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医療と情報/身近な健康問題

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syuichiao ▶薬剤師/メディカルライター。日経DI、日刊ゲンダイ、薬学生新聞など連載多数。NPO法人 AHEADMAP 共同代表。
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記事一覧

新型コロナウイルスワクチンの論文情報は、どう解釈され、どのように受け止められているのか?

地域医療ジャーナル 2022年6月号 vol.8(6) 記者:syuichiao 薬剤師  日刊ゲンダイさんで、「役に立つオモシロ医学論文」という連載を、2015年から続けさせております。同連載の一部は、ライフサイエンス出版さんから書籍化もされましたので、ご興味のある方は手に取っていただけると嬉しいです。 デマ情報にもう負けない!おもしろ医学論文イッキ読み  「役に立つオモシロ医学論文」の記事は、Yahoo!ニュースにも掲載されることがあり、注目度が高い記事にはコメント

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エンパグリフロジンはHFpEFに対する薬物療法にパラダイムシフトをもたらすのか!?

地域医療ジャーナル 2022年5月号 vol.8(5) 記者:syuichiao 薬剤師  SGLT2阻害薬のエンパグリフロジン(ジャディアンス®)は、血糖降下薬でありながら慢性心不全にも保険適用を有する薬剤です。ただ、同薬の製剤添付文書では、効能又は効果に関する注意として『左室駆出率の保たれた慢性心不全における本剤の有効性及び安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること』と明記されていました。  慢性心不全は、左室駆出率が低下した心不全(

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ポリファーマシーと「Low-value care」

地域医療ジャーナル 2022年4月号 vol.8(4) 記者:syuichiao 薬剤師  2010年代の後半に、日本でも関心を集め始めたポリファーマシーは、未だに解決困難な臨床課題の一つと言えます【1】。薬の処方数が多いことは、潜在的な薬物有害事象のリスクを増加させ、個人の健康にも悪影響を及ぼすという理屈が分からぬでもありません。実際、薬の副作用が明らかな事例が存在することも確かでしょう。しかし、ポリファーマシーの文脈でいう有害事象「リスク」に対する介入が、人の生活にどの

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最新の医学論文から見る新型コロナウイルス感染症に対するイベルメクチン

地域医療ジャーナル 2022年3月号 vol.8(3) 記者:syuichiao 薬剤師  新型コロナウイルス感染症の治療薬候補として、イベルメクチンという薬に関心が集まったことは記憶に新しいと思います。同薬は実験的な研究において、インフルエンザウイルス、デングウイルス、ジカウイルス、黄熱病ウイルスなど、様々なウイルスを不活化させることが知られており、新型コロナウイルスについても抗ウイルス作用が報告されていました【1】〜【3】。一方、人を対象とした研究では、その有効性が一貫

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臨床における意思決定と慣性の法則-最終回:薬物療法の適切性とは?

地域医療ジャーナル 2022年1月号 vol.8(1) 記者:syuichiao 薬剤師  前回の記事では、臨床的惰性に対する介入と、そのアウトカムについてご紹介しました。臨床的惰性の克服は、良くも悪くも処方薬剤数の増加や、用量の増加をもたらす傾向にあります。その結果としてもたらされた多剤併用の一部については、2010年代に入り「ポリファーマシー」や「潜在的不適切処方」といった言葉とともに、社会から厳しい眼差しを向けられることになりました。  治療を強化しないことが不適切

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臨床における意思決定と慣性の法則-第4回:臨床的惰性に対する介入とそのアウトカム

地域医療ジャーナル 2021年12月号 vol.7(12) 記者:syuichiao 薬剤師  前回の記事では、臨床的惰性が生じてしまう原因について、様々な角度から考察を加えました。臨床の場に慣性の法則をもたらしているのは、ある種の複雑性に起因するものであり、様々な要素が互いに影響しあって臨床的惰性をもたらしていることがお分かりいただけたかと思います。また、このような臨床的惰性が患者さんの将来予後を悪化させる可能性についてもご紹介しました。一方で、治療の開始や強化は患者さん

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臨床における意思決定と慣性の法則-第3回:臨床的惰性の原因とその帰結

地域医療ジャーナル 2021年11月号 vol.7(11) 記者:syuichiao 薬剤師  前回の記事では、糖尿病や高血圧の薬物治療を例に、臨床的惰性の実態についてご紹介しました。いくつかの文献報告を紐解く中で見えてきたのは、多くの疾病について診断が可能となり、薬物治療の選択肢が多様化した現代医療の発展と、臨床的惰性の顕在化が密接に関連している様相でした。  医療の役割が、対症的な治療に重きを置いていた時代から、潜在的な健康リスクの予防管理に重きに置く時代へと移り変

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臨床における意思決定と慣性の法則-第2回:臨床的惰性の実態

地域医療ジャーナル 2021年10月号 vol.7(10) 記者:syuichiao 薬剤師  前回の記事でご紹介したように臨床的惰性(Clinical Inertia)とは、医師が必要に応じて治療を開始、または強化できないことを意味する概念でした。臨床的惰性は、とりわけ糖尿病治療の文脈で強調されてきた背景があります。患者の血糖(あるいはHbA1c)値が、診療ガイドライン等で推奨されている値まで下げられないことは、患者の治療アドヒアランスだけでなく、臨床的惰性に起因している

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臨床における意思決定と慣性の法則-第1回:臨床的惰性、その定義と概念

地域医療ジャーナル 2021年9月号 vol.7(9) 記者:syuichiao 薬剤師 【はじめに】 ―ポリファーマシーの要因と減処方に対する障壁から 多剤併用をめぐる問題群、いわゆるポリファーマシーが注目されて久しいですが、不適切処方に対する厳しい眼差しは、今もまだ健在だと思います。しかし一方で、医療者が不適切処方を中止するなど、ポリファーマシーの改善を図っても、人の生活にとって有益な影響が得られるかどうか、実のところよく分かっていません【1】。  患者が抱く薬に対

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新型コロナワクチンに対する陰謀論とその特徴

地域医療ジャーナル 2021年8月号 vol.7(8) 記者:syuichiao 薬剤師  日本における新型コロナウイルスワクチンの接種状況は、自国でワクチン開発を成し遂げた米英に比べて大きく出遅れていました。しかし2021年5月末以降、国内の接種率は加速度的に増加しており、 6月24日時点における65歳以上の初回接種率は50%を超えました【図1】。 【図1】新型コロナワクチンの接種状況(参考文献【1】より引用)  しかし一方で、新型コロナウイルスワクチンに関するデマ情

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新型コロナウイルス感染症の薬物治療から考察するエビデンスと薬剤の使用動向

地域医療ジャーナル 2021年7月号 vol.7(7) 記者:syuichiao 薬剤師  世界中で感染が拡大した新型コロナウイルス感染症ですが、ワクチン(特にmRNAワクチン)の接種率が高い国や地域では、その流行が鈍化しているようです。とはいえ、世界的に見ればその猛威は未だ継続中であり、この感染症によって亡くなる方も少なくありません。米国では、新型コロナウイルス感染症が2020年の主要死因ランキングで第3位に入り【1】、その超過死亡も世界で最多の45万8千人と推計されてい

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[深読み] 返信:時間を含む「変」なるものとしての情報-現代社会における医療情報との向き合い方-

地域医療ジャーナル 2021年7月号 vol.7(7) 記者:syuichiao 薬剤師  地域医療編集室では、地域医療ジャーナルの定例輪読会「深読み会」を行っています。  メンバーがトピック記事をセレクトして、記者との意見交換を行うものです。  今回は 2021年06月号 vol.7(6) の記事 時間を含む「変」なるものとしての情報-現代社会における医療情報との向き合い方- がセレクトされました。  記者へお送りした感想と質問に対する返信をいただきましたので、[深

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時間を含む「変」なるものとしての情報-現代社会における医療情報との向き合い方-

地域医療ジャーナル 2021年6月号 vol.7(6) 記者:syuichiao 薬剤師  新型コロナウイルスの感染拡大とともに、膨大な情報が様々なメディアを通じて発信されました。中には根も葉もないデマ情報も拡散され、社会的な混乱を招いたことは記憶に新しいと思います。例えば、感染拡大の初期ではトイレットペーパーやティッシュがドラックストアの店頭から姿を消しましたよね。  医療現場でもまた、「新型コロナウイルス感染症に効果が期待できるかもしれない……」という理由だけで、いく

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