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要介護1・要介護2は「軽度者」に?

2024年度の介護保険制度の見直しに向けて、財務省などは「要介護1・要介護2の高齢者に対する訪問介護、通所介護のサービスを総合事業へ移管」することなど具体化を求めています。

総合事業への移管(案)は、膨らみ続ける介護費の抑制を目的としていて、重度者への支援給付に重点をおく必要性、軽度者へのサービスをより効率的なシステムに見直す必要性などの主張にも沿ったものです。
これを受けて政府は、9月28日の全世代型社会保障構築会議において厚生労働省に対して検討するよう要請していますので、2024年度の介護保険制度の見直しにてどのように対応するのか、年内には大枠の方針が固められる予定です。

これに対し、保険料を負担している現役世代や企業等の経営者からは前向きな意見があるものの、介護現場や家族の会等からは多くの厳しい意見があがっています。

統合事業でどこまで対応できるのか

総合事業は、全国一律のルールに基づく介護保険(介護給付)と異なり、運営する市区町村が地域の実情に応じてサービス運営基準や報酬などを独自に決めることができます。
地域での多様な資源や人材を活かすことができたり、独自に効率的な体制をつくることができる総合事業は、地域住民やボランティアを主体とするなど人員配置を緩和することもでき、その分低い報酬を設定することが可能です。
その反面、報酬の低さから十分な人材確保が難しく、住民全体の弾力的なサービスとして十分に普及していない地域も多く、さらにサービスの質の低下等を指摘されるなど課題も少なくありません。
地域によって差はあるものの、総じて発展途上という認識が強いのが現状です。

そのため、要介護1・要介護2の高齢者が総合事業の訪問介護、通所介護を利用することに大きな不安があるとして、介護関係者からは厳しい反対意見がでています。

介護現場からの反対の声

・利用者が通える通所介護事業所が減る
・通っていた通所介護事業所を利用できなくなる
・介護報酬の減額に伴い、通所介護事業所自体が減る
・専門性の低いケアで自立支援を劣化させてしまう
・要介護1・要介護2の高齢者を「軽度者」扱いしないでほしい
・在宅ケアの質や量を低下させてしまう
・住み慣れた在宅で暮らすことができなくなる人が増えてしまう
・過度な介護負担によるさまざまな影響が懸念される
など、介護現場からは多くの反対意見があります。

確かに要介護1・要介護2のご利用者様のことを考えると不安しかありません。
経営の安定から考えても不安しかありません。
しかしながら、膨らみ続ける介護費も大きな問題で…
とても悩ましく苦しい思いをしています。

経営の危機をどう乗り越える?

東京商工リサーチの新たな調査レポートで、今年の介護事業者の倒産件数が9月までに100件に達したことが明らかになりました。
前年同期のおおよそ2倍の件数です。

多くの介護事業者が慢性的な人手不足に苦しむなか、新型コロナウイルス感染拡大のダメージが長引き、さらに人手不足に陥りました。
そんな中、今年に入ってからは国内外の情勢変化に伴うコスト(光熱費、食材費、燃料費等)が驚くほど高騰しています。
にもかかわらず、人件費の上昇は続いているのですからたまりません。
これらの要因等が複合的に重なり、多くの介護事業者が苦しんでいることは事実。

そんな厳しい状況が続くなかでの「要介護1・要介護2の総合事業への移管」は、倒産件数をさらに増やすのではないかと懸念されています。

コスト削減を見直すことは急務ですが、介護度に応じた受入れ体制やそれに伴う人材育成、サービスの質の向上や差別化など、利用者数が減って資金繰りがひっ迫することがないよう早急にさまざまな策を講じる必要があります。

しかしながら、デジタル化でコスト削減、サービスの差別化や優秀な人材育成などの策にはやはりそれなりの費用がかかってしまいます。

先を見極め、大切なお金をどう使うかと同時に、
スタッフが働きやすい環境で、ご利用者様の笑顔のために提供できるサービスを
考えていきたいと思います。


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