている何万人と共有出来ることに、言葉にならない感情が‼️
NaNaNaを会場みんなで歌ったあと、ステージを後にするポールとバンド。
でもNaNaNaの合唱は止むことはなく、むしろポールへのアンコールを求めて、より大きな合唱に。

「音楽が止んでほしくなかった夜」「サッカースタジアムのような合唱に感動」「レジェンドの祝祭」と現地にいた人々をひたすら感動させた瞬間。

そして、ウクライナの国旗と共にステージに戻るポール。ヨーロッパの一部であるイギリス、特にリベラルな空気が流れるグラストンベリーにはポールがウクライナの国旗を振ることにとても意味があったようで、北米ツアーのどの会場よりも盛りあがっていたように思えた。🇺🇦

33 I’ve Got a Feeling
北米ツアーで既に話題となり、グラストンベリーのプレビューでも期待されていた一曲。曲を始める前に「ゲットバックの監督のピータージャクソンが、ステージで一緒に歌えるようにジョンの声だけ抜き出せるよって言ってくれた」とエピソードを語り「聴いてみてくれよ」と。
ジョンのパートでスクリーンにでかでかと映し出されると、ポールはスクリーンに向かい合い呼吸を合わせながら合いの手を。二人のデュエット部分も歌いきったポールは、「バーチャルにすぎないのはわかってるけど、、でもジョンだぜ!また一緒に歌ってるんだ」と。会場は温かい歓声と拍手に包まれた。

34 Helter Skelter
昔を懐かしむような前曲から、まだまだいけるんだぜ!と突っ走るような1曲。おいおいこれ80歳でやるのかよ、という驚きと喜びに満ちた盛り上がりを見せる会場。いい曲に純粋に盛り上がれるのがフェス民のいいところ。

35 Golden Slumbers〜Carry That Weight〜The End
ツアークルー、バンドメンバー、観客に感謝を述べるポール。
機材整備、スクリーン、ライトの担当も個別に名前を上げて拍手を送った。フェスも大きなツアーも、沢山の人たちのチームで成り立ってる。特にフェスは音響バランスやステージギミックをほぼぶっつけ本番でやらなきゃいけないけど、環境が整った北米ツアーとほぼ同じステージをグラストンベリーで再現できたことは、ツアークルーたちの功績。この日細かい指示を出しながらステージをこなしたポールは、より一層クルーたちに感謝してたんじゃないかと思う。

そして観客たちに「さあみんな、テントに帰る時間だよ⛺️」と話しかけるポール。もちろんテント村はグラストンベリーの名物🏕そんな気遣いがかわいらしい。

そして徐にピアノに向き、Golden Slumberの前奏を弾く。なんとこれも会場大合唱。少し面食らった表情で歌い続けるポール。北米ツアーでこの曲が大合唱になることはないよなあ。。もちろんここまでのビートルズ楽曲のほとんどが大合唱だったけど、アビーロードのB面メドレーを大合唱できるグラストンベリーに、50年間ビートルズがいかに英国のアンセムであったか、生活に染み込んだ存在であったかを思い知らされた。

別に学校で習うわけでもなく、ただ子守唄だったとか、ラジオから流れてたとか、好きなバンドがカバーしてたとか、家族が聴いてたとか、そうやって聴き継がれてきたんだろうなあ。だからポールのピラミッドステージは、「ティーンの頃から大好きだった」っていう老夫婦から、リバプールっ子の中年グループ、ビリーアイリッシュやオリビアロドリゴを観にきた若い層、すべての年代・地域層が集まっても、どこもかしこも大合唱の10万人大パーティなんだろうな、と。

異様に盛り上がるエイブのドラムソロからギターバトルに、ここでブルースがステージにカムバック。さらに飛び入りでデイヴもジョイン!ステージ後のラフなTシャツ姿で老眼鏡をかけたデイヴの姿に、ほんと即興でステージ上がったんだろうなという感じ。ポールも戸惑いつつギターバトルの順序を即興指示、ブルースのギター絡みはやっぱりうまい。そしてマジ即興だけにポールの締めソロが混乱!締めと思ったウィックスがピアノを弾き始めるも、ポール・ラスティ・ブライアンのコーラスが間に合わず、ピアノだけが鳴り響くハプニング(笑)
最後しっかり締めの音頭をポールがとり、「and in the end the love you take is equal to the love you make」のクープレットを歌い上げると、先ほどまで熱いギターバトルを繰り広げたブルースとデイヴは後ろに下がり、レジェンドとバンドに温かい拍手を送り続けていた。

冒頭で紹介したとおり、バンド、クルー、ファミリー、観客みんなから、「歴史的」といわれる大絶賛のステージだった。それは、ポールマッカートニーという生ける伝説と彼に惚れ尽くした仲間、そして10万人の観客が一つになってつくったステージだったからだろう。
分断が日々広がる世界で、「One Love」を生み出せるポールマッカートニーという稀有な存在に、改めて感謝し心動かされた夜だった。


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