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老衰死と看取りケア

新型コロナウイルスにより、当たり前の日常が一変し1年が経ちます。
当たり前の日常がどれほど平和で幸せだったかを痛感するとともに、感染の恐怖から普段は意識することもない「死」について考えた方もいらっしゃるでしょう。

ですが、ご高齢の親族を介護する方にとって「死」は身近なものかもしれません。

厚生労働省が発表する人口動態統計の主な死因別にみた死亡率の年次推移によると、2018年以降「老衰」が、がん、心疾患に続いて死因第3位に。それまで死因の上位を占めていた脳血管疾患や肺炎を押しのけた結果となっています。

「老衰死」が増えた理由

老衰死が増えている理由はいくつか考えられますが、ひとつに日本社会と医療現場が老衰による死を受け入れるようになったことです。
ご本人にとって苦痛でしかない治療より、自然な死を受け入れようという考えが増えたことにあります。
事実、胃ろう造設手術の数は6年ほどの間に約半分に減っています。

「老衰死」とは

老衰死とは、
加齢に伴うさまざまな心身機能の衰えによって訪れる「自然死」のことです。
加齢により全身の細胞は徐々に死を迎えます。そして、細胞分裂による再生が行われなくなり、代謝機能も徐々に低下していきます。
さらに異常なタンパク質がつくられ、筋肉や心臓など各臓器の異常が生じます。
老化した細胞からは特殊な免疫物質が分泌され、周りの細胞の老化が促進されてしまうことで、常に全身(細胞や臓器)に炎症が起きている状態となります。
そのため、日常生活に支障をきたし、食事をしても栄養を吸収することができなくなっていきます。
栄養を吸収できない身体は衰弱し、やがて死を迎えます。

「老衰死」と向き合う

食欲が低下するなど5年ほど前から兆候がみられる老衰死は、痛みを感じる感覚器を含め、脳や他の臓器の機能が衰えていくことから、ご本人の苦しみは少ないと考えられています。
老衰で亡くなる方が「大往生」といわれるのは、ご家族も周囲の人も「命を全うした理想の死」と感じるからかもしれません。
そんな老衰死は、昔は多くの方がご家族に見守られながらご自宅で静かに迎えていました。
しかし、核家族化がすすみ長期入院ができなくなった近年では、病院やご自宅で最期を迎える方は減っています。
また、高齢者人口の増加とともに、比較的安い費用で最期まで入所できる特別養護老人ホーム(多床室)は待機者も増え、思うように入所することができません。
そのため、介護付き有料老人ホームやグループホームなどの介護施設で最期を迎える方が増えています。

看取りケアの必要性と課題

2000年4月、介護保険制度とともに誕生した認知症高齢者グループホームも20年が過ぎました。高齢者にとって20年の月日は心身ともに大きな変化が訪れます。
実際、20年前にお元気で入所された方のご家族から「最期はここで迎えたい」とご相談を受けるように。
「長い間過ごしたこの場所で最期を迎えさせたい」というご家族の願いに応えるため、メディカル・ケア・プランニンググループには医療との連携を密に看取りケアの体制を整備することで対応している施設があります。
初めての看取りではいくつかの課題はあったものの、ご本人の穏やかな表情とご家族からの感謝の言葉で、最期まで寄り添うことができました。

しかし、
いかにその人らしく穏やかな最期を迎えてもらうか、またチームケアとしても、看取りケアは簡単ではありません。
施設で最期を看取ることに、否定的な意見やなんらかの不安を抱く職員は少なくありません。それは人として自然のことだと思います。
ずっと寄り添ってきた入居者様は職員にとって身内同然の存在ですから、最期を看取るのはとても辛いはずです。
ひとり夜勤のときに突然最期が訪れたら…、
ひとりで抱えきれないほどの悲しみを背負うことになるでしょう。

そのため、
すべての介護施設で看取りに対応できるわけではありませんが、新型コロナウイルスの影響で医療が逼迫している現在、看取りケアのニーズが高まっています。

介護施設においても「老衰死」を受け入れる体制が求められている現在、
看取ることがどんな意味を持つのか、
看取りケアはチームケアであること、… など、
さまざまな視点から「穏やかな最期」を受け入れる環境づくりが必要になっています。

弊社 教育部門でもオリジナルのマニュアルにて、職員のメンタルケアを含めた「看取りケア」の研修を行っています。
お気軽にお問い合わせくださいませ。


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