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使った市民の約90%の意識が変化。まちと市民を繋ぎ、シビックプライドを育てる「My City Report for citizens」の活用ストーリー(千葉市編)

市民の投稿によりまちの「こまった」をはじめとした情報を収集する市民協働投稿サービス「My City Report for citizens」。

このサービスは、千葉市が地域の情報を収集する仕組み「ちばレポ」を前身としたもので、現在は「My City Report for citizens」として全国展開され、全国27の自治体に導入されています(2023年6月現在)。

今回は、My City Report for citizensの前身となる「(旧)ちばレポ」が生まれた場所であり、現在も様々な方法で市民との繋がりの構築を模索している千葉市の広報広聴課の皆様のお話を元に、「インフラテック」領域の社会的意義についてお伝えします。

千葉市の「My City Report for citizens」活用状況

*かいけつレポート…まちで発見した地域課題を自主的に解決したことをレポートするものです。(例:「公園に落ちていたごみを拾いました」等)
**テーマレポート…市が設定したテーマに沿ったレポートを市民が投稿するものです。 (例:「私のお気に入り桜スポット」「ブリンカーライトの点灯状況の点検にご協力を!」等)
***サポーター活動…市民が自ら力を発揮してまちの「こまった」を解決するイベントです。市がイベントを立ち上げ、サポーターを募集、協力して解決します。(例「公園遊具の落書きを消そう!」等)

希薄化する地域コミュニティを活性化したい

— これまで千葉市が行ってきた市民の声を集める取り組みの経緯を教えてください。

発端は2013年に行ったオープンデータに関するイベントです。イベントを通じて市民と街歩きをしながら「子育てに優しい街になっているか」の点検を行いました。そこで市民の皆さんは地域の困りごとを通報する先がわからず不便を感じていること、また内容によっては市民の皆さん自身で解決できることもあるということを知り、「ちばレポ」を導入するに至りました。

その後、2015年から東京大学とともに、ちばレポのデータ分析と有効活用を目指した共同研究が始まり、2016年に千葉市からちばレポをベースとした次世代型市民協働プラットフォームの共同開発を持ち掛け、「My City Report for citizens」の開発に繋がった経緯があります。千葉市は新たに作られた「My City Report for citizens」も活用し、市民の皆さんとの連携を深めてきました。

— 千葉市として、市民の皆さんとの連携を深めなければいけないと考えたきっかけはありますか?

少子高齢化による人口減少が見込まれていたことが背景にあります。希薄化が見込まれる地域コミュニティを、アプリを通じた市民レポーターとの活動の中で強化していきたいと考えていたのです。

また、これまでは電話を通じて地域の困りごとを通報いただくケースがほとんどでした。電話の場合、詳細な場所の聞き取りが難しかったり、道路であれば損傷の度合いがわからなかったり、夜間や休日に受け付けができないなどの課題があったため、ICTを活用し改善したいと考えていました。

— 「My City Report for citizens」を多くの市民にお使いいただくために、広報広聴課としてどのような広報活動をされましたか?

まずは市の広報紙やラジオ広報番組で特集を組み、市民への認知を広げました。さらに、チラシを作成し転入者に配布するほか、商業施設等に配架いただき、市民に知ってもらう機会を増やしています。また、職員がアプリの使い方を説明した上で、実際に街歩きをしながらレポート投稿を体験いただく「ちばレポ教室」を開催しています。

ちばレポ(My City Report) 紹介ページ

協力企業の存在は不可欠!投稿が10%を占める

— 他にも千葉市は「連携協力企業」を募っていることが特長的です。

現在、株式会社ビックカメラ様やイオンリテール株式会社様をはじめとした、23の企業・団体に連携いただいています。連携協力企業には、従業員の方への周知や店舗に広報物を置いていただくことによる市民への周知の他、レポート活動そのものへの協力もいただいています。

中でも日本郵便株式会社様は、配達業務中に見つけた道路の損傷箇所やごみの問題などを、年間およそ400件も投稿いただいています。これはこまったレポート総数の10%以上を占める数なので、連携協力企業の存在は欠かせないものとなっています。

— 活用を進めてから、市民との関係にどのような変化が起きていますか?

登録者のうち、約70%が30~50代ですが、この年代は日中はお仕事があり、お電話で困りごとを知らせていただくのは、現実的ではなかったと思われます。このようなこれまで市に接点を持つことが少なかった年齢層の市民とつながる機会が生まれました。

また、新しい手段として、24時間レポートできる「My City Report for citizens」が加わったことで、従来は年間15,000件程度あった道路に関する電話の通報が3,000件ほど減っており、少しずつ電話から「My City Report for citizens」への移行が進んでいると考えています。

学校での取り組みも盛ん。子どもの頃から地域理解を深める

— 千葉市では学校でもこの取り組みを学んでくださっていると聞きました。

市立中学校の学校教材で「My City Report for citizens」を通じた活動を取り上げていただきました。また、市内の高校の「総合的な探求の時間」において、「Z世代が投稿したくなるようなテーマレポート」というテーマについて一緒に考えてもらいました。まだまだ若い登録者が少ないこともあり、授業をきっかけとして中高生の時から千葉市の活動を知ってもらい、参加を促していきたいと考えています。

その他、市内の大学の社会学の授業では、まちづくりを体験的に学ぶため、「My City Report for citizens」を使った街歩きを行いました。

— 今後、より市民の参加を促していくために展開していきたいことはありますか?

より親しみやすく身近な「テーマレポート」を実施していきたいです。現在は春夏秋冬の虫や鳥などの生き物を投稿してもらう企画をはじめ、年間5〜6回のテーマレポートを、各1か月程度実施しています。特に夏休みは子どもたちの自由研究の時期とも重なり、このアプリを使ってもらう機会を広げるチャンスになっています。

今後はこれらの企画を全国規模で、他の自治体ともタッグを組んで実施できたらと考えています。すでに取り組んでいる、桜の開花情報を投稿する取り組みも、全国規模で実施したら、徐々に北上していく様子が見えて面白いですよね。

その他にも、対面で行う講座などを通して積極的にレクチャーしていきたいです。

将来的には自然災害による被害情報の収集も

— 先頭に立って積極的に活用している千葉市として、「My City Report for citizens」はどのような自治体に合うサービスだとお感じでしょうか?

小規模な自治体にお勧めしたいです。自治体でゼロからシステムを開発するコストがかからず、運用経費も人口規模によって変動するので、始めやすいサービスではないかと思います。
また、県内のほかの地域で既に「My City Report for citizens」の導入実績がある自治体にもお勧めしたいです。隣接している地域の投稿をカバーすることで、情報が蓄積され、活用の幅も広がると思います。

— 最後に、これからの展望について聞かせてください。

多様なテーマレポートを実施することで、市民協働を促進するとともに、市が必要とする情報を効率的に収集する仕組みを構築していきたいです。また、近年は全国各地で自然災害が増えているため、災害による被害情報の収集・公開にも活用できたらと考えています。これは、一刻を争う緊急の通報でなく、災害復旧のための情報収集を想定しています。例えば、台風が過ぎ去った後、カーブミラーの傾きや倒木についてレポートしていただいたりするほか、災害発生時の情報を集約している千葉市総合防災情報システムに入力した被害情報をMy City Report for citizensに取り込み、一元的に管理できるようにします。

— ありがとうございました。

■ MCRのサービス導入に関するお問い合わせ先

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My City Report コンソーシアム事務局
mcr-info@aigid.jp