最新の医学論文から見る新型コロナウイルス感染症に対するイベルメクチン
地域医療ジャーナル 2022年3月号 vol.8(3)
記者:syuichiao
薬剤師
新型コロナウイルス感染症の治療薬候補として、イベルメクチンという薬に関心が集まったことは記憶に新しいと思います。同薬は実験的な研究において、インフルエンザウイルス、デングウイルス、ジカウイルス、黄熱病ウイルスなど、様々なウイルスを不活化させることが知られており、新型コロナウイルスについても抗ウイルス作用が報告されていました【1】〜【3】。一方、人を対象とした研究では、その有効性が一貫して示されているわけではありません。
新型コロナウイルス感染症に対するイベルメクチンについて、これまで数多くの研究が報告されてきました。同薬の効果に関する基本的な考え方は、以下の動画でも解説していますので、ぜひご覧ください。
そのような中、2021年12月にイベルメクチンの有効性・安全性を検討したシステマティックレビュー・メタ分析【4】が報告されました。この論文では2021年9月までに報告された観察研究3件、ランダム化比較試験14件が分析対象となっています。
その結果、 新型コロナウイルス感染症に関連した死亡リスクは、イベルメクチンの投与で23%低下する傾向が示されました(ハザード比0.77[95%信頼区間0.50~1.19]。この分析ではまた、有害事象の発生率に統計的有意な差を認めていません。死亡リスクが低下する傾向にあるという解析結果をどう解釈するかによって、イベルメクチンの効果に対する見解が分かれるところでしょう。
今回の記事では、新型コロナウイルス感染症に対するイベルメクチンの有効性について、最新の医学論文を紐解きながら、現段階で明確になってきた事実を整理したいと思います。
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